57 よみがえる時
詩法そのものを書いている。
と池澤は書いている。
私が注目するのは、後半三行の、
夜でも、昼間の眩しい光の中でも、
それらが頭脳のうちによみがえる時、
それを捕えるべく努力せよ、詩人よ。
タイトルにもなっている「よみがえる時」。
実際に見ているのではなく、「頭脳のうちによみがえる」、そのときに「詩句」を書けと言っている。
この三行に先立って、
おまえが見たところの愛の姿を。
という行がある。「見た」ということばがある。だから、これは「視覚」としてよみがえったということなのだろうけれど、私はその「視覚」を信じてはいない。
「よみがえる」というのは「夢」と同じで、あくまで「ことば」だ。
見たものが「ことば」になってよみがえる。それを即座に書け、とカヴァフィスは言っているように思う。
池澤は、「愛の姿」の「姿」について、
もとの言葉は英語で言うならばvisionにあたり、現実であろうとなかろうと目に見えたものを意味する。
と書いている。
だから私の読み方は完全に「誤読」なのだが、誤読を承知で、私は「みたもの」ではなく「みたものがことばになってよみがえる」と「ことば」を挿入して読む。現実でないものは目に見えないを手がかりに。
現実にはないものも、人間はことばにして言い、そのことばを聞くことができる。
カヴァフィス全詩 | |
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