熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ニューヨーク紀行・・・14 USAは過去の国?未来の国?

2008年03月02日 | ニューヨーク紀行
   アメリカに着いてケネディ空港からニューヨークのセントラルに向かう途中、眼前にニューヨークの街のパノラマ風景が現れる。
   長いマッハッタンをT字型に見るのだから、細長く屏風のようにかなり広い範囲のニューヨークが一望できるのだが、今回の第一印象は、随分、古びてしまったなあと言う感慨であった。
   もう、36年も前だが、初めてこの風景を見た時には、アメリカと言う巨大な国の底力を見せ付けられたようで、圧倒されてしまったが、今回見たニューヨークのスカイラインの印象は、当時と殆ど変わっていないのである。
   それに、ニューヨークの黄金時代を支えてきた道路も橋もトンネルも、もう寿命が来ている感じであるし、ブロードウエイのタイムズスクエアも5番街の目抜き通りの姿も最近は殆ど変わっていない。

   今、急成長を続けている上海もそうだが、ドバイなど新興の都市などには、ガラスとスティールの直方体の近代的なビルが林立しているが、ニューヨークのスカイラインは、くすんだレンガ色の階段状の建物や、高層ビルでもエンパイヤ・ステイトビルのように頂上に近付くと細くなるようなビルが多く、大半の建物は、半世紀以上も前に建てられているので古色蒼然としているのは当然かも知れない。
   それに、街へ向かう途中のハドソン河畔の工場や倉庫は荒れ放題でどこか寂れていて、工業が隆盛を極めている等と到底思えない。
   このような印象は、アムトラックで、ニューヨークからフィラデルフィアへ向かう途中の車窓からも、延々と続く廃墟と化した工場跡地や落書きだらけの風景を見て同じ様に感じた。
   尤も、ニューヨークでもフィラデルフィアでもセントラルの一部で大規模な開発が行われているが、しかし、全体としては、既に、アメリカの時代を謳歌していた20世紀の前半から頂点に上り詰め、完成されてしまった感じである。

   それでは、何故アメリカがあれほどまでに長期経済成長を遂げることが出来たのであろうか。
   破竹の勢いで驀進する日本経済に押されて、アメリカは深刻な危機感に見舞われて、アメリカ人が本当になって真剣に日本経済と企業活動を研究し分析した「Made in America」が出版されたのが1989年だが、
   その直後、1990年代に入って軍事技術であるインターネットが開放されたために、丁度、経済社会が情報産業化社会への移行期にあったのでこの波に乗り、また、ベルリンの壁の崩壊とソ連の瓦解によって自由市場経済市場が一挙に拡大し、これらが相乗効果で経済のグローバリゼーションをプッシュして、アメリカ人の企業家精神に火をつけたのである。
   一時的に、ITバブルで中断したが、IT技術の産業への導入・活用によってビジネスのパラダイムを根底から変革して生産性の拡大を促進し、フラット化したグローバル経済が起動して世界同時好況を成し遂げてきた。

   ところで、前述したアメリカ経済の様相だが、製造業については、GMやフォードなどの凋落を見れば分かるように、アメリカ国内での実体は極めて厳しく、iPodのアップルを筆頭にIT関連製造業でも、殆ど外国のファウンドリを活用したアウトソーシングやオフショアリングが主体で、国内は空洞化の一途を辿っていると言う状態である。
   アメリカ経済の好調は、ITを駆使したサービス産業、特に、ファイナンシャル・エンジニアリングを駆使してどんどん新商品を展開してマネーゲームで拡大を続けてきた金融関連産業の貢献が大きく、それに、住宅価格の高騰をエンジンに膨れ上がった信用膨張による消費塗れの経済が呼応してバブル状態の好況が続いてきた。
   こんなことが永続する筈がなく、今のサブプライム問題は、正にこの金融経済の蹉跌である。

   私自身は、今回のサブプライム問題を引き金としたスタグフレーション(?)と一連のブッシュ大統領のイラク介入で、アメリカ経済の凋落と言うと言い過ぎだが、しかし、徐々に地盤沈下して行く前兆が見えてきたと思っている。
   ドルがユーロと並列的な基軸通貨としての地位に近付いてくると世界経済は流動的となり、丁度、イギリスのポンドが、アメリカの台頭で、徐々に経済的覇権をアメリカに譲り渡して行った時のことを想像させる。
   
   何れにしろ、私の今回のアメリカの印象は、アメリカも日本と同じ様に、時代遅れになった多くの残滓を背負いながら生きている初老の国になったのだなあと言う思いである。
コメント
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