詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(53)

2020-05-11 08:39:39 | 『嵯峨信之全詩集』を読む
「雑草詩篇 Ⅲ」から

* (頭脳から削ぎ落とされた辞書の屑)

すべての種類の虫がばらばらと落ちて
そこここに小さな炎が燃えあがる

 辞書の中に「登録」されている虫。ふつうは、辞書の中にしかいない。いわゆる「名もない虫」。それゆえに、それは、無視されて、いま辞書からもこぼれ落ちる。「頭脳から削ぎ落とされた」とは、そういう意味だろう。嵯峨が積極的に削ぎ落としたのではなく、無意識が削ぎ落とす。
 しかし、いったん「白紙」の上に落ちると、そういうことばがあったのだ、そういう虫がいるのだと明確になる。
 「名もない存在」はない。「名もない存在」が「名前」を主張する。その「炎」のようないのちの強さ。
 「虫」とはもちろん「ことば」の比喩である。








*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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