熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

阪神と村上ファンド

2006年05月30日 | 経営・ビジネス
   阪急は、昨日、村上ファンドとの阪神株買収交渉が纏まらず、時間切れで村上ファンドの了承を取らずに、阪神電気鉄道株を一株930円でTOBすると決議し発表した。
   村上側が1200円台、阪急が800円台の提示価格でスタートし900円台まで近づいたが数十円の溝が埋まらずに終わっていると言う。

   今日、IBMの「中堅企業イノベーション・フォーラム2006」で、企業買収の第一人者である一橋大学佐山展生教授が、「M&A戦略と企業価値向上」と言う演題で講演をし、阪急側のアドヴァイザーの立場で、この問題について語った。
   村上氏とは、三共・第一製薬の合併の時も、三共の大株主とアドヴァイザーの立場で対立したようで、今回は二回目とのことである。
   村上氏の言い分の95%は正しいし、株主の存在を世に知らしめた功績は大きく、高く評価していると言いながら、村上氏との企業買収に対する哲学の違いについて説明した。

   村上氏は、「一円でも多く儲けて投資家に返すことが使命だ」と言っているが、佐山氏は、「投資した対象会社を良くして株価を上げてキャピタルゲインを得ることが大切だ」と言う。
   会社に余剰資産や余剰資金があると、それを使うべきで使わなければ株主に還元せよと言う。しかし、そうすることによって企業価値が下がっても、吾感知せずと言うが、言っていることとやることが全く違う、と佐山氏は非難する。

   経営権を支配しないと言うことで株式の5%取得の報告義務を免除する特例を利用しながら、今度の株主提案で取締役の過半数を支配することを意図しているが、これは経営支配であるにも拘らず、「経営監視」だと言い逃れようとしており、全く素人が電鉄会社を経営など出来る訳がないとも言う。

   今回、日本の金融当局の監視監督を逃れる為にシンガポールに設立した会社には企業の経営も目的に入っているようだが、村上ファンドは、本来、グリーンメーラーで、株を取得して株価を吊り上げて売却して利益を上げるだけが目的の会社であり、株式の長期保有も会社の経営も関心がない筈である。

   株主総会で、村上提案が採択されて村上ファンド側の役員に経営権が移った場合を考えれば、阪神の経営はガタガタになり、株価暴落は筆致である。
   結局大損をするのは村上ファンドで、もし、経営権を掌握しても阪神を切り売りするだけで益々企業価値が下がり日本社会の反発を招くのでそのようなことは起こり得ない。
   もっとも、阪急のTOB条件の変更や村上ファンドは高いオファーがあれば誰にでも売ると言う姿勢を示しているのでハゲタカ・ファンド等への売却なり、要するに、何でもあろう。
   しかし、いくら、資本主義の原則に則った商行為であっても、日本の社会が認めなければ、即ち、日本の世論が許さなければ成功するはずなど有り得ないし、それが、日本の公序良俗であって日本の社会規範であり、今でも立派に作用していると思っている。

   結局、一部の保有株を残すかも知れないが、村上ファンドとしては、930円の阪急のTOBに応じて持ち株を処分して利益を確定せざるを得ないと思われる。
   阪急としては、このままほって置いても、袋小路に入った村上ファンドの立場が悪くなるだけなので熟柿のように掌中に落ちてくるので痛くも痒くもないと思う。
   しかし、経営状態の良くない阪急としては、巨額の買収資金は今後の経営を可なり圧迫するので、統合後の経営の舵取りを余程上手くしないと大変であろう。

   問題は、やはり、優良資産を遊ばせて活用しなかったバリュー株の阪神の経営不在の無能経営が引き起こした悪夢が端緒であったことには変わりない。
   また、阪神が優勝しても300円台にしか評価しなかった日本の株式市場の異常さにも問題があろう。
   日本の経営と株式市場に警鐘を鳴らした村上ファンドの功績は、佐山先生の仰る如く認めなければならないのかも知れないが、村上ファンドが買うとその後を追っかけてその株を買いに出て儲けようとする一般株主が情けない。

   
   
   

   
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする