詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

数字をどう読むか。

2021-06-13 14:47:15 | 自民党憲法改正草案を読む
もう一本、読売新聞の記事から。
国内で新たに1944人感染、東京は30日ぶりに前週上回る(見出し)
国内の新型コロナウイルス感染者は12日、43都道府県と空港検疫で新たに1944人が確認された。東京都では30日ぶりに前週の同じ曜日を上回った。全国の死者は55人、重症者は890人だった。
 都内の新規感染者は467人で、1週間前から31人増えた。直近1週間の平均新規感染者数は390・9人で、前週(440・3人)の88・8%となった。都の担当者は「人出が増加し、減少傾向が弱まっている」としている。
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一週間前と比較して31人増えたをどう見るか。
記事には書いていないが、前日比では32人増えている。
感染者の増減の動きの想定内のことなのか。
私は何でも「疑い」の目で見てしまう。
とくに数では、疑って見てしまう。
数字は客観的に見えるが、また操作することも可能である。つまり恣意的であるときもある。
もしかして、東京の感染者が「増えた」のは(「減る」のをやめた?のは)サミットと関係があるのではないか。
つまり、サミットを控えて、東京都は検査数を絞り込むことで感染者数を「おさえて」きたのではないのか。
サミットで東京五輪開催を訴える菅を支援するために、感染者を「少なく」してきたのではないか。
きょう以降の「感染者数」の動きに注目したい。
それにしても。
ワクチンの接種が進んでも、コロナの感染が「減る」わけではない。「増加幅」は小さくなっているかもしれないが、増えているのは事実である。
私は個人的な関係で、スペインの感染者の動きに注目しているが、一時期、スペインの感染者の総数はドイツを下回った。あのドイツがスペインの感染者数を上回ったときがあった。しかし、12、13日と、ふたたびスペインの感染者総数がドイツを上回っている。
各国で感染者は増え続けている。
アジアの「感染防止対策優等生」だった台湾、ベトナムでも感染者が1万人を突破した。
もしかしたら「新しい変種」が登場しているのかもしれない。
こんなときに、よく「安全安心の東京オリンピック」と言えるなあ。
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高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)

2021-06-13 10:43:12 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「記憶の轍」は

  記憶にだけ通行可能の道がある。

 と魅力的なことばで始まる。つづいて、記憶が説明される。

                 記憶はそれ自体で、現実とは異な
  る独自の論理や体系をもっているので、町なかを勝手にうろつかれ
  て人々とやたらに接触するようなことだけは、なんとしても避けな
  ければならない。生硬なままの記憶の切っ先が、人々の日常に次々
  と外傷を生じさせて、生活を瀕死状態にしてしまうからだ。

 記憶と現実と日常。その共存(?)を可能にするために、町には記憶専用の回路がはりめぐらされている。その回路は、

    常に改訂され拡張され続けることを宿命づけられた、記憶その
  ものの秘すべき分類図、系統図だ。そこを伏流水のように純粋記憶
  が行き来する。

 いろいろなことばを通って、高柳は「純粋」ということばをひっぱりだしている。この「純粋」が高柳の求めているすべてである。
 「純粋」は「記憶」と同様、誰もがつかうことばである。だが、どう定義すればいいのか。高柳の定義は、こうである。

          長い年月をかけて個人の刻印を残らずふるい落と
  し、すでにだれのものでもない普遍的な記憶の実体そのものとなっ
  てこそ、この通路を往還できる。

 「純粋」は「普遍的」、つまり「個人の刻印(個別性)」を排除したもの。つまり、抽象である。あるいは、記号である。
 高柳のことばは、ことばの運動というよりも、どこか「記号の運動」という要素があるが、それは運動の「純粋さ」を明確にするための手段である。
 最初に「道」ということばがでてきた。しかし、それは「存在」ではなく、むしろ「運動」をうかびあがらせる装置としての「場」である。「道」が純粋なのではなく、「道」を行き来する記憶の「運動」が純粋なのである。
 この「記憶」を「ことば」と置き直せば、高橋の詩の夢が浮かびあがる。「純粋ことば」が行き来する(純粋に運動する)世界。ことばが自立して、ことば自体のエネルギーで動くとき、そこに出現するのが、詩の世界だ。

 


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「G7、東京五輪の開催支持へ…首脳宣言に明記で調整」はどうなったか。

2021-06-13 09:27:45 | 自民党憲法改正草案を読む
6月9日、読売新聞は、こう報じていた。
G7、東京五輪の開催支持へ…首脳宣言に明記で調整(見出し)
これは、その後、どうなったか。
まだG7は終了していないから、「首脳宣言」がどうなるかわからないが、きょうの新聞にはこう書いてある。(14版、西部版)
 
