レオナルドマイコ「一碧万頃」(「現代詩手帖」2020年08月号)
レオナルドマイコ「一碧万頃」は投稿欄の作品。暁方ミセイが選んでいる。「一碧万頃」は何と読んでいいのかわからないが「碧」が真っ青な空を感じさせる。「一」と「万」は数字。一億光年のような果てしなさを、象徴しているのか。
「うすい瞼から血潮が/透き通っていくのがわかる」が「からだと空のあいだ」と言い直される部分が、紺碧の一億光年を感じさせる。これは私の「誤読」なのだろうが、詞は「誤読」をするためにあるのだから、わたしは勝手に納得している。
そして、その「からだと空のあいだ」の「あいだ」でウミネコが結晶のように生み出されてくるのも、透明感があってとても気持ちがいい。
全体的存在としての透明を見た、という感じ。
そういうものが「心電図の/波形」という肉体とも機械とも電子ともとれるものと接触しながら「子午線」という「宇宙法則」(人間が設定したものだけれど)とも交錯する。透明感は、どこまでも「絶対的」であろうとする。
とてもおもしろい。
ただ、私は「ほつれゆく」「うしなわれゆく」「おさなき」という古くさいことばや、「とぶちから」「およぐちから」「ゆうごうてん」というひらがな表記にはついていけない。「ほつれていく」「うしなわれてゆく」「おさない」「飛ぶ力」「泳ぐ力」「融合点」では、どうしていけないのか。
「文語」と「口語」、「漢字」と「ひらがな」をつかいわけているのだと思うけれど、この文体としての表記リズムに、私は慣れることができない。私は音読は複数のひとを前にして詩を紹介するときくらい。ひとりで読んでいるときは黙読だ。だが、ことばを把握するのは、あくまで「耳」であって、目ではない。目が悪いせいか、こういう目への負担を強いてくるは、どうしても慣れることができない。
慣れることができないと書きながら、その詩を紹介しているのだから、この詩はとても刺戟的だということになるのかもしれない。
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レオナルドマイコ「一碧万頃」は投稿欄の作品。暁方ミセイが選んでいる。「一碧万頃」は何と読んでいいのかわからないが「碧」が真っ青な空を感じさせる。「一」と「万」は数字。一億光年のような果てしなさを、象徴しているのか。
うすい瞼から血潮が
透き通っていくのがわかる
ほつれゆく記憶の中 ひとしくうしなわ
れゆくおさなき日々、とぶちからもおよ
ぐちからでもないその きみとおしゃべ
りするちからを、ふりしぼっている 手
をかけてしまった自分の頸部から 頬へ
むかい ゆるませてくれた「空を撫でる
しぐさをするからね。」ウミネコよ 空
には、わたしによく似たきみというひと
が存在していたのだ
ウミネコよ、きみに託してみたかった
からだと空のあいだに
解れている羽毛がきもちよく風になび
く。切りっぱなしの前髪まで
翳を 踏み 空なのに 踏み
あって わらいあう
「うすい瞼から血潮が/透き通っていくのがわかる」が「からだと空のあいだ」と言い直される部分が、紺碧の一億光年を感じさせる。これは私の「誤読」なのだろうが、詞は「誤読」をするためにあるのだから、わたしは勝手に納得している。
そして、その「からだと空のあいだ」の「あいだ」でウミネコが結晶のように生み出されてくるのも、透明感があってとても気持ちがいい。
全体的存在としての透明を見た、という感じ。
そこに空とのゆうごうてんを見つけだす
遠い海の遥か向こうには、こぎ終えた
櫂を、投げ込む ちぎれそうな心電図の
波形がほつれながら 子午線に交わり、
そういうものが「心電図の/波形」という肉体とも機械とも電子ともとれるものと接触しながら「子午線」という「宇宙法則」(人間が設定したものだけれど)とも交錯する。透明感は、どこまでも「絶対的」であろうとする。
とてもおもしろい。
ただ、私は「ほつれゆく」「うしなわれゆく」「おさなき」という古くさいことばや、「とぶちから」「およぐちから」「ゆうごうてん」というひらがな表記にはついていけない。「ほつれていく」「うしなわれてゆく」「おさない」「飛ぶ力」「泳ぐ力」「融合点」では、どうしていけないのか。
「文語」と「口語」、「漢字」と「ひらがな」をつかいわけているのだと思うけれど、この文体としての表記リズムに、私は慣れることができない。私は音読は複数のひとを前にして詩を紹介するときくらい。ひとりで読んでいるときは黙読だ。だが、ことばを把握するのは、あくまで「耳」であって、目ではない。目が悪いせいか、こういう目への負担を強いてくるは、どうしても慣れることができない。
慣れることができないと書きながら、その詩を紹介しているのだから、この詩はとても刺戟的だということになるのかもしれない。
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