語らない安倍(巧妙になる沈黙作戦)
自民党憲法改正草案を読む/番外162(情報の読み方)
2018年01月05日読売新聞(西部版・14版)1面の見出し。
本文には、こう書いてある。
これでは何のことか、さっぱりわからない。「憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し」とあるが、安倍は「改正案」を国民に示したか。「自衛隊を書き加える」「教育を無償化する」というようなことを言ってはいるが「明文化(成文化)」した形では一度も提示していない。これでは「議論」にならない。「議論」をするなら、「議論」の出発点である「ことば」を提示しないといけない。「議論」は「ことば」を中心におこなうものである。
2面には
という見出しで、こういう文章がある。
これを「憲法改正」と関係づけて読み直してみる。
安倍は年内の「改憲」を目指している。「防衛大綱」は「改憲」後のもの、「改憲」を反映させたものとなる。
「自衛隊」ということばは、国を「自衛する」という意味で受け止められている。「敵国」の攻撃にあったら防戦する。自衛する。その「自衛活動」の行動範囲は、私の感覚では「領空、領海、領土」である。特に実際に国民が暮らしている「領土」が「防衛(自衛)」のいちばんの対象であると思う。これが「従来の」考え方であると思う。
安倍は、それを乗り越えようとしている。「従来」を否定している。「従来」の考え方を否定するのが、「国民を守るために真に必要な防衛力強化」という部分である。読売新聞はそれを「敵基地攻撃能力の保有」と言い換えている。(説明しなおしている。)
当然、「改憲案」は「従来」のものとは違うということが想定できる。「自衛隊を憲法に加える」だけではなく、「敵国の基地を攻撃できる」という要素を盛り込んだものにしないと、「防衛大綱」は改憲された新憲法を逸脱することになる。
たとえば「自衛隊の活動範囲は領海、領空、領土内に限定される。その範囲を越えての武力の使用は侵略行為であり、これを侵してはらない」と憲法に明文化すると、「新防衛大綱」は「違憲」ということになる。だから、安倍が狙っている「改憲」では、そういうことばは絶対に「明文化」されない。
「新防衛大綱」(敵国の基地を攻撃できる)にそなえて、では、憲法をどう改正するのか。それを安倍は明確に言っていない。
いまここで、自衛隊が、攻撃されたら日本を守るというだけではなく、攻撃されるおそれを感じたら敵国の基地を攻撃できるように憲法で規定するという「案」を表明したら、きっと大騒ぎになる。それは侵略戦争とどう違うのか。第二次大戦のときのアジア諸国侵攻とどう違うのか。だから、言わないのだ。
こんな「詐欺」みたいな手口を許していいはずがない。
1面の記事のつづきにもどる。
「(各党が)具体的な案を持ち寄りながら議論が進んでいく中で」というが、肝心の安倍自身(自民党そのもの)が「具体的な案」を提示していない。
安倍が2017年5月に読売新聞で「改憲」を語り、それを受けて開かれ6月の「自民党憲法改正推進本部」では「たたき台」をまとめた。(「憲法 9条改正、これでいいのか」を参照してください。)ところが12月の推進本部での会合では「たたき台」が消えて、2案併記になった。
①9条1、2項を維持した上で自衛隊を憲法に明記する(安倍の提案)
②9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する(2012年の改正草案)
「議論」の「幅」が広がったというか、「拡散」されてしまった。どちらの案も問題があるが、それぞれ具体的に議論しないといけない。2案あっては、議論の時間が足りないだろう。
各党(野党)に「具体的な案」を要求するなら、まず安倍自身が「具体的な案」(成文化、明文化されたもの)を示さないといけない。野党に「成文化(具体的な案)」を要求し、「議論対象」を増やし、十分な議論をせずに「〇時間議論した」と逃げるつもりなのだ。
「成文化した案」は、国会で「議論」するだけではなく、各議員がそれぞれの支持者の前で説明し、質問を受け、討論するという時間も必要だろう。単に議員が一方的説明し、「国民の理解を得られた」というのではなく、必ず「賛成派」「反対派」の意見が同時にわかるるようにし、公開討論、公開質問という形で国民全体で議論をする必要がある。
西部版の1面には掲載されていなかったが、
という。
「幅広い合意形成」を言うなら、最低限、安倍案を「成文化」し、国民に提示しないといけない。それをしないのは「スケジュールありき」だからである。十分な議論をさせないように、案の提出を遅らせる。そのくせ「〇時間かけたから十分に審議した」というのである。
「共謀罪法」の強行採決をみれば、そのことがよくわかる。
野党議員にも、国民にも「議論させない」、「沈黙作戦」で安倍の「独裁」を強行に推し進める。
具体的なことばを語らないのは、国民からことばを奪い、「思想」を支配するためである。国民に考えさせないためである。「沈黙作戦」は巧妙な「洗脳作戦」でもある。洗脳されないために、私たちは、自分のことばで語り続けなければならない。
*
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自民党憲法改正草案を読む/番外162(情報の読み方)
2018年01月05日読売新聞(西部版・14版)1面の見出し。
首相「改憲論議深める」年頭改憲
本文には、こう書いてある。
安倍首相は4日、三重県伊勢市で年頭の記者会見を行い、憲法改正について「今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、国民的な議論を一層深めていく」と表明した。自民党総裁として改憲案を国会に提出し、議論を加速させることに意欲を示したものだ。
