補正予算
2012年11月27日の読売新聞。1面に補正予算案の記事。(見出し、記事はネット配信のもの。https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211126-OYT1T50188/
補正予算案を閣議決定、過去最大の35兆9895億円…コロナ対策に18兆円
政府は26日の臨時閣議で、新たな経済対策などを盛り込んだ2021年度補正予算案を決定した。一般会計の歳出は35兆9895億円で、補正予算としては20年度第2次補正の31・9兆円を上回って過去最大となる。12月6日に召集される臨時国会に提出し、年内の成立を目指す。
財源を確保するため、国の借金となる国債を22兆580億円発行する。このうち、赤字国債は19兆2310億円、公共事業などに使い道が限られる建設国債を2兆8270億円発行する。21年度の税収の見通しを6兆4320億円引き上げるほか、20年度の歳入から歳出を差し引いた「剰余金」の6兆1479億円を活用する。
新たな経済対策を実行する費用としては、31兆5627億円を計上した。このうち、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に18兆6059億円、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の政策に8兆2532億円を充てた。自治体に配る地方交付税交付金は3兆5117億円を追加した。
見出しに「コロナ対策に18兆円」、記事には「経済対策など」と書いてある。これだけ読むと、コロナで脆弱化した経済を立て直すために補正予算を組んだと読むことができる。
ところが、政治面(4面)を読むと、こんな記事がある。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211126-OYT1T50305/
防衛補正 最大7738億円…予算案 哨戒機など前倒し取得
政府が26日に閣議決定した2021年度補正予算案で、防衛省は補正予算案としては過去最大となる7738億円を計上した。22年度当初予算の概算要求に計上していた哨戒機や弾薬を前倒しで取得する。自衛隊の対処能力を迅速に高めるほか、防衛力強化の姿勢を米国に示す狙いもある。
岸防衛相は26日、防衛省で開かれた会合で「安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、防衛費は我が国防衛の国家意思を示す大きな指標となる」と述べた。
補正予算案では、中国の軍事力強化などを念頭に、ミサイル防衛能力や南西地域の島しょ防衛体制の強化を図るため、新規の装備品取得に全体の3割超にあたる2818億円を計上した。補正予算での装備品購入が続いている近年でも異例の規模で、当初予算の5兆3422億円と合計すると、今年度の総額は6兆円超となる見通しだ。
具体的には、船舶や潜水艦を監視するP1哨戒機3機の取得に658億円を計上。弾道ミサイルを迎撃する地対空誘導弾「PAC3」の改良型、巡航ミサイルから自衛隊基地を防護する地対空誘導弾の取得費として、それぞれ441億円、103億円を盛り込んだ。 防衛省は、今回の補正予算案と来年度当初予算案を一体とし、「防衛力強化加速パッケージ」と位置づけている。日本の防衛力を巡っては、4月の日米首脳会談の共同声明で強化に向けた「決意」を明記したほか、自民党も10月の衆院選の公約で、「国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に増額を目指す」と掲げた。
中国は東シナ海の沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返しているほか、中露合同での軍事活動も活発化させている。北朝鮮も今年に入り弾道ミサイルを相次いで発射しており、今後も防衛費の増加傾向は強まるとみられる。
ただ、補正予算で主要装備品を調達する近年の傾向については、政府・与党内でも「緊急性の有無が分かりにくく、防衛費の総額も把握しづらい。本来は本予算に盛り込むべきだ」との指摘がある。
防衛費とコロナ対策と経済対策。何の関係がある? コロナが拡大し、経済が疲弊している。そのてこ入れに予算を組むのだったら、防衛費は関係ないだろう。防衛費を削減してでも、緊急のコロナ対策、経済対策に予算をつぎ込むべきだろう。なぜ、これまでで最大の規模の補正予算を組まないといけないのか。
記事の最後に、防衛費を補正予算で組み込むことに対する疑問が「付け足し」として書いてあるが、付け足しではなく、最初に書くべきだろう。その疑問から補正予算そのものを見直さないといけない。
だいたい前文に書いてある「防衛力強化の姿勢を米国に示す狙いもある」とは、いったいどういうことなのか。「防衛力強化の姿勢を米国に示す」ことが、たとえば中国や北朝鮮が日本への侵略をあきらめる(させる)こととどういう関係があるのか。もし、中国、北朝鮮の行動に対して「牽制する」というのなら、前文は、防衛力強化の姿勢を「中国や北朝鮮」に示すでないと、「意味」が通じない。
さらに、記事の前文に「22年度当初予算の概算要求に計上していた哨戒機や弾薬を前倒しで取得す」とあり、見出しにも「前倒し」ということばをつかっている。これは、どうみてもおかしい。いま、コロナ対策に全力を尽くさないときだとするならば、防衛費予算は「先送り」して、22年度予算に概算要求計上している防衛費をコロナ対策に回すべきだろう。やっていることがあべこべだろう。
で、ここから見直すと。
コロナ問題で経済が疲弊したのは日本だけではない。アメリカも同じ。アメリカの経済復興に日本はどう協力するか。軍備を買う。武器をアメリカから買うのだ。つかいもしない(つかえば戦争になってしまう)ものを買うというのは、金を捨てるのと同じである。つまり、これはアメリカのご機嫌とりのためにやることなのだ。アメリカのご機嫌とりのために「防衛費」を「前倒し」するのである。アメリカに支払う金を優先するのである。
中国にしろ北朝鮮にしろ、いまは「外国へ侵攻する」(外国を相手に戦争をする)ということよりも、コロナ対策に全力を注いでいるだろう。こんなときに、わざわざ中国、北朝鮮は危険な国だと主張して、武器を購入するなんて、どう考えてもおかしい。北朝鮮のミサイル発射など、北朝鮮は外国に対して攻撃能力があるということを外国に示すというよりも(示す相手があるとすれば、それは日本ではなく、アメリカ)、北朝鮮の国民に向けて示しているだけだ。それは北朝鮮国内の不満を緩和するためだろう。狙いは、コロナ対策や経済対策に対する国民の不満を目先を変えてそらしてしまうということだろう。
これって、安倍がやった「北朝鮮対策」と同じ。北朝鮮は危険だ、と言い募って、国内での安倍政権への不満を隠す。安倍は「日本が分裂している場合ではない。北朝鮮に対抗するために、日本は団結しなければならない。安倍批判をしているときではない」といいたかったように、北朝鮮の金は「コロナ対策も他の対策も、アメリカに圧力をかけて解決する。北朝鮮はアメリカと対等である。いや、アメリカこそ北朝鮮に屈するべきである」という論を展開するためにミサイル実権をやっている。日本が相手にされていないのは、拉致問題がぜんぜん進展しないこと、日本が拉致問題についてアメリカに協力を求めるしかないということからだけでも明らかだろう。独自に何もできない国を北朝鮮が相手にするはずがない。
2012年の自民党改憲草案の「軍事独裁」を実現に向けて、予算が先取り実施されているのだ。