詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

人間の「事実」

2020-05-29 11:00:59 | 自民党憲法改正草案を読む
共同が「コロナ専門家会議、議事録作らず/歴史的事態検証の妨げに」という記事を配信している。

https://this.kiji.is/638685726224139361?fbclid=IwAR2FD02EclBL9lBkJ7Ro_9FoU8UMpoHxXmwECfP0Cdg7Z5jVyPbfgBHlHJk

議事の概要と資料は公表されているが、各出席者の詳細な発言は記されず、対策検証の妨げになる可能性がある。

記事スペースの関係で省略されているのだろうが、こういうい書き方では「対策検証の妨げになる」という「理由」が読者には伝わりにくいだろう。
「概要と資料」だけでは、なぜいけないのか。
「概要」には、そこに書かれている意見とは異なる意見(対立意見/反対意見)が省略されているからである。言い直すと「削除」されているからである。
「削除」された意見は、結果的に無効かもしれない。しかし、そうであっても、どういう意見が「無効」なのかということを明確に認識する必要がある。
さらに「削除」された意見が「正しい」方法であると、他の国の「コロナ対策結果」「議事録」と比較してわかるかもしれない。
その場合、なぜ、「正しい意見」が削除されたのか、「正しい意見」を排除するとき、どのような議論が行われたかが問われる。
それは「資料」のどの部分に注目しなければならなかったのかということをも問い直す。
「検証」とは、あったことを問い直し、その問い直しによって「事実」を確定することである。
安倍は日本を「成功例」と呼びたいのだと思うが、「成功例」なら「成功例」であるほど、具体的な「議事録」をも提示する必要があるだろう。
「概要」だけではなく、どのように科学的な議論をして、参加者がなっとくしたのか。
それを示すことが、対策に苦慮している諸外国に対するに「助言」になる。
安倍のやっていることが「失敗隠し」なのか。
それとも「成功隠し」なのか。
どちらにしろ、「隠す」ことの弊害が大きい。
「検証の妨げになる」とは、こういうことである。
こんなことは書かなくてもわかる、とこの記事を書いた記者はいうだろう。
しかし、「わかりきったこと」を繰り返し書くことも大事なのだ。
いまの日本のように、平気でうそをつく安倍が政権をにぎっているときは、一度指摘したからおしまいというのではなく、なんどでもなんとでも「わかりきったこと」を書かなければならない。
安倍はうそつきだと「納得」してしまってはいけない。
毎日、「安倍はうそつきだ」と言い続けることが、いま、マスコミに求められていることかもしれない。
そのうそのなかには、この「議事録なし」という事実のように、「証拠を残さない(言わない)」ということも含まれている。
すべてを克明に語らない人間は「うそつき」なのだ。
だから、「対策検証の妨げになる可能性がある」と書いてすませる記者もまた、安倍に加担する「うそつき」のひとりである。

さらに。
出席した「専門家」は、「議事録なし」ということに納得しているのか、それを知りたい。
記者は、それを聞き出してほしい。
それだけで、この専門家会議の「性質」がどういうものかわかるはずだ。
「議事録がなかった」という「事実」だけではなく、その「事実」の背後にある「人間の事実」を書いてほしい。
安倍以外の「専門家の、人間としての事実」を書いてほしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(60)

2020-05-29 10:54:56 | 『嵯峨信之全詩集』を読む
* (あなたの手のなかにある話を)

もし何も話がなければ
硝子戸ごしに見える一本の老樹についてお話しなさい

 「なければ」、話をつくりなさい。そこにある「事実(一本の老樹)」がことばを支えてくれる。ことばはいつでも「事実」に支えられている。
 ここで嵯峨が「若い樹木」ではなく「老樹」を選んでいるのは、老いたもののなかには語るべき「事実」がいくつもあるということだろう。
 そしてそれを語るときの嵯峨は、きっと「若い」。若さが老いのなかに見つめる「事実」には、若者には知らないこと(体験していないこと)もある。「知らない」のに、そこにあることを「事実」と判断する力のようなものが、そのとき動く。この「動く」という不思議な現象のなかに、詩がある。だから、それに自分のすべてを任せてみるといい。そう言っているのだろう。
 「なければ」のなかの「ない」。そこに、この詩の「原点」のようなものがある。





*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
定価の下の「注文して製本する」のボタンを押すと購入の手続きが始まります。
私あてにメール(yachisyuso@gmail.com)でも受け付けています。(その場合は多少時間がかかります)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする