読売新聞か言って、安倍が言わないこと
自民党憲法改正草案を読む/番外126(情報の読み方)
2017年10月16日の読売新聞(西部版・14版)の社説は「北朝鮮への備えを冷静に語れ/対話で成果生む「圧力」が肝要だ」という見出し。
安倍支持の姿勢で書かれているのだが、そのなかに非常におもしろい部分(注目すべき部分)がある。
これはとても重要な要約である。
金は「反日対決戦を総決算する」とは言っていない。
安倍は、北朝鮮のミサイルが「日本上空を通過した」と言っている。安倍が「上空」と「領空」をどう認識しているかわからないが、金のことばと連動させて考えれば、北のミサイルは「反米対決戦を総決算する」準備のために(予行演習として)、「日本の上空を通過した」のである。日本を攻撃する準備をするため(予行演習をするため)に、「日本の上空」を飛んだのではない。
「日本の上空を通過する」のであれば、「日本を攻撃しない」ということである。もちろん日本の上空まで飛んでこないことには日本を攻撃することは出来ないから、上空を通過するミサイルには日本を攻撃する能力はある、といえるが。でも、そういうミサイルなら、もうずいぶん前から開発されている。いま、騒ぎ立てることではない。
なぜ、安倍が、いま、北朝鮮のミサイルが日本にとって脅威であると言っているのか、その「本心」を探らないといけない。
もし北朝鮮がアメリカにミサイル攻撃をしかけたなら、アメリカは当然北朝鮮に反撃するだろう。その米軍はどこからやってくるか。アメリカ本土からか、グアムからか。まさか。北朝鮮に近い、韓国、日本の基地にいる米軍が最初に出動する。その後、アメリカ本土からの兵士が増員される。
このとき北朝鮮は、韓国、日本に駐留する米軍を放置したまま、アメリカ本土攻撃だけを展開するか。そんなことをするはずがない。身近な米軍を攻撃する。つまり韓国、日本の米軍基地を攻撃する。韓国、日本の領土が戦場になる。
これがほんとうの「脅威」である。
逆に言えば、北朝鮮がアメリカにミサイル攻撃をしかけ、それにアメリカが反撃しない限り、韓国、日本が戦場になることはない。出発点、途中経過を省いて、「日本が攻撃されたらどうする」という論理展開は、国民の恐怖をあおるだけで、何も解決しない。
「北朝鮮が日本を攻撃してきたら」を想定する前に、北朝鮮がアメリカを攻撃しないようにするためには、ということろからはじめないといけない。
「出発点」と「途中経過」を省略してはいけない。こういう省略を「情報操作」と言う。安倍のやっていることが、これにあたる。
「途中」を省略してはいけない、ということは別の角度からも指摘できる。
読売新聞の社説は「邦人救出も検討課題に」という小さな見出しをつけたあと、こう書いている。
この文は、安倍(政府・与党)が、韓国や北朝鮮にいる日本人をどうやって救出するかという具体的方法を確立していないということを意味する。まだ「確立されていない」から、それを「検討することが重要」になる。
戦争法が問題になったとき、安倍はアメリカの艦隊が日本人を救出するというイラストを掲げて説明したが、アメリカ艦隊が救出するのは在留アメリカ人だろう。日本の自衛隊は、在留アメリカ人を救出する作戦の手助け(集団的自衛権)を求められるだけだろう。そこでアメリカの救出作戦を手助けすることを拒めば、その後の日本人救出はアメリカには全体に助けてもらえない。
自前(自衛隊だけで)在留日本人を救出するには、なんといっても、韓国との関係を良好なものにしておかなければならない。日本はかつて韓国を侵略している。そういう「前歴」がある軍隊が韓国に上陸すれば、それがたとえ日本人救出という目的であっても、けっして歓迎されないだろう。日本人救出のふりをして、韓国を攻撃しかねない。日本人を救出するとき、助けを求めれば韓国人も助けてくれるか、そう問われるだろう。
ほんとうに日本が攻撃される危険があるなら、まず、韓国・北朝鮮にいる日本人の救出をどうするかという問題を解決しておく必要がある。韓国と日本の関係を良好なものにしておく必要がある。軍備を増強するまえに、その問題を解決しておかなければならない。
在留日本人を救出するために何が必要か、事前に何をすべきかを考えずに(具体的にしめさずに)、「圧力」をかけるということは、在留日本人を見殺しにするということだろう。
麻生は、難民の中には武装難民もいる。射殺するしかない、というようなことを言ったが、人を殺すのは戦争の始まりである。(読売新聞の社説は「射殺発言」には触れずに、「危険性に言及した」と、まるで麻生が「正論」を語ったかのように書いているが。)
安倍も麻生も、どうやって戦争をするかは考えても、どうやって戦争を回避するかを考えない人間である。
「途中」を省略して「結論」だけ叫ぶのは、「途中」のなかにある「解決方法(可能性)」を見捨てることである。
読売新聞の論調は、安倍支持の論調である。しかし、その安倍支持を語ることばのなかからだけでも、これだけの問題点を指摘できる。
ことばはいつでもある論理を前面に出すと同時に、別の論理を背後に隠す。
隠されている論理を浮かび上がらせながら、書かれている内容を吟味しないといけないと思う。
#安倍が国難 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇生前退位
自民党憲法改正草案を読む/番外126(情報の読み方)
2017年10月16日の読売新聞(西部版・14版)の社説は「北朝鮮への備えを冷静に語れ/対話で成果生む「圧力」が肝要だ」という見出し。
安倍支持の姿勢で書かれているのだが、そのなかに非常におもしろい部分(注目すべき部分)がある。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は7日の党中央委員会総会で、核開発を続けると明言した。「反米対決戦を総決算する」との強硬姿勢も崩していない。
これはとても重要な要約である。
金は「反日対決戦を総決算する」とは言っていない。
安倍は、北朝鮮のミサイルが「日本上空を通過した」と言っている。安倍が「上空」と「領空」をどう認識しているかわからないが、金のことばと連動させて考えれば、北のミサイルは「反米対決戦を総決算する」準備のために(予行演習として)、「日本の上空を通過した」のである。日本を攻撃する準備をするため(予行演習をするため)に、「日本の上空」を飛んだのではない。
「日本の上空を通過する」のであれば、「日本を攻撃しない」ということである。もちろん日本の上空まで飛んでこないことには日本を攻撃することは出来ないから、上空を通過するミサイルには日本を攻撃する能力はある、といえるが。でも、そういうミサイルなら、もうずいぶん前から開発されている。いま、騒ぎ立てることではない。
なぜ、安倍が、いま、北朝鮮のミサイルが日本にとって脅威であると言っているのか、その「本心」を探らないといけない。
もし北朝鮮がアメリカにミサイル攻撃をしかけたなら、アメリカは当然北朝鮮に反撃するだろう。その米軍はどこからやってくるか。アメリカ本土からか、グアムからか。まさか。北朝鮮に近い、韓国、日本の基地にいる米軍が最初に出動する。その後、アメリカ本土からの兵士が増員される。
このとき北朝鮮は、韓国、日本に駐留する米軍を放置したまま、アメリカ本土攻撃だけを展開するか。そんなことをするはずがない。身近な米軍を攻撃する。つまり韓国、日本の米軍基地を攻撃する。韓国、日本の領土が戦場になる。
これがほんとうの「脅威」である。
逆に言えば、北朝鮮がアメリカにミサイル攻撃をしかけ、それにアメリカが反撃しない限り、韓国、日本が戦場になることはない。出発点、途中経過を省いて、「日本が攻撃されたらどうする」という論理展開は、国民の恐怖をあおるだけで、何も解決しない。
「北朝鮮が日本を攻撃してきたら」を想定する前に、北朝鮮がアメリカを攻撃しないようにするためには、ということろからはじめないといけない。
「出発点」と「途中経過」を省略してはいけない。こういう省略を「情報操作」と言う。安倍のやっていることが、これにあたる。
「途中」を省略してはいけない、ということは別の角度からも指摘できる。
読売新聞の社説は「邦人救出も検討課題に」という小さな見出しをつけたあと、こう書いている。
朝鮮半島有事が現実味を帯びてくれば、政府は、国民を守るため新たな対応を迫られる。
自民党は公約で、自衛隊による在留邦人救出の態勢構築や能力向上を挙げた。麻生副総理は、武装難民が日本に流入する危険性にも言及した。政府・与党は、様々なケースを想定し、総合的な対策を検討しておくことが重要だ。
この文は、安倍(政府・与党)が、韓国や北朝鮮にいる日本人をどうやって救出するかという具体的方法を確立していないということを意味する。まだ「確立されていない」から、それを「検討することが重要」になる。
戦争法が問題になったとき、安倍はアメリカの艦隊が日本人を救出するというイラストを掲げて説明したが、アメリカ艦隊が救出するのは在留アメリカ人だろう。日本の自衛隊は、在留アメリカ人を救出する作戦の手助け(集団的自衛権)を求められるだけだろう。そこでアメリカの救出作戦を手助けすることを拒めば、その後の日本人救出はアメリカには全体に助けてもらえない。
自前(自衛隊だけで)在留日本人を救出するには、なんといっても、韓国との関係を良好なものにしておかなければならない。日本はかつて韓国を侵略している。そういう「前歴」がある軍隊が韓国に上陸すれば、それがたとえ日本人救出という目的であっても、けっして歓迎されないだろう。日本人救出のふりをして、韓国を攻撃しかねない。日本人を救出するとき、助けを求めれば韓国人も助けてくれるか、そう問われるだろう。
ほんとうに日本が攻撃される危険があるなら、まず、韓国・北朝鮮にいる日本人の救出をどうするかという問題を解決しておく必要がある。韓国と日本の関係を良好なものにしておく必要がある。軍備を増強するまえに、その問題を解決しておかなければならない。
在留日本人を救出するために何が必要か、事前に何をすべきかを考えずに(具体的にしめさずに)、「圧力」をかけるということは、在留日本人を見殺しにするということだろう。
麻生は、難民の中には武装難民もいる。射殺するしかない、というようなことを言ったが、人を殺すのは戦争の始まりである。(読売新聞の社説は「射殺発言」には触れずに、「危険性に言及した」と、まるで麻生が「正論」を語ったかのように書いているが。)
安倍も麻生も、どうやって戦争をするかは考えても、どうやって戦争を回避するかを考えない人間である。
「途中」を省略して「結論」だけ叫ぶのは、「途中」のなかにある「解決方法(可能性)」を見捨てることである。
読売新聞の論調は、安倍支持の論調である。しかし、その安倍支持を語ることばのなかからだけでも、これだけの問題点を指摘できる。
ことばはいつでもある論理を前面に出すと同時に、別の論理を背後に隠す。
隠されている論理を浮かび上がらせながら、書かれている内容を吟味しないといけないと思う。
#安倍が国難 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇生前退位
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