ワシントン・ポストが、弱くなったドルの影響について、アメリカにどのようなインパクトを与えているのかを記事にしていて面白い。
「Week Dollar Fuels China's Buying Spree Of U.S.Firms 弱いドルが中国の米国企業バカ買に油を注いでいる」と言ったタイトルで、弱いドルと米国経済の弱体化が、アメリカを、外国企業の投資先としてのバーゲン市場となっていると報じている。
2007年に、外資による米国企業買収総額が4070億ドルに達し、前年比93%増で、投資国は、カナダ、英国、ドイツ、中東、アジアで、特に中国が急上昇していると言う。
顕著に増加しているのは、ウォール・ストリート企業への資金の流れで、サウジのアルワリード皇子の再度のシティグループの救済、トロント・ドミニオン銀行のコマース・バンコープの85億ドルの株取得、シンガポールTemasekのメリルリンチへの44-50億ドルや中国政府ファンドのモルガン・スタンレーへの50億ドルの資金提供、中国私企業Citicのベアスターンズへの10億ドルの投資などの大口以外に、中小の買収や出資は数限りないと言うのである。
興味深いのは、ドルの弱体化によって、アメリカの中小企業が危機に陥っているので、これらの救済の為に、在中のアメリカ各州事務所が、積極的に中国企業にアプローチして、出資や買収を画策していることで、ペンシルヴァニア州では、食品会社や材木会社など6社の中国企業による買収が成立したとしている。
日本ブームの時に、米国の各州事務所が日本企業に米国への投資を積極的に勧誘していたが、今回は、現存企業の買収であり資金投入であるから、正に、拡大策ではなく窮余の救済策である。
ところで、これまでの外国政府投資は、小規模の比率で長期的な投資が目的であり、企業の経営をコントロールしたり影響力を与えるようなことはなく、企業にとっても国家にとっても良かったが、
最近、アメリカでは、外国からの投資が、米国経済を強化し雇用を創出すると言って喜んではおられなくなったと言う危機意識が政治家などから出てきている。
政府ファンドが増加すれば、国家安全資産や戦略的重要企業の買収などの外交的な野心が芽生えてくる心配があり、また、実際に、これらのファンド自体が、不透明で全く得体が知れない場合が多いのである。
心配は、やはり中国政府の投資で、その現れは、中国国立オフショア石油の加州のユノカルの買収を不許可にしたことであろう。
ところが、ハイアールなどの中国の企業が、最近、失業率が高くて外国労働者比率の高いサウス・カロライナ州に大挙して進出して、何千人規模の雇用を生み出している。
驚くなかれ、中国の大都市よりも、ここの方が、土地代や電気代などは、はるかに安く、かつ、消費者に直結していて魅力的なのである。
もっとも、外国での事業に不慣れな中国企業ゆえに、結構ローカルと摩擦や問題を起こしているようだが、アウトソーシングとオフショアリングで海外に雇用が逃げてしまっていたアメリカに、逆に、開発途上国の企業が来て雇用を生み出して地域振興を図ると言うのは非常に面白い現象である。
アメリカ企業が経営不振になって倒産寸前となったのに、中国企業が来て経営が成り立つというのはどう言う理屈なのか分からないが、案外、先進国となったアメリカには、ロー・エンドの製造技術なり経営ノウハウが退化してしまったのかも知れない。
給与水準等は、アメリカでは随分高い筈だが、要素価格均等化定理が働いてダウンしているのだろうが、逆に、再生と言うよりも格差の拡大などの問題を引き起こす心配はないのであろうか。
ところで、ドルの下落で、日本円は対ドルでは円高だが、ユーロに対しては決して円は高くなく、従って、EUにとっては日本企業はバーゲン価格であり、容易に買収出来る筈だが、それが起こらないと言うことは、日本市場なり日本企業に魅力がないと言うことを意味しているのであろう。
ヨーロッパの企業は資本の論理で動くが、いわば石油など天然資源バブルで濡れ手に粟といった産油国やロシア、それに、破竹の勢いの中国・インドなどの新興国のM&A戦略・戦術は、理屈抜きであるから、ドル安など関係なく、日本がもう少し経済的に動き出せば、時価総額の低い日本企業は格好のターゲットになるのかも知れない。
かっての経済覇権大国アメリカが、経済的に疲弊すると、世界中の金がバーゲン市場に殺到するように、アメリカ企業を買い漁る、そんな恐怖感をアメリカ人が少しづつ感じ始めたというのも、時代の流れである。
