片目のつぶれた、モンゴル犬。
アパートの近くを、根城に結構可愛がられているみたい。
夫と出かけるたびに、前回滞在中にびっこの野良犬に情を通わせていたことを思い出す。
おとつい、やはり夫と外出したとき、ア、いるな、と思ったとたんその犬がおしっこをした。
二人同時に、「メスだったんだ」と顔を見合わせた。
オスだと思っていたわけでもないのですが、私たちの頭の中では、性別の無い野良犬と言う分類に這入っていたのが、メスの野良犬と言う分類に分けられたわけです。
彼女、ある制服おまわりさんには、尻尾を振ってうれしげに付いていきます。
そのほかの人間には、飢えた野良犬の風情を見せないので、この辺りではそれと認知された犬なんだろうと思えます。
今日、少し古くなったヒャム(少しやわらかめのサラミのようなもの)を、一口大に切ってビニールの袋に入れて出かけました。
そして、食べさせようとビニールのシャカシャカという音がしたら尻尾を振って飛んできた。
きっと彼女には、シャカシャカは、ごはんだよーと同じ意味なのでしょう。
私と目が合っても尻尾は振り続けていました。
ヒャムを地面に置くと期待したものではなかったらしく、直ぐには口をつけませんでした。
アラ、ここでごみになるのかしら、失敗失敗と思っていたら、おもむろに食べ始めました。
今日、初めてなので、食べる様子は眺めないで、買い物に出かけました。
振り返ると食べています。
帰りに同じ場所を見たら、全部なくなっていて、少し離れた車の来ない安全なところでお昼寝中でした。
口笛を吹くと、なぁにというように頭だけもたげて、「あぁ、さっきのあんたね」と言うようにチロリと見たらまた、眠ってしまいました。
彼女の好物は何でしょう。
ホーショールかなぁ。羊肉かなぁ。
尻尾を振る犬は、モンゴルではめったにお目にかかれない。
前回、一緒だった、レトリバーの花ちゃんはもちろん日本で育った犬だから、見事に尻尾を振ってくれた。
モンゴルの犬は、尻尾をお尻に巻いてすごすご逃げる野良犬か、激しく吼えるゲルの番犬か、のイメージが強い。
あんなに尻尾を振る犬は、そして野良犬は、初めてだ。