首相、五輪選手団派遣を要請(見出し)
 
で、その記事のなかに、こう書いてある。
 
 首相は、「安全安心な退会の開催に向けて、万全な感染対策を講じて準備を進める」と強調。その上で「世界のトップ選手が催行の競技を繰り広げることを期待している。強力な選手団を派遣してほしい」と呼びかけた。
 日本政府によると、首脳の一人は「全員の賛意を代表して東京退会の成功を確信している」と野辺、支持する意向を示した。
 サミットはイギリスで開かれ、議長はジョンソンなのだから、こういうときの「代表発言」はジョンソンなのだろうけれど、名前が伏せられている。
 
 とても変な記事である。
 だいたい、菅がサミットに出かけたのは「東京五輪開催支持」を得るためだったのに、こんなあいまいな記事では、意味がないだろう。
 これはサミットの別の記事と比較すればすぐわかる。
 一面には、こういうくだりもある。
 
 菅首相は拉致問題について、「全面的な理解と協力」を要請し、各国から賛同を得た。
 
 拉致問題では、「各国から賛同を得た」。しかし、五輪開催については、首脳の一人が、「支持する意向を示した」。
 支持したではない。
 この微妙な違いこそが「外交」である。
 ことばが問題なのだ。
 
 これでは「まずい」と思ったのか、必死になってフォローしている。07:44更新のウェブ版には、こう書いてある。
菅首相の五輪開催決意にバイデン氏「首相を支持する」…4月以来の会談(見出し)
 【コーンウォール(英南西部)=藤原健作】菅首相は12日、先進7か国首脳会議(G7サミット)の会場でバイデン米大統領と断続的に計約10分間、会談した。菅首相が今夏の東京五輪・パラリンピックの開催に向けた決意を改めて述べたのに対し、バイデン氏は「首相を支持する」と明言した。
 
 「首相を支持する」と明言した、とは微妙な書き方である。4月の会談では、たしか「開催に向けて努力するという菅の姿勢を支持した」という意味だったと記憶している。今回も「首相を支持する」であって、「東京退会開催を支持する」ではない。似ているが、違う。バイデンは東京大会に強力な大選手団を派遣するとは明言していない。明言しているなら、新聞はそう書くだろう。明言しているのに、そう書かないとしたら、読売新聞の菅応援の仕方は間違っている。いまこそ、バイデンは「大選手団を派遣すると明言した」と書くべきときである。それができない。
 ここに「外交」(ことばの問題)が隠れている。
 だいたい4月の会談でいったことを、ひっくり返せば問題である。だから、単純に4月にいったことをバイデンは繰り返しているだけなのである。何も進展していない。
 それを指摘しないのはジャーナリズムとして問題がある。
 サミットの首脳宣言がどうなるか、まだわからないが、「東京五輪の開催支持へ…首脳宣言に明記で調整」という見出しは、あくまで「調整する」という意味であって「開催支持」ではない、と言い逃れるつもりかもしれないが、こんな「世論誘導型」の表現はやめるべきだろう。世論を誘導し、菅を支持するのではなく、現実を報道し、菅につきつけるべきだろう。
 時系列が前後するが、11日の朝刊(西部版・14版)には
五輪規則違反 厳格処分/感染対策 制裁金や大会除外/選手や関係者 IOC指針明記へ(見出し)
 とある。選手や関係者(取材記者を含む?)が、繁華街や観光地に出かけたら処分するというのだけれど、これはすでに、東京大会は「安全安心」ではない、と言っているに等しい。「安全安心」であるためには選手、関係者の行動制限が不可欠であると言っているに等しい。
 だいたい、選手、関係者の行動を制限することが「誰にとって」安心、安全なのか。
 選手にとって? 日本国民にとって? 「制裁金」をとるというくらいだから、自業自得(?)の選手、関係者の「安全安心」ではなく、日本国民の「安心安全」だろうなあ。
 そうすると、「おもてなし」をするはずの日本国民が、いわば「交流をしない」という外国選手、関係者からの「新しいスタイルのおもてなし」を受けるということになる。
 選手はともかく(大会に出ないといけないから)、取材記者がこんな「条件(指針?)」を守るかねえ。
 記者というのは、何がなんでも「独自のニュース」を手に入れようと動き回るもの。人の書いていないことを書こうとするもの。
 読売新聞の記者は、菅周辺からリークされたことを記事にして「特ダネ」と喜んでいるけれど、それは独自取材で手に入れた情報ではない。外国の記者が、読売新聞の記者と同じことをして満足するとは思えないなあ。
 読めば読むほど、ばかばかしさが募る。
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