堤美代『日の傘』(詩的現代叢書38)(書肆山住、2019年11月16日発行)
堤美代『日の傘』の「招魂」。
「水を汲む」という手の動きを思い出す。水が零れないようにするのだけれど、一方で上の方は開かれている。「水を汲む」は「水を閉じ込める」ではない。同じ動きがホタルをつかまえるときにも起きている。完全に閉じ込めるのではなく、開かれたところを残して、そっとつつむ。逃げるなら逃げてかまわない。
三連目で「おおかたは」「こぼしてしまった」と書いているが、むしろ、こぼすことが目的ではなかったかとさえ思える。それはつかまえるではなく、触れ合うということにもなるだろう。手のひらに一瞬おさまる。手のひらを一瞬照らして、すーっと去っていく。来て、去っていくという「動き」こそ、堤がホタルに求めているものだとわかる。
途中を省略して、最後。
美しいなあ、と思う。
二連目に書かれている「草の外の闇」が、ここに静かによみがえってくる。ホタルは堤の手のひらを草の一葉と信じてやってきて、しばらくとどまり、ふたたび去っていった。川辺の水に手のひらを浸すと、青い光が動くようだ。水の感触をホタルの感触のように感じ、自分の手を草のようにも感じている。
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堤美代『日の傘』の「招魂」。
柄杓で水を汲むように
手のひらの淵で
ホタルの青い光を
汲もうとした
おおかたは
手のひらの外の草の闇に
こぼしてしまった
「水を汲む」という手の動きを思い出す。水が零れないようにするのだけれど、一方で上の方は開かれている。「水を汲む」は「水を閉じ込める」ではない。同じ動きがホタルをつかまえるときにも起きている。完全に閉じ込めるのではなく、開かれたところを残して、そっとつつむ。逃げるなら逃げてかまわない。
三連目で「おおかたは」「こぼしてしまった」と書いているが、むしろ、こぼすことが目的ではなかったかとさえ思える。それはつかまえるではなく、触れ合うということにもなるだろう。手のひらに一瞬おさまる。手のひらを一瞬照らして、すーっと去っていく。来て、去っていくという「動き」こそ、堤がホタルに求めているものだとわかる。
途中を省略して、最後。
川辺の青い水を汲むと
手のひらはもう
ホタルの青い光の記憶が泌みて
草の形に伸びているだろう
美しいなあ、と思う。
二連目に書かれている「草の外の闇」が、ここに静かによみがえってくる。ホタルは堤の手のひらを草の一葉と信じてやってきて、しばらくとどまり、ふたたび去っていった。川辺の水に手のひらを浸すと、青い光が動くようだ。水の感触をホタルの感触のように感じ、自分の手を草のようにも感じている。
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評論『池澤夏樹訳「カヴァフィス全詩」を読む』を一冊にまとめました。314ページ、2500円。(送料別)
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注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
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『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
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