詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

幸せな日々

2006-01-23 14:29:27 | その他(音楽、小説etc)
ザ・プレイカンパニーの「幸せな日々」を見る。
ベケットの「幸せな日々」は舞台を見たことがないが、写真などで見ると女主人公は丘に埋まって身動きがとれない。
この劇団の脚本は一種の本歌取りになっている。(ポスターは砂山にうつぶせに眠る赤ん坊の上に星条旗が毛布のようにかけられている。)
女性が動けないという状態を女性の精神(感情)過去・現在・未来にわたって不動であるという風に置き換える。女性は戦争が嫌い、自分の子供が人殺しをしたり、殺されたりするなんてとんでもない、と考えている。
そうした女性の視点に、アメリカの男性(ブッシュ的男性)を向き合わせる。そのときアメリカ批判がおのずと浮かび上がる。
へー、ベケットは反戦思想を主題に含んでいたのか、とうならされる。
*
劇中、とてもおもしろいことば(シーン)があった。
主人公はストリートで祈る。世界が一瞬沈黙することを祈る。そしてその一瞬の後、ノイズが爆発する。とてもおもしろいと思う。で、夫に「想像できる?」と聞く。夫は「No, I cannot.」と返事をする。
その瞬間、それこそ一瞬の沈黙があり、ドラムが炸裂し、暗転。大1場が終わる。
あ、すばらしい。
*
最後はベケットそのもの。
息子「何をしているの?」
父「私たちは静かに座っている」
(間)
妻「何をしているの?」
夫「ただ立っている」
妻「なぜ?」
夫「座っている気持ちになれない」

全体として「忍耐」しているのは女か男かという日常の細部にこだわった芝居で、そのこだわりがだんだん積み重なって暴走する。(そこに米批判も浮かび上がる。)
すべての暴走は日常にあるということが浮かび上がる。
ベケットを読み返したくなる芝居だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする