詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy loco por espana(番外篇83)Joaquin Llorens Santa, Serie Constructivismo n-40

2020-08-15 16:37:10 | estoy loco por espana

Joaquin Llorens Santa, Serie Constructivismo n-40



El recta’ngulo es difi’cil de mover.
El hierro es pesado y difi’cil de mover.
Sin embargo, cuando Joaqui’n combina el hierro cuadrado, el hierro, que deberi’a haber sido pesado, comenza a moverse ligeramente.
Y el movimiento no es solo el movimiento del hierro cuadrado.
Tanbie’n, el espacio circundante se mueve junto.

Ver una escultura no es solo ver la escultura, sino tambie’n ver los cambios en el espacio.



四角形は動きにくい。
鉄も重くて動きにくい。
しかし、ホアキンが四角い鉄を組み合わせると、重いはずの鉄が軽やかに動きはじまる。
そして、その動きは四角い鉄が動くだけではない。
また、周囲にある空間が一緒に動く。

彫刻を見ることは、その造形を見るだけではなく、同時に空間の変化も見ることだ。


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嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(91)

2020-08-15 09:47:31 | 『嵯峨信之全詩集』を読む
* (ぼくの夢がたち去つていく)

血の織物着て
その道だけはどこかへたどりつくことがない

 夢が立ち去る。そこに道がある。けれど、その道はどこかにたどりついているわけではない。永遠に立ち去るという運動がある。
 あるいは「血の織物」という「もの」が残り続ける。
 「道」と「血の織物」は、この詩のなかでは、それぞれが互いの比喩として存在している。




*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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池田瑛子『星表の地図』

2020-08-15 09:34:05 | 詩集


池田瑛子『星表の地図』(思潮社、2020年08月20日発行)

 詩に限らないが、ことばを書くことは一種の「根気」である。「根気」をどう把握するかはひとによって違うだろうが、私は簡単に「積み重ね」と考えている。積み重ねの基本は「同じ」を積み重ねる。最初に選んだものを守り通す。そうすると、積み重なったものが「整っている」感じになる。落ち着く。もちろん、落ち着いていればそれでいいというのではないが、落ち着いているものを見ると安心する。池田瑛子『星表の地図』を読んでいると、そんなことを考える。
 「射水線 過去の駅から」という詩がある。

海沿いの町を三日月形に走る線路
右端の木立の影から現れてくる電車
左からカーブを曲がってくる電車
単線のローカル線 車両がすれ違う四方駅
朝夕は二両編成 日中は一両
速くはなかったけれど ほっとしたあの振動

 退屈である。何も起きそうにない。まあ、ローカル線なのだから、そういうものなのだ。このあと詩には「魚の行商のおばさんたちの話し声」というようなものも描かれるが、それはただそこにあるだけのものである。あるがまま。何も変わらない。
 で、これが詩か。
 詩ではない、少なくとも「現代詩」ではない、と切り捨てることは簡単である。だが、この、目新しさがひとつもない「積み重ね」に少しつきあってみるのも悪くない。私たちが見るものは、たいていが「積み重ね」である。そして、そこには、「積み重ね」を繰り返す「根気」だけがみつけだすものもあるのだ。
 「海王丸のいる風景」。

四十六年の悲願がみのって
平成二十四年 新湊大橋が架かった
海王丸パークに係留されている
帆船「海王丸」 乗船してみると
半分に切った椰子の実で磨かれた甲板
訓練生の汗ばむ掌を覚えている大舵輪
色とりどりの国際信号旗
海図に自船の位置を記入するとき
方位を測った井上式三角定規が
ヨットの形に置かれ
遠洋航海の写真は群れ飛ぶ白鳥のようだ
薬品棚と医療器具が並ぶ診察室

 池田自身の日常(暮らし)を見つめてきた視線が、他人を発見し、その他人をまるで池田のように動かしている。海王丸の乗組員、実習生が池田と同じように「積み重ね」を生きた人間かどうかはわからないが、池田は「同じ人間」として想像し、自分の「肉体」を重ねている。
 そうすると、そこに突然、乗組員や実習生の「夢」のようなものが「実感」として噴出してくる。

方位を測った井上式三角定規が
ヨットの形に置かれ
遠洋航海の写真は群れ飛ぶ白鳥のようだ

 乗組員、実習生が「ヨット」や「群れ飛ぶ白鳥」を見たかどうか、わからない。だが、池田は「見た」と実感し、それが自分の夢なのか、乗組員の現実なのか、区別せずに書いている。「積み重ね」が突然「異次元」へとひとを連れて行くのだ。
 この美しさは、「積み重ね」と「根気」がつかみ取ったものである。
 こういう「根気」のひとは、「根気」のひとを呼び寄せる。「躍る布袋」は濱谷白雨と池田の父の交流を描いている。白雨は日本画家なのだが、

トラホームにかかり失明の不安に悩んだ時期
老荘の教えに傾倒し
寒山の詩集をすべて書写し
良寛禅師の必死に学んだという
手術して視力は回復し絵を描き続けたが
東京に家族をおいて
郷里の富山で仙人のように暮らした
 
 その白雨没後五十年展の次の年、

次の年の秋 小春日和の日にわたしたちは
六十五年余り前 (昭和二十年代)
白雨と父がたびたびお酒を酌み交わした
同じお座敷に白雨の軸
「白鷺と蓮」「滝」「躍る布袋」をひろげ
遠い親戚のように集まった

そのとき 庭に十数羽の青い鳥たちが
急に集まり木々や水鉢にパタパタと羽搏き
驚いてわたしたちは縁側にでてみた
あれは亡くなったひとたちだったろうか

 「積み重ねてきた」交流が、そのなかでととのえてきたこころが「あれは亡くなった人たちだったろうか」というところへ、異次元へ、自然に結びつく。たぶん、異次元ということを意識せずに。
 「積み重ね」「根気」がつくりだす「道」というものがあるのだ。




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