詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高柳誠『フランチェスカのスカート』(5)

2021-06-09 09:02:08 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(5)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「星降る丘」は丘を描いているというよりも星空を描いている。

                      星空は、びっしりと書
  き込まれた一冊の巨大な書物だ。

 だから、ひとは「星空を読む力をいつも試されている。」
 だが、読むとは、どういうことか。

       文字が知識を伝えうるのと同じように、星空はそれ自体
  おびただしい量の叡智を表出している。この丘には、星読む人にな
  りたいがために、自らの存在自体をすっかり忘れ果てて、星空の書
  物にいつまでも見惚けている人々が、あちこちの暗闇に音もなく潜
  んでいる。

 キーワードは「自らの存在自体をすっかり忘れ果て」るである。これを「見惚ける」と言いなおしている。ただ「惚ける」のではなく「見」惚ける。「見る」という動詞になる。そして、自己存在を「忘れる」。それが「読む」ということ。
 そのとき何が残るのか。
 「書物」が意味を喪失して、残る。「意味」あってはいけない。
 意味のない書物としての詩。そう考えるとき、私は再び那珂太郎、時里二郎、阿部日奈子を思い出すのである。書物には(詩には)意味は存在せず、ただことばの自在な運動がある。それは星のように、人間の叡智を超えて動いている。かれらは、それを「読んだまま」「書く」。

 

 

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特ダネ記事の読み方

2021-06-09 08:05:02 | 自民党憲法改正草案を読む
読売新聞(ウェブ版)に、きょうも「独自(特ダネ)」記事。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210608-OYT1T50283/
【独自】G7、東京五輪の開催支持へ…首脳宣言に明記で調整(見出し)
先進7か国(G7)が英南西部コーンウォールで11日から13日の日程で開く主要国首脳会議(サミット)の首脳宣言に東京五輪・パラリンピック開催への支持を明記する方向で調整していることがわかった。菅首相は五輪開催の前提として新型コロナウイルス対策に万全を期す考えを表明する方針だ。
↑↑↑↑
 この記事のポイントは「菅首相は五輪開催の前提として新型コロナウイルス対策に万全を期す考えを表明する方針だ」。この部分には、主語(菅)があり、述語(表明する)があり、目的語(考え=五輪開催の前提として新型コロナウイルス対策に万全を期す)がある。ようするに、菅がサミットで、オリンピック開催に向けて安全対策をすると言うというだけ。
 つまり、コロナ対策は万全の態勢が整った(日本の感染者はゼロにおさえられている、ワクチンも国民全員がサッシュしている)とは言えない。あくまで「万全を期す」としか言えない。
 これを受けて、読売新聞は「首脳宣言に東京五輪・パラリンピック開催への支持を明記する方向で調整していることがわかった」とつづけるのだが。
 誰が、調整してるのか。各国の事務方が文章を練っている? まさか。日本(菅周辺)が、一生懸命頼み込んでいる、というところまでも達していないかもしれない。頼み込むための文言を考えているということだろう。言いなおせば、菅は「支持をとりつけたい」と画策している。
 しかも。
 その支持は、あくまで「万全の対策を期す考え」に対する支持である。そりゃ、どこの国だって、「万全を期します」と言っている人に対して、その考え(万全を期す)に対して「反対」とは言わないなあ。バイデンも言わなかった。あくまで「万全を期す」ことを支持しただけだ。
 こういうことろに、「外交」のトリックがある。
 それを、まるでサミット三か国が東京五輪開催を支持する(支持した)かのように、見出しにしてしまうのは、世論誘導というものだろう。ニュースではなく、作文で、世論を誘導しようとしている。(紙面では、西部版は一面のトップだった。)
 それは、主なテーマとして掲げている一覧表からもわかる。
 「東京五輪開催」は主なテーマとして討論されない。討論されると決まっているなら、一覧表にあるべきだ。(見出しにしているくらいなのだから)
 日本がテーマにしてほしいと「頼んだ」にもかかわらず、主なテーマから外された。だからこそ、必死になって、サミットで菅は五輪対策を訴えるとアピールしているのである。
 新聞には「ニュース」と一緒に「作文」が書かれている。どこが「作文」かを見極めないと、「事実」が見えなくなる。「特ダネ作文」からわかることは、菅の側近のだれかが、読売新聞に「菅はサミットで五輪開催について発言する」とリークした、ということである。その「リーク」の返礼として、読売新聞はそのことを一面トップに仕立て上げている、ということである。
 もう一つ。
 コロナワクチンについて、職場接種(企業接種)の受付開始が始まったというニュースがある。企業が積極的に接種を進めるというのはいいことだけれど、私は疑問に思っていることもある。
 企業が接種をすすめる従業員(あるいは、その家族を含む)のなかに、非正規雇用者が含まれているのか。きっと正規雇用者が優先されるのだろう。
 そのことは、職場接種が大企業中心に進められていることからもわかる。
 中小企業は含まれない。当然、非正規雇用労働者は含まれない。
 ここにも「格差」問題がある。
 大企業さえ安心・安全なら、それでいいのだ、という考えが露骨に見える。
 だいたい65歳以上の接種を7月末までで終わらせると言っていたが、その「7月末」が期限の予約に申し込んだら、一回目の接種が8月以降というひとが何人もいる。2回目の接種は10月というひともいる。
 65歳以上の接種予約はすんだ。だから、そのひとが何月に接種しようが関係ない。次は、65歳以下の予約を促進する。大企業の社員の接種率をあげれば、国全体の接種率もあがる。65歳以上の高齢者の接種がいつになるかは知ったことではない。予約は「本人」がしたことであって、10月を選んだひとが悪い。きちんとあいている日を探さないのが悪いのだ、ということになるのだろう。
 菅には、困っている人を救おうという気持ちが全然ない。
 菅は安倍と同じく、自分を応援してくれそうな人を優先的に救うだけなのである。
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