詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「自民党憲法改正草案を読む」 のファイル、冊子

2016-07-21 10:42:31 | 自民党憲法改正草案を読む
ブログで書いた「自民党憲法改正草案を読む」をワード文章にまとめました。

「憲法改正論議」が始まる前に、いろんなひとの、いろんな意見を聞きたいと思ってまとめました。
「法律用語」なし、私が日常生活でつかっていることばで読んでみて、ここがおかしい、と思うことを書いています。

まとめて読んでみたい方、必要な方は、メールでお知らせください。ファイルをお送りします。(オアシス文章、縦書き40字×40行で59枚の長さです。)

冊子ご希望の方もメール(yachisyuso@gmail.com)でお知らせください。
冊子の場合、キンコーズでの製本代540円、郵送費(郵パック料金360円)と諸経費100円(印刷用紙+インク代+α)の1000円がかかります。
なお、冊子の場合は、お届けまでに時間がかかります。

なお、ブログから直接プリントアウト、あるいはコピーの配布はご自由に。


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詩集「改行」へ向けての、推敲(6)

2016-07-21 09:40:14 | 詩集『改行』草稿/推敲
詩集「改行」へ向けての、推敲(6)

(41)破棄されたの詩のための注釈(31)

テーブルの片隅に集められたのは「ぬれている」ということばと「水面の青」。「水面は正午の光で青くぬれている」ということばと、「ボートからはみだした影が水面で黒く輝く」ということばが、砕けながら入り乱れた。四月の正午、風は南から吹いた。

水に触れる手は、何を考えて模倣するのか。砕けるものを集める「感覚」ということばは「私は私を見て(あなたはあなたを見ないで)」という中途半端なことばを半ば所有し、半ば放棄している。想像力は、網膜のなかで完成することを拒否する。

そこで改行。

新しいことばの上に雨が降り、「ぬれている」ということばは水面から「青」をはがしていく。灰色の粗い粒子が現像しそこねた写真のように。「ボートの横」では、水に映った杭の色という問題が残される。











(42)甘いものが、

甘いものが、流れ出ていると指摘されて
ことばは鏡のなかの顔がやつれていたことを思い出した。
きのう、階段を下りる男のいやらしさを足の動きに託して書こうとして、
何度やってやってもうまくゆかず、

ネクタイをゆるめ、シャツのボタンを外す描写にかえ、
安直な疲労という手すりに寄り掛かってしまった。
そのあとだね、何度やってもうまくゆかず、
大事な部分をながめていると、いやな感じのものが毛穴から流れた。

甘いものが流れ出る日々がさらにつづき、
ことばの手も足も目も耳もやせほそり、
感覚の「て、に、を、は」は破壊寸前で陰毛のように震える。

助詞を酷使して論理ばかり捏造し、
うんざりして甘いものを舐めてみるが未消化のまま流れ出てしまい
最後の一行が書けない。












(43)ドアのノブに手をかけとき、

ドアのノブに手をかけたとき、
ことばの血管のなかに入り組んだ街の通りができるのを感じた。
血管のなかで欲望がざわめいた。
ドアの影にドアが、そのドアの影にまた別のドアが隠れている。
さらにその奥の壁の色をしたドアのノブに手をかけのだが、
ことばはドアを開けることができなかった。

血管のなかにできた通りの複数のドアから細い光がもれているが、
それはことばを盗み見るために這い出してきた何かなのだ。

ことばは、さらに奥のドアのノブに手をかけた。
それはことばの内部の固く閉ざした部分に通じるドアであって、
それを閉ざしたままでは嘘をつくことになる。
ことばの血管のなかにできた通りに嘘をつくことになる、
と血管のなかの本能が声を上げた。

片手で耳をふさいで、(片方の耳は開かれたまま、
長い間閉じていたドアのノブに手をかけたとき、
血管を走り回る目にはドアの向こうが見えた。
部屋の中には顔が浮かんでいて、ことばが入ってくるのをみつめている。
まわりは暗く--黒い空気をかき分けるようにして
ことばが顔に近づいていくより先に
闇を射抜いて目の強い光が近づいてくる。しかし、

その目に殺されてしまう、打ち砕かれてしまう、
という具合にどうしてならなかったのだろう。
                     何かを聞こうとした耳を、
背後でドアが閉まる音がふさいだ。
ことばは、わけのわからないまま、
両方の手でドアの内耳の形をした鍵穴を隠すのだった。
そこからことばが漏れているような気がして。