これでは何のことか、さっぱりわからない。「憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し」とあるが、安倍は「改正案」を国民に示したか。「自衛隊を書き加える」「教育を無償化する」というようなことを言ってはいるが「明文化(成文化)」した形では一度も提示していない。これでは「議論」にならない。「議論」をするなら、「議論」の出発点である「ことば」を提示しないといけない。「議論」は「ことば」を中心におこなうものである。
2面には
「対北」「働き方改革」重点
という見出しで、こういう文章がある。
ミサイル警戒に当たる自衛隊員へのねぎらいで記者会見を切り出した首相は、「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力強化に取り組む」と表明した。今年末には「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の見直しを目指しており、敵基地攻撃能力の保有の是非について議論を本格化させる意向を示唆したものとみられる。
これを「憲法改正」と関係づけて読み直してみる。
安倍は年内の「改憲」を目指している。「防衛大綱」は「改憲」後のもの、「改憲」を反映させたものとなる。
「自衛隊」ということばは、国を「自衛する」という意味で受け止められている。「敵国」の攻撃にあったら防戦する。自衛する。その「自衛活動」の行動範囲は、私の感覚では「領空、領海、領土」である。特に実際に国民が暮らしている「領土」が「防衛(自衛)」のいちばんの対象であると思う。これが「従来の」考え方であると思う。
安倍は、それを乗り越えようとしている。「従来」を否定している。「従来」の考え方を否定するのが、「国民を守るために真に必要な防衛力強化」という部分である。読売新聞はそれを「敵基地攻撃能力の保有」と言い換えている。(説明しなおしている。)
当然、「改憲案」は「従来」のものとは違うということが想定できる。「自衛隊を憲法に加える」だけではなく、「敵国の基地を攻撃できる」という要素を盛り込んだものにしないと、「防衛大綱」は改憲された新憲法を逸脱することになる。
たとえば「自衛隊の活動範囲は領海、領空、領土内に限定される。その範囲を越えての武力の使用は侵略行為であり、これを侵してはらない」と憲法に明文化すると、「新防衛大綱」は「違憲」ということになる。だから、安倍が狙っている「改憲」では、そういうことばは絶対に「明文化」されない。
「新防衛大綱」(敵国の基地を攻撃できる)にそなえて、では、憲法をどう改正するのか。それを安倍は明確に言っていない。
いまここで、自衛隊が、攻撃されたら日本を守るというだけではなく、攻撃されるおそれを感じたら敵国の基地を攻撃できるように憲法で規定するという「案」を表明したら、きっと大騒ぎになる。それは侵略戦争とどう違うのか。第二次大戦のときのアジア諸国侵攻とどう違うのか。だから、言わないのだ。
こんな「詐欺」みたいな手口を許していいはずがない。
1面の記事のつづきにもどる。
首相は、「時代の変化に応じ、国のかたち、あり方を議論するのは当然だ」とも強調した。現在、改憲に前向きな勢力は衆参両院で国会発議に必要な3分の2を超えているが、「(各党が)具体的な案を持ち寄りながら議論が進んでいく中で、国民的な理解も深まっていく」と述べた。
「(各党が)具体的な案を持ち寄りながら議論が進んでいく中で」というが、肝心の安倍自身(自民党そのもの)が「具体的な案」を提示していない。
安倍が2017年5月に読売新聞で「改憲」を語り、それを受けて開かれ6月の「自民党憲法改正推進本部」では「たたき台」をまとめた。(「憲法 9条改正、これでいいのか」を参照してください。)ところが12月の推進本部での会合では「たたき台」が消えて、2案併記になった。
①9条1、2項を維持した上で自衛隊を憲法に明記する(安倍の提案)
②9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する(2012年の改正草案)
「議論」の「幅」が広がったというか、「拡散」されてしまった。どちらの案も問題があるが、それぞれ具体的に議論しないといけない。2案あっては、議論の時間が足りないだろう。
各党(野党)に「具体的な案」を要求するなら、まず安倍自身が「具体的な案」(成文化、明文化されたもの)を示さないといけない。野党に「成文化(具体的な案)」を要求し、「議論対象」を増やし、十分な議論をせずに「〇時間議論した」と逃げるつもりなのだ。
「成文化した案」は、国会で「議論」するだけではなく、各議員がそれぞれの支持者の前で説明し、質問を受け、討論するという時間も必要だろう。単に議員が一方的説明し、「国民の理解を得られた」というのではなく、必ず「賛成派」「反対派」の意見が同時にわかるるようにし、公開討論、公開質問という形で国民全体で議論をする必要がある。
西部版の1面には掲載されていなかったが、
首相は、衆参両院の憲法審査会などでの論議を通じ、与野党の幅広い合意形成が進むことへの期待感も示したが、「スケジュールありきではない」とも語った。
という。
「幅広い合意形成」を言うなら、最低限、安倍案を「成文化」し、国民に提示しないといけない。それをしないのは「スケジュールありき」だからである。十分な議論をさせないように、案の提出を遅らせる。そのくせ「〇時間かけたから十分に審議した」というのである。
「共謀罪法」の強行採決をみれば、そのことがよくわかる。
野党議員にも、国民にも「議論させない」、「沈黙作戦」で安倍の「独裁」を強行に推し進める。
具体的なことばを語らないのは、国民からことばを奪い、「思想」を支配するためである。国民に考えさせないためである。「沈黙作戦」は巧妙な「洗脳作戦」でもある。洗脳されないために、私たちは、自分のことばで語り続けなければならない。
詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載 | |
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