詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高橋博子「希望はわたしの外から」

2006-01-30 19:54:25 | 詩集
 「火曜日」第85号を読む。巻頭の高橋博子の「希望はわたしの外から」の1連目が美しい。

赤ん坊が乳母車から身を乗り出して
色づいた草むらに坐っているネコに
オッー オッーと調子を変えながら
話しかけている
ネコはその都度小さく返事をする
赤ん坊はもう誰にも通じる
自分のことばを持っている

 「ことば」は意味ではない。伝えたいという意志である。伝えたいものがないときは、どんなにことばをついやしても通じない。伝えたいものがあるときは、そのことばが不完全であっても通じる。
 赤ん坊の「ことば」は意志であふれている。
 だからネコにも通じる。ネコもそれにこたえる。そして、赤ん坊とネコが会話しているということが他人にも伝わる。

 街で見かけた風景。その存在のなかへ高橋自身が自分のことばで入っていく。そのとき、逆に、高橋のことばを通して街の風景が立ち上がってくる。
 この相互の「交通」のなかに「詩」がある。
コメント
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