「Week Dollar Fuels China's Buying Spree Of U.S.Firms 弱いドルが中国の米国企業バカ買に油を注いでいる」と言ったタイトルで、弱いドルと米国経済の弱体化が、アメリカを、外国企業の投資先としてのバーゲン市場となっていると報じている。
2007年に、外資による米国企業買収総額が4070億ドルに達し、前年比93%増で、投資国は、カナダ、英国、ドイツ、中東、アジアで、特に中国が急上昇していると言う。
顕著に増加しているのは、ウォール・ストリート企業への資金の流れで、サウジのアルワリード皇子の再度のシティグループの救済、トロント・ドミニオン銀行のコマース・バンコープの85億ドルの株取得、シンガポールTemasekのメリルリンチへの44-50億ドルや中国政府ファンドのモルガン・スタンレーへの50億ドルの資金提供、中国私企業Citicのベアスターンズへの10億ドルの投資などの大口以外に、中小の買収や出資は数限りないと言うのである。
興味深いのは、ドルの弱体化によって、アメリカの中小企業が危機に陥っているので、これらの救済の為に、在中のアメリカ各州事務所が、積極的に中国企業にアプローチして、出資や買収を画策していることで、ペンシルヴァニア州では、食品会社や材木会社など6社の中国企業による買収が成立したとしている。
日本ブームの時に、米国の各州事務所が日本企業に米国への投資を積極的に勧誘していたが、今回は、現存企業の買収であり資金投入であるから、正に、拡大策ではなく窮余の救済策である。
ところで、これまでの外国政府投資は、小規模の比率で長期的な投資が目的であり、企業の経営をコントロールしたり影響力を与えるようなことはなく、企業にとっても国家にとっても良かったが、
最近、アメリカでは、外国からの投資が、米国経済を強化し雇用を創出すると言って喜んではおられなくなったと言う危機意識が政治家などから出てきている。
政府ファンドが増加すれば、国家安全資産や戦略的重要企業の買収などの外交的な野心が芽生えてくる心配があり、また、実際に、これらのファンド自体が、不透明で全く得体が知れない場合が多いのである。
心配は、やはり中国政府の投資で、その現れは、中国国立オフショア石油の加州のユノカルの買収を不許可にしたことであろう。
ところが、ハイアールなどの中国の企業が、最近、失業率が高くて外国労働者比率の高いサウス・カロライナ州に大挙して進出して、何千人規模の雇用を生み出している。
驚くなかれ、中国の大都市よりも、ここの方が、土地代や電気代などは、はるかに安く、かつ、消費者に直結していて魅力的なのである。
もっとも、外国での事業に不慣れな中国企業ゆえに、結構ローカルと摩擦や問題を起こしているようだが、アウトソーシングとオフショアリングで海外に雇用が逃げてしまっていたアメリカに、逆に、開発途上国の企業が来て雇用を生み出して地域振興を図ると言うのは非常に面白い現象である。
アメリカ企業が経営不振になって倒産寸前となったのに、中国企業が来て経営が成り立つというのはどう言う理屈なのか分からないが、案外、先進国となったアメリカには、ロー・エンドの製造技術なり経営ノウハウが退化してしまったのかも知れない。
給与水準等は、アメリカでは随分高い筈だが、要素価格均等化定理が働いてダウンしているのだろうが、逆に、再生と言うよりも格差の拡大などの問題を引き起こす心配はないのであろうか。
ところで、ドルの下落で、日本円は対ドルでは円高だが、ユーロに対しては決して円は高くなく、従って、EUにとっては日本企業はバーゲン価格であり、容易に買収出来る筈だが、それが起こらないと言うことは、日本市場なり日本企業に魅力がないと言うことを意味しているのであろう。
ヨーロッパの企業は資本の論理で動くが、いわば石油など天然資源バブルで濡れ手に粟といった産油国やロシア、それに、破竹の勢いの中国・インドなどの新興国のM&A戦略・戦術は、理屈抜きであるから、ドル安など関係なく、日本がもう少し経済的に動き出せば、時価総額の低い日本企業は格好のターゲットになるのかも知れない。
かっての経済覇権大国アメリカが、経済的に疲弊すると、世界中の金がバーゲン市場に殺到するように、アメリカ企業を買い漁る、そんな恐怖感をアメリカ人が少しづつ感じ始めたというのも、時代の流れである。