詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(57)

2019-02-14 12:26:08 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」

57 よみがえる時

 詩法そのものを書いている。

 と池澤は書いている。
 私が注目するのは、後半三行の、

夜でも、昼間の眩しい光の中でも、
それらが頭脳のうちによみがえる時、
それを捕えるべく努力せよ、詩人よ。

 タイトルにもなっている「よみがえる時」。
 実際に見ているのではなく、「頭脳のうちによみがえる」、そのときに「詩句」を書けと言っている。
 この三行に先立って、

おまえが見たところの愛の姿を。

 という行がある。「見た」ということばがある。だから、これは「視覚」としてよみがえったということなのだろうけれど、私はその「視覚」を信じてはいない。
 「よみがえる」というのは「夢」と同じで、あくまで「ことば」だ。
 見たものが「ことば」になってよみがえる。それを即座に書け、とカヴァフィスは言っているように思う。

 池澤は、「愛の姿」の「姿」について、

もとの言葉は英語で言うならばvisionにあたり、現実であろうとなかろうと目に見えたものを意味する。

 と書いている。
 だから私の読み方は完全に「誤読」なのだが、誤読を承知で、私は「みたもの」ではなく「みたものがことばになってよみがえる」と「ことば」を挿入して読む。現実でないものは目に見えないを手がかりに。
 現実にはないものも、人間はことばにして言い、そのことばを聞くことができる。






カヴァフィス全詩
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