監督 ポール・グリーングラス 出演 マット・デイモン、トミー・リー・ジョーンズ、アリシア・ビカンダー、バンサン・カッセル
簡単に言うと、飽きてしまった。アップのショットの連続に。
「ボーン・アルティメイタム」では駅のシーン、新聞記者が殺されるまでが非常に緊迫感があって、あそこだけで★5個をつけてしまうなあ、私は。
でも、それが成功するのは、駅という場面が「日常的」だからである。知らない駅だけれど、どこの駅にも通じるものがある。列車の時間に合わせて人の行き来するさまざまな人の流れ、キオスクの場所、その他の通路。その「距離感」が「肉体」を刺戟してくる。だから、思う存分に「見えないシーン」を想像し、興奮する。「全景」がわからなくても、「全景」を観客は知っている。
ところがね。舞台が「外国の街」では「全景」がわからない。だから、どんなに緊迫感をあおられても「距離感」がつかめないので心底どきどきしない。
私はたまたまアテネに行ったことがあるので(あ、こういうことを書きたくて書いているのかも)、冒頭の国会議事堂前の広場のシーンは、それなりにどきどきはらはらした。あんな狭い広場で逃げられるのか、すぐに見つかるじゃないか、と思うからである。アップだと奥行きがわからないのだけれど、あの広場にはもともと奥行きなんてない。
でも、それ以外の街は、うーん、どれくらい逃げたのか、どれくらい「敵」が接近してきているのかがわからない。だから、緊張しない。あ、またアップの連続で緊張を高めようとしているという感じしか受けない。
それに「敵」から逃げるシーンが、毎回毎回人込みを利用するといいうのは退屈になってきたなあ。
さらに、それに輪をかけるのがコンピューター上の「経路」。そんな「地図」を見せられても「実感」なんてわかない。知らない街なので、その「経路」がほんとうかどうかもわからない。現実の都市なのに、架空の世界。まるでテレビゲーム。(あ、私はしたことがないのだけれど。)そんなものを映画で撮るなよ。撮るにしても、せめて「実写」、つまり空撮と組み合わせろよ、と言いたくなる。おまけみたいに、街の空撮は、その街の最初の方に、場所を明確にするために「観光写真」のように挿入されているけれどね。
だいたいモニターの画面なんて、金も人も動いていないじゃないか。人が動いてこそ、映画なのに。
それを補うために、猛烈なカーアクションがあるのだけれど、これはこれで興ざめだなあ。あんりに衝突を繰り返しながら、車って走れる? SWATの車はそれなりに頑丈につくられているのだろうけれど、マット・デイモンの乗った車は単なる高級車(?)じゃないのか。衝突したらエアバッグが作動するんじゃないのか。どうも、いいかげんだなあ。私は、こういう「非リアル」なご都合主義の映像は大嫌い。がんばって撮っているのはわかるが、おもしろくない。
これが、あの傑作「ユナイテッド93」をつくった監督とは思えない。結末がわかっているのに、もしかしたら全員助かるのではなんて期待させる映画なんて最初で最後。
昔はいい映画をつくっていたのになあ、といことを思い出させてくれる映画だね。
(天神東宝ソラリアスクリーン7、2016年10月09日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
簡単に言うと、飽きてしまった。アップのショットの連続に。
「ボーン・アルティメイタム」では駅のシーン、新聞記者が殺されるまでが非常に緊迫感があって、あそこだけで★5個をつけてしまうなあ、私は。
でも、それが成功するのは、駅という場面が「日常的」だからである。知らない駅だけれど、どこの駅にも通じるものがある。列車の時間に合わせて人の行き来するさまざまな人の流れ、キオスクの場所、その他の通路。その「距離感」が「肉体」を刺戟してくる。だから、思う存分に「見えないシーン」を想像し、興奮する。「全景」がわからなくても、「全景」を観客は知っている。
ところがね。舞台が「外国の街」では「全景」がわからない。だから、どんなに緊迫感をあおられても「距離感」がつかめないので心底どきどきしない。
私はたまたまアテネに行ったことがあるので(あ、こういうことを書きたくて書いているのかも)、冒頭の国会議事堂前の広場のシーンは、それなりにどきどきはらはらした。あんな狭い広場で逃げられるのか、すぐに見つかるじゃないか、と思うからである。アップだと奥行きがわからないのだけれど、あの広場にはもともと奥行きなんてない。
でも、それ以外の街は、うーん、どれくらい逃げたのか、どれくらい「敵」が接近してきているのかがわからない。だから、緊張しない。あ、またアップの連続で緊張を高めようとしているという感じしか受けない。
それに「敵」から逃げるシーンが、毎回毎回人込みを利用するといいうのは退屈になってきたなあ。
さらに、それに輪をかけるのがコンピューター上の「経路」。そんな「地図」を見せられても「実感」なんてわかない。知らない街なので、その「経路」がほんとうかどうかもわからない。現実の都市なのに、架空の世界。まるでテレビゲーム。(あ、私はしたことがないのだけれど。)そんなものを映画で撮るなよ。撮るにしても、せめて「実写」、つまり空撮と組み合わせろよ、と言いたくなる。おまけみたいに、街の空撮は、その街の最初の方に、場所を明確にするために「観光写真」のように挿入されているけれどね。
だいたいモニターの画面なんて、金も人も動いていないじゃないか。人が動いてこそ、映画なのに。
それを補うために、猛烈なカーアクションがあるのだけれど、これはこれで興ざめだなあ。あんりに衝突を繰り返しながら、車って走れる? SWATの車はそれなりに頑丈につくられているのだろうけれど、マット・デイモンの乗った車は単なる高級車(?)じゃないのか。衝突したらエアバッグが作動するんじゃないのか。どうも、いいかげんだなあ。私は、こういう「非リアル」なご都合主義の映像は大嫌い。がんばって撮っているのはわかるが、おもしろくない。
これが、あの傑作「ユナイテッド93」をつくった監督とは思えない。結末がわかっているのに、もしかしたら全員助かるのではなんて期待させる映画なんて最初で最後。
昔はいい映画をつくっていたのになあ、といことを思い出させてくれる映画だね。
(天神東宝ソラリアスクリーン7、2016年10月09日)
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