サラマーゴの文体。
245ページで、ハッと衝撃を受ける。
上から二行目。
La mujer ha salido ....
現在完了形。言わば、過去形。ただし、意識は現在につづいている。
それが
Va por el corredor
と現在形にかわり、クライマックスの放火のシーンでは
La mujer está de rodillas....
以下、現在形がつづく。
ナレーションの文体を変えているのだ。
日本語でいえば、「した」でも意味は通じる。実際、日本語訳は過去形である。
でも、現在形の方が臨場感がある。
女の行動だけれど、自分が行動している気持ちになる。
現在完了形→現在形→現在形の連続と変化していくところが、本当に素晴らしい。
文学の醍醐味は、こういうところにある。
よく読むと、こういう文学的仕掛け、しかも本質的な仕掛けが、この小説にははりめぐらされている。
以前書いたが、最初の信号の描写から、それは始まっている。
これを無視した(気づかない?)雨沢泰の訳文は、ちょっとひどすぎる。
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