52 描かれたもの
ここで書かれている「仕事」とは何だろうか。あとに出でくる「ものを語るよりはむしろ見ることをわたしは欲した。」から考えるなら、「ものを語る」ことが仕事、カヴァフィスの詩人としての仕事を指しているように感じられるが。
私はあえて「誤読」する。「わたし」は画家だと。誰かの描いた作品を見ている。
絵をことばで反芻する。詩人ならば、絵をことばで描写する(再現する)だが、画家ならば「反芻する」になる。眼と手が自然に動く。画家は仕事が進まず疲れているので、眠っている少年を「走り疲れて」と反芻してしまう。絵なのだから、少年が走ってきたかどうかなどわからないのに、「疲れて」意識が「走り」をひっぱりだす。
「疲れて」ということばの一方に「天上的な真昼」ということばがある。「包む」ということばがある。画家は「天上」のひかりに「包まれて」、この少年のように眠ることを夢の中で反芻する。想像するのではなく、それはあくまでも反芻である。
池澤は、こんなことを書いている。
私は、「画家は絵(色と形)によって官能を癒し、詩人は詩(ことばと音)によって官能を癒す」と思う。
画家が絵について語るという詩を書くときも、カヴァフヘスは絵ではなく、ことばを書いている。ことばによって自分を癒している。あるいは欲望している。欲望することだけが官能を癒すと知っている。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
わたしは自分の仕事を愛しており、おろそかにはしない。
しかし今日、創作は遅々としか進まなかった。
ここで書かれている「仕事」とは何だろうか。あとに出でくる「ものを語るよりはむしろ見ることをわたしは欲した。」から考えるなら、「ものを語る」ことが仕事、カヴァフィスの詩人としての仕事を指しているように感じられるが。
私はあえて「誤読」する。「わたし」は画家だと。誰かの描いた作品を見ている。
この絵の中にわたしは今見る、
泉のそばに美しい一人の少年が
走り疲れてか、横になっているさまを。
なんと美しい子供、なんと天上的な真昼が
眠っている彼を包むことか。--
絵をことばで反芻する。詩人ならば、絵をことばで描写する(再現する)だが、画家ならば「反芻する」になる。眼と手が自然に動く。画家は仕事が進まず疲れているので、眠っている少年を「走り疲れて」と反芻してしまう。絵なのだから、少年が走ってきたかどうかなどわからないのに、「疲れて」意識が「走り」をひっぱりだす。
「疲れて」ということばの一方に「天上的な真昼」ということばがある。「包む」ということばがある。画家は「天上」のひかりに「包まれて」、この少年のように眠ることを夢の中で反芻する。想像するのではなく、それはあくまでも反芻である。
池澤は、こんなことを書いている。
オスカー・ワイルドの「官能によって魂をいやし、魂によって官能をいやす」という有名な表現をカヴァフィスは知っていただろうか。
私は、「画家は絵(色と形)によって官能を癒し、詩人は詩(ことばと音)によって官能を癒す」と思う。
画家が絵について語るという詩を書くときも、カヴァフヘスは絵ではなく、ことばを書いている。ことばによって自分を癒している。あるいは欲望している。欲望することだけが官能を癒すと知っている。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455