ロベール・ブレッソン監督「田舎司祭の日記」(★★★★+★)(2021年11月07日、キノシネマ天神スクリーン1)
監督 ロベール・ブレッソン 出演 クロード・レデュ
この時代の映画がいいのか、ブレッソンがいいのか。
両方いいんだろうなあ。
「田舎司祭の日記」というくらいで、「日記」のアップはあるし、ことばことばことばの連続。アクションが少ない、というか、そのアクション自体がなんとなく「演じています」という感じ。司祭が汗を拭くシーンなんか、リアルではなくて、「様式美」としてのアクション。
でもね。
これがいい。とってもいい。肉体の動きを、はっきり動いているという感じでみせる。つまり、誇張があるのだが、その誇張は役者の「表情」を引き立てるためにある。肉体の動きが明確なので、何をしているか、すぐ「意味」がわかる。「意味」がわかるので、見ている方に「余裕」が生まれる。どういう余裕かというと、そういうとき「顔/表情」はどう動くのかを見る余裕だ。顔に集中できる。目の動きに集中できる。
映画は、やっぱり「顔」を見せる。
顔の大きさは、どんな人間も、そんなに変わらない。どんなに近づいても大きさに限度がある。でも、それがスクリーンに拡大されて映るとき、見えなかったものが見える。こころの動きが見える。
肉体の動きは「形式美」であらわし、こころの動きは「表情のアップ」で見せる。このバランスが、とってもいい。
そして、ここからもうひとつ。
人は他人を見るとき、全部を見ているようで、そうではない。一部を見て、それを拡大し、自分のなかに「ある人物」をつくりあげてしまう。特に、他人の「こころ」をつくりあげてしまう。それが時には「誤解」を生み、そこから人間ドラマが複雑に動く。
この映画そのものが、そういうストーリーでもある。新しく赴任してきた司祭は村人のことを知らない。わかるのは「一部」である。その「一部」から全体を想像し、想像したことを「理解」と勘違いする。これは、村人の方にも言える。司祭の全部を知っているわけではない。でも、司祭が何をしているか、わかったつもりになる。
「形式的(常套句のような)」行動を彩る瞬間的な「表情」。
これは、最初の方のシーンで象徴的に描かれる。
司祭が自転車で村にやってくる。汗を拭いている。離れたところで男と女がキスをしている。女がキスをしながら司祭の方を見る。男と女は、どう見ても「不倫」である。「不倫」を司祭に目撃されて、ふたりは去っていく。不倫かどうかは、村にやってきたばかりの司祭にはわからないはずである。でも、不倫だと感じる。それは、女が司祭を見るときの「目つき」、何を見ているの、と非難するような目つきにあらわれている。若い恋人なら、司祭に見られても司祭を見ている司祭を非難するような目つきはしない。それを司祭自身が感じ取る。もちろん観客である私も感じてしまう。これを鮮明にするには、行動はやはり「形式的」でなくてはならないのだ。
このバランスが、とってもいい。
さらに(追加の★のための注釈)。
出演者は、誰が誰だか、私にはわからないのだが。
領主(?)の妻を演じた女優に見とれてしまった。まるで杉村春子。ものすごく、うまい。そこにたしかに人間がいる、という感じ。一度も会ったことがないのだけれど、この人に会ったことがある。この人は、いつもこういう話し方、こういう表情をする、と感じてしまう。
司祭(クロード・レデュ)が主役なのだけれど、二人の対話のシーンでは誰かわからないこの女優に見とれてしまった。
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