詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

将来の政権?

2020-05-18 09:11:34 | 自民党憲法改正草案を読む
将来の政権?
       自民党憲法改正草案を読む/番外355(情報の読み方)

 2020年05月18日の読売新聞(西部版・14版)の1面。

検察庁法案 見送り検討/今国会 世論反発に配慮/政府・与党 近く最終判断

 という見出し。
 この見出しで注目すべきなのは「今国会」ということばである。今国会は見送る、ということを検討する。
 これと関係するのだが、このニュースにつづいて、

検察の独立 守れるか 東京本社社会部長 恒次徹

 という署名記事が載っている。「法改正」の問題なのに、なぜ、社会部長? 「見送り検討」というニュースをつかんできたのが社会部の記者だから? 「世論」に詳しいから? いろいろ疑問に思うのだが、90行近い記事に書いてあることは、見出しどおりのこと。すでに語り尽くされてきたこと、わざわざ社会部長が書くようなことなのか、と思ったら。
 こんな部分がある。

 (法改正によって)政権と検察の適切な距離感やバランスを崩す可能性がある。将来の政権が、検察を人事を通じて操ろうという誘惑に駆られないだろうか。不安はつきない。

 ここは「違う」だろう。
 いま「検察庁法案改正」が世論の反発を浴びているのは、「将来の政権」が人事を通じて検察を操るということが起きるかもしれないという不安からではない。いまの政権(安倍)が人事を通じて検察を操ろうとしている、と感じられるからだ。
 安倍が問題なのだ。
 安倍はすでに、黒川の定年を延長するということをやっている。これも「人事」である。安倍は、黒川を通じて検察を操ろうとしている。多くの人がそれを感じている。
 繰り返すが、安倍が問題なのだ。
 この「安倍の問題」を「将来の政権」の問題であるかのように書いているところに、「忖度」そのものを私は感じてしまう。
 そして、この「将来の政権」ということばをキーワードにして、本記を読んでいくと、次のことばの「意味」が鮮明になる。

 改正法案は施行日を2022年4月1日と定めており、「秋の臨時国会でも間に合う」(政府関係者)との見方もある。

 「間に合う」というのは、何に間に合うのか。これを具体的に考えてみる必要がある。黒川が検事総長になる。黒川はいま63歳。2022年は65歳である。ふつうなら、黒川の検事総長に3年延長を適用できない。
 「間に合わない」。
 しかし、法案には「必要な施行期日を定めるものとすること」というただし書きがある。(このことを、読売新聞は書いていないが、「間に合う」という「ことば」のなかに、それが隠れている。)つまり、68歳まで検事総長をやらせるのに「間に合う」というのだ。
 なぜ、黒川に、そんなにこだわる?
 ここでもう一つ「間に合う」かどうかの問題がある。
 安倍の「総裁任期」は2021年9月である。ふつうに考えれば2022年は「安倍政権」ではなく「将来の政権」であるはずだ。しかし、安倍が「新しい解釈」によって「4選出馬」し、2021年以降も首相を務めたら? 2022年は「安倍政権下」である。
 ほら、「現実」が見えてきた。
 安倍は今後も政権に居すわり、「独裁」を強める。そのための方法として「黒川検事総長」を誕生させ、さらに今後8年にわたり「安倍-黒川」体制で、政権を維持するつもりなのだ。2022年どころの騒ぎではないのだ。2025年までを視野に入れているのだ。「安倍5選」が視野に入っているのだ。
 こういうことを「隠蔽する」ために、社会部長の「論文(?)」が書かれている。そこには、「現政権」ではなく「将来の政権」ということばが書かれている。「将来の政権」ということばをつかうことで、安倍の印象を消し、安倍の狙いを隠そうとしている。

 あるいは、「良心的」に読めば、「将来の政権」とか「間に合う」ということばを書くことで、いま起きていることの「背後」にあるものを、読者に気づかせようとしているのかもしれない。
 「安倍寄り」といわれる読売新聞の、記事の細部には、こういう情報が非常に多い。見出しだけ読んでいてもわからないが、一つの記事を別の記事と関係づけて、ことばが指し示している「実態」を探るように読むと、いろいろなことがわかる。

 補足しておくと、たとえば2月21日の記事には、黒川がらみで、こんなことが書いてある。

 次期検事総長の人選は、昨年末から官邸と法務省との間で水面下で進められた。同省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示したという。(略)
 検事総長の在任期間は2年前後が多く、2018年7月に就任した現在の稲田伸夫検事総長(63)は今夏に「満期」を迎える。黒川氏は2月に定年退官し、7月に63歳となる林真琴・名古屋高検検事長(62)が後任に起用されるとの見方もあったが、政府の措置で黒川氏は検事総長への道が開けた。

 黒川が「検事総長」になる道を開いたのは「政府の措置」だと明確に書いてある。その「黒川検事総長」を黒川が68歳になるまで(今後5年)つとめさせる。その間、安倍が首相として居すわる、というのが「検察庁法案」の狙いなのである。
 その法案成立を「今国会」は見送る。しかし、秋の臨時国会には提出する。世論の反発がおさまるまで、いったん静かにするということなのだ。狙いは、ぜんぜん変わっていない。








#検察庁法改正に反対 #安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


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