詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

米側が難色、の意味は?(情報の読み方)

2018-01-11 16:13:13 | 自民党憲法改正草案を読む
 2018年1月11日読売新聞(西部版・14版)の一面。

海自イージス 照準情報共有/北の波状攻撃に対応/政府 新システム運用へ

 という見出し。見出しだけでは、軍事作戦にうとい私には何のことかわからない。前文にはこう書いてある。

 政府は、北朝鮮が弾道ミサイルによる波状攻撃を仕掛けてきた際の対処能力を向上させるため、2019~20年度に配備する海上自衛隊の新型イージス艦2隻で、新たな迎撃システムを運用する方向で調整に入った。日本海で対処するイージス艦が迎撃ミサイルを撃ち尽くして弾切れになっても、別のイージス艦が日本海にいる艦のレーダー情報で照準を合わせ、迎撃可能となる。

イメージ図も掲載されている。防衛体制を強化するということらしい。
その記事で私が気になったのは、この「防衛強化」のシステムではなく、次の部分。

 防衛省は、将来的に海自と米海軍のイージス艦同士を新システムでつなぎ、照準情報を共有する案を検討している。しかし、海自艦の照準情報に基づき米艦が迎撃することには、米側が指揮権を日本に委ねる形ともなるため、難色を示す可能性がある。このため、政府は慎重に米側の意向を探る考えだ。

特に、後段が気になる。
「海自艦の照準情報に基づき米艦が迎撃することには、米側が指揮権を日本に委ねる形ともなるため、難色を示す可能性がある。」
これは当たり前だね。
 だから逆に読んでみる必要がある。

米イージス艦の照準情報に基づき自衛隊のイージス艦が迎撃することにすれば、米側に指揮権があることになる。自衛隊が米側の指揮下に入ることに対しては、米側は難色を示さないのではないか。アメリカべったりの安倍は、もちろん喜んで米側に指揮権をゆだねるだろう。日米の「軍事協力」に貢献できるからだ。

であるなら、米側が開発した新システムを、米が日本に売り込み、安倍が喜んでそれを買う、そうすることでアメリカの指揮権のもとにはいるということだろう。
記事には、こういうことも書いてある。

新システムは「遠隔交戦(エンゲージ・オン・リモート)」と称され、米国が開発した。高度な情報システムにより、ミサイル発射地点の近くにいるイージス艦のレーダー情報に基づいて別のイージス艦が照準を合わせ、迎撃ミサイルを発射する仕組みだ。米海軍イージス艦に順次導入される予定だ。

ほら。
米軍にも導入されていないものを、率先して導入するのは、自衛隊を米軍の指揮下に入りやすくするためのものだ。
 「自衛(国防)」のことなど安倍は考えていない。
北朝鮮がミサイル攻撃をしかけてくるなら、日本にある米軍基地。米軍基地が機能しなくなったとき、どうやって米軍を自衛隊が補完するか、そのことが研究されている。それをあたかも「自衛(国防)」の強化を装って宣伝している。
 安倍は、こういうことが非常に得意だ。

本当の情報は、「見出し」になっていないところにある。

『天皇の悲鳴』
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

憲法9条改正、これでいいのか 詩人が解明ー言葉の奥の危ない思想ー
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ポエムピース
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喜多昭夫『いとしい一日』

2018-01-11 01:01:48 | 詩集
喜多昭夫『いとしい一日』(Brand new day、2017年11月25日発行)

 喜多昭夫『いとしい一日』は歌集。歌集の感想を書くのはむずかしい。ことばの「意味」とか「テーマ(内容)」とかではなく、「音」が重要だからかもしれない。そして、この「音」というのが、自分が暮らしてきた「場」と強い関係がある。「耳」で聞いたことがあるかどうか。それが影響してくるようだ。

壁に投げ跳ね返りたる軟球をわれの知らない女体と思う

マイクテスト、マイクテスト といいながらマイクの故障に気づいてしまう

 この二首は、テーマも違えば歌の構造というのか、ことばのつかい方もまったく違う。けれど、何と言えばいいのか、私にはどちらも「聞いた」ことがある音だ。たぶん喜多が石川県の人間であり、私が富山で生まれ育ったということが関係するのだと思う。
 「壁に」の歌は、歌い始めの「音」は「あ」を含んでいる。これが「軟球を」の「を」経たあと「女体と思う」と「お」の音が増えて、静かに「う」で終わる。「お」は特に「と」に隠れている「お」が不思議。それが「お」もうと変化していくとき、あ、これは「北陸の音」だなあと感じてしまう。「暗さ」と「芯」がある。前半は「あ」が多いのに解放感につながらず、最後には閉じてしまう。これが「北陸の音」。
 「マイク」の歌では、「故障に気づいてしまう」の「に」がやはり北陸の音だなあと思う。ほかの地方のひとは、では、どういうことばをつかうのか。わからない。わからないけれど、何か、有無をいわせないものがある。自分で世界を閉ざしてしまう。
 困ったなあ、と思う。

変でない 変です 変でる 変ですと 火星人の変の活用形

 「変(でない)」と「変」をもってくるところも、新しいようで、閉塞感がある。開かれていかない。「マイクテスト」もそうだが、新しいくせに、ぶっ飛んでいない。妙におとなしい。
 「変ですと」の「と」は音の数を合わせるためのもの(リズムをととのえるためのもの)なのかもしれないが、うーんとうなってしまう。
 「変でる」ということばがあるのだから「変です」を繰り返さずに「変でれば」という具合にすることもできるし、「変です」をつかっても「変ですね」と上の句と下の句をたたききることもできるはずなのに、「と」でつなぐ、「論理」にしてしまうところに「北陸」の律儀さを感じてしまう。「論理」は「音」ではなく、むしろ「意味」なのかもしれないけれど、その「意味」を引っ張るときの「音」が気になる。

抱かれてからが勝負というような真利子の遠いまなざしだった

 この歌では「ような」が、開くためのことばではなく、閉じるための「音」だね。
 私もきっとこんな「音」でことばを動かしているんだろうなあと思ってしまう。

オバちゃんであることをまず確認しプレイボーイをそっと差し出す

 妙に「粘着力」がある。さらっとしていない。軽くなりきれない。
 ここがたぶん、いまはやりの短歌と喜多の短歌の違いだろうなあ。「北陸」の「音」なんだろうなあ。
 もちろんその「音」を捨てる必要はない。このままでいいのだと思うのだが、私にはちょっとつらい。「嫌い」ではないが、「好き」とは言いづらい。
 「誤読」しているかもしれないが、「わかる」感じが苦しい。
 「顔」に地域の特徴があるように、「音」にも地域の特徴がある。どこがどうとは言えないが、これは「聞き覚えのある音」と感じてしまうと、啄木の

故郷の訛り懐かし停車場の人ごみの中にそを聞きに行く

 とはまったく逆の気持ちに襲われる。ふるさとの「音」を聞いて、思わずそっと離れたい気持ちになる。「わかる」から「なつかしい」のではなく、「わかる」から少し面倒だなあという気持ちになる。

 感想になっていないなあ。

ティッシュ箱より抜きとりし雲なれば鼻先までふわわんとせり

 この歌は好きなんだけれど、この「好き」を言いなおそうとすると、めんどうなんだなあ。歌われている「こと」、あるいはその「イメージ(情景)」ではなく、「音」がからみついてくる。「抜きとりし」の「し」と、「ふわわんとせり」の「と」が「係り結び(?)」のように全体をしめつける。「ふわわん」が全然「ふわわん」としないのだ。大きさがないのだ。

 北陸以外のひとは、どう聞くかな、この喜多の音を。

逢いにゆく旅―建と修司
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目次

岡田ユアン『水天のうつろい』2 浦歌無子『夜ノ果ててのひらにのせ』6
石田瑞穂「Tha Long Way Home 」10 高見沢隆「あるリリシズム」16
時里二郎「母の骨を組む」22 福島直哉「森の駅」、矢沢宰「私はいつも思う」27
川口晴美「氷の夜」、杉本真維子「論争」33 小池昌代『野笑』37
小笠原鳥類「魚の歌」44 松尾真由美「まなざしと枠の交感」、朝吹亮二「空の鳥影」47
河津聖恵「月下美人(一)」53 ト・ジョンファン『満ち潮の時間』58
大倉元『噛む男』65 秋山基夫『文学史の人々』70
中原秀雪『モダニズムの遠景』76 高橋順子「あら」81
粕谷栄市「無名」、池井昌樹「謎」86 深町秋乃「であい」92
以倉紘平選詩集『駅に着くとサーラの木があった』97 徳弘康代『音をあたためる』107
荒川洋治「代表作」112  中村稔「三・一一を前に」117
新倉俊一「ウインターズ・テイル」122


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