詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

池澤夏樹のカヴァフィス(60)

2019-02-17 07:47:28 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
60 オスロエネの町で

 酒場で喧嘩し、けがをした友だちのレーモンを描いている。

ここに集う我々は多種多様、シリア人、ギリシャ人、アルメニア人、メディア人
レーモンにしてもその一人だ。しかし昨日の夜
月に照された彼の官能的な顔を見ていて、
我々の心はプラトンのカルミデスへとおもむいた。

 この部分でおもしろいのは、レーモンはそれでは何人だったのか、それがわからないことだ。「官能」は何人であるかを問題にしない。
 池澤は「カルミデス」に註釈をつけている。完璧な肉体を持っている。

そこから善悪を識別する知恵の定義をソクラテスに導かせている。

 私は、「59 エンディミオンの像の前にて」との関係で、「月に照らされて」の方に興味を持った。そこにはこんな註釈がついていた。

エンディミオンは神話中の人物。美青年で月の女神セレネが彼に恋をし、ゼウスに頼んで彼を不老不死のまま永遠に眠るようにしてもらって、夜ごと訪れることにしたという。

 月の光と死、そして官能はギリシャでは絡み合っている。少なくとも、カヴァフィスは結びつけているのだと思う。


カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
書肆山田


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