(44)ことばは椅子を、

ことばは椅子を書きたくなった。
書いてしまうと椅子は椅子ではなくなってしまう。
ことばを重ねると意味になり、
意味は象徴になる。

鉈で叩き割った木を組み合わせた椅子は質実という意味になり、
小屋の隅に置かれて孤独を象徴する。
やわらかな座面にのこる窪みは、
支えるものをなくしてかえって疲労する。










(45)うすっぺらな、

耳のまえで、
その螺旋階段の入り口で、
ことばは
喜んで階段をまわりながら降りて行った、

軽い足跡をみつけた。
そのあとをたどることは盗作だろうか、
ことばは、
どきどきして振り返った。

(だれか、気づけよ
だが、
予想どおりだれも気づかないという裏切りがあり、

うすっぺらな、
恥ずかしさは
耳のてすりのようになまあたたかい。










(46)ことばは首を傾けて

ことばは首を傾けて鳥になってみる
梢の先端に何かが降りてくる
日の光が葉の縁を銀色にかえようとしている
一瞬、めまいのような暗さが鳥をゆさぶった

そうではなかった、
鳥になったことばの細い足先をくすぐるものがある
幹のなかをとおり枝のなかを駆け上り
木をつきやぶろうとしている

なぜこんなことに気がついたのか
ことばは考えてみるが、鳥になってしまっているので
ちゅぴちゅろり、ぐっくるぼっ、ちょるりるる 

ことばは首をかしげて鳥からことばにかえろうとするが
声は晴れ渡った空に消えて
雲が透明になっている。











(47)ひとつずつ、

ひとつずつ、
ことばは川の向こうのビルでひとつずつ灯が灯るのを見て、
ひとつずつということばになってみる。
ひとつずつ、
川の上にもひとつずつ明かりが灯る。
橋の下で暗くなった水が流れてきて、
逆さまに落ちてくるビルの窓を間違えることなく、その場所で
ひとつずつ、











(48)ことばは老いてしまった、

ことばは老いてしまった、
つまらない反撃に力を使い果たしてしまった。
闘っているときは昔の力がよみがえった
気がしたが、何を言ったかおぼえていなかった。

ことばは老いてしまった、
闘うことだけで生まれてくる野蛮は消えた。
快感のない手で花に触れた、
かつて良心の制止を聞かずに毟り取った花に。

ことばは老いてしまった、
思い出せないものを思い出している間に、
わきを夜明けの風が吹き抜けてゆき、

花びらのあった場所には絶対的な休止符。
ことばは老いてしまった、
そんなものに音楽を聴いてしまうとは。












(49)うわさ

ほら、あのことばだ
異名をつかって
淫靡な詩を書いているやつもいるが
あれほどいやらしくはない

知る必要のないことを
けっして知ろうとはしない
まっすぐな姿勢のまま
行間にわりこみ

「美には限界がある」
うすい鉛筆で書き込んだきり
出てこない

まるで手稿の推敲のよう
見られていることを知っていて
余白にさえなろうとしない












(50)改行について

ことばは後ろにならぶように、
列を作るように命令されたが
さて?
いまのは、脳だったのかしら

ことばは、
いつからならんでいるのですか?
前のことばに聞いてみたが
ふりむいてもくれない

嫌われているらしい
うしろにならぶことばは
離れた場所でうろうろしている
もやもやの感情みたい

改行します、
ことばは列を離れて叫んでみた
ことばがわっと押し寄せてきた
ちくしょう、
古い行がわめいた




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新井啓子「なつのわな」

2016-07-21 08:49:03 | 詩(雑誌・同人誌)
新井啓子「なつのわな」(「something 」23、2016年06月30日発行)

 新井啓子「なつのわな」はことば遊び。

なつのわな は つなのわな
わなのつな は なわのつな
つなのなわ は なつのなわ
なわのなつ は わなのなつ

なつのわな は ななつのわ

なつのわな の わはいくつ

 後半の「なつのわな は ななつのわ」がいいね。「の」の位置がずれて、「ななつ」という思いがけないことば、しかも知っていることばがあらわれる。
 そのあと「なつのわな の わはいくつ」といままでとはまったく違っていることばがくるのだけれど「ななつ」と「いくつ」が結びついて、違和感がない。
 思わず「ななつ」と答えたくなる。
遡上
新井 啓子
思潮社
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