58 路上で
最初は「視覚」から入っていく。「青ざめた」「栗色」と色が描写される。「見える」という動詞もある。
しかし、だんだん抽象的になっていく。
ネクタイは「色」ということばになり、襟は「形」と表現されるだけで、「視覚」を具体的には刺戟しない。読者が想像しないといけない。
そして、後半。
「許されざる快楽」が二度繰り返される。わずか八行の詩のなかで。
ことばを繰り返すとき、カヴァフィススは、見ているのではなく「体験している」。青年になっている。その瞬間、ここに書かれていることは「自画像」になる。
カヴァフィスは、こんなふうにことばと一体になる。
池澤は
と書いている。
カヴァフィスが「客観的観察者」だったときは一度もない、と私は思う。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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そのわずかに青ざめた好ましい顔、
ぼんやりとうつろな栗色の眼、
二十五歳だがむしろ二十歳に見える、
着るものにはどこか芸術家めいたところ
--ネクタイの色とか、襟の形とか--
最初は「視覚」から入っていく。「青ざめた」「栗色」と色が描写される。「見える」という動詞もある。
しかし、だんだん抽象的になっていく。
ネクタイは「色」ということばになり、襟は「形」と表現されるだけで、「視覚」を具体的には刺戟しない。読者が想像しないといけない。
そして、後半。
あてもなく道を歩いてゆく、
許されざる快楽の催眠術から覚めぬままに、
決して許されざる快楽の体験から。
「許されざる快楽」が二度繰り返される。わずか八行の詩のなかで。
ことばを繰り返すとき、カヴァフィススは、見ているのではなく「体験している」。青年になっている。その瞬間、ここに書かれていることは「自画像」になる。
カヴァフィスは、こんなふうにことばと一体になる。
池澤は
ここで詩人ははたして客観的な観察者なのか否か。
と書いている。
カヴァフィスが「客観的観察者」だったときは一度もない、と私は思う。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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