ほんとうは、別のこと(物価高)について書きたかったのだが、そのことについて書くために岸田の所信表明演説を読んで、びっくりした。読売新聞(2022年10月04日、14版、西部版、3面)によると、
↓↓↓
首相は就任後、3回行った国会演説では、過去の例に倣い、勝海舟やジョン・F・ケネディ元米大統領らの言葉を引用した。政府関係者によると、今回も先人の言葉を引いて「国難」を乗り越える思いを示す案が浮上していたが、「ただ愚直に仕事に打ち込む姿勢を打ち出した方が危機感が伝わる」との判断から最終的に外したという。
↑↑↑
ということで、とても短くなっている。短くなったのはいいのだが、これはねえ、単に岸田のゴーストライターが「手抜き」をした、ゴーストライターさえも岸田から離れ始めているということじゃないのかなあ。だれかのことばを引用するには、そのことばを読んでいる必要があるが、岸田がほんとうに先人のことばを読んでいるとは思えない。「聞く力」というが、岸田はもともと「聞く力」などもっていない。他人のことばの「読み方」を知らない。
それは、所信表明演説を読むだけでわかる。この所信表明演説もだれかが書いたものだが、それを読んで「このままではわからない」(順序を変えないといけない)という判断もできずに、岸田はそのまま読んでいる。
そのことを指摘しておく。読売新聞の「章立て」にしたがって紹介すると、①はじめに②政治姿勢③経済政策④新型コロナ、という具合につづいていく。私が注目しようとした経済政策(物価対策)は、①物価高・円安対応②構造的な賃上げ③成長のための投資と改革と三つにわけて対策が発表されている。この③の部分に、岸田の「理解力のなさ」があらわれている。
ここから、突然「カタカナ」が増える。まず、こう書いている。
↓↓↓
社会課題を成長のエンジンへと転換し、持続的な成長を実現させる。この考えの下、科学技術・イノベーション(技術革新)、スタートアップ(新興企業)、GX、DXの4分野に重点を置いて、官民の投資を加速させます。
↑↑↑
「カタカナ」が増えるのは、官僚の作文の特徴だが、「イノベーション」「スタートアップ」には「技術革新」「新興企業」と、日本語(?)で言い直されている。なんとなく、わかる。でも「GX」「DX」って、何? よほど経済政策に関するニュースを読んでいないとわからないだろう。「イノベーション」「スタートアップ」はなんとなく英語からも見当がつくが、「GX」「DX」って、なんなのさ。「カタカナ」でさえない。
その説明は、あとに出てくる。
↓↓↓
第三に、グリーントランスフォーメーション、GXへの投資です。
年末に向け、経済・社会・産業の大変革である、GX推進のためのロードマップの検討を加速します。
↑↑↑
最低限「GX=グリーントランスフォーメーション」であることは、最初に「GX」ということばを発したときに言っておかないと、なんと言ったかさえわからないひとがいるかもしれない。で、そのグリーントランスフォーメーションって、なんなのさ。
↓↓↓
その中で、成長志向型カーボンプライシング、規制制度一体型の大胆な資金支援、トランジション・ファイナンス、アジア・ゼロエミッション共同体。これまで申し上げてきた政策イニシアチブを具体化していきます。
同時に、GXの前提となる、エネルギー安定供給の確保については、ロシアの暴挙が引き起こしたエネルギー危機を踏まえ、原子力発電の問題に正面から取り組みます。
↑↑↑
「カタカナ」だらけで、これまた、わからない。でも、きっと、だれにでも「エネルギー危機を踏まえ、原子力発電の問題に正面から取り組みます」はわかるな。原発を増やす、と言っている。原発を増やさなければならないということを言うために、カタカナでごまかしている。これが官僚の政策なのだが、エネルギー源に原発を活用すると言わずに、変なことばで、演説を聞いているひとをたぶらかしている。
「そのことば、わかりません。説明してください」「わからないのは、おまえが勉強していないからだ。何も知らない人間は、だまって、知識のある人間(カタカナことばをつかえる人間)の言うことを聞け」
これが官僚の「口癖」のようなものだが、岸田も「聞く力」を発揮して、それをそのまま受け入れ、「書かれた文章」をそのまま読んで、知ったかぶりをしている。
岸田自身が自分で文章を書いたなら、少なくとも「GX=グリーントランスフォーメーション」は最初に言う。何のことかわからないから、「質問」もできず、そのまま読んでいるのだ。
「DX」は、こうである。
↓↓↓
第四に、デジタルトランスフォーメーション、DXへの投資です。
↑↑↑
そうか、Dはデジタルの略だったのか。それならそうで、これもやはり最初に言うべきだろう。いまどき「デジタル」ということばを知らない人間はたぶんいない。最初に「デジタル」ということばを出すだけで、演説を聞いていて、内容が推測できる。そういう「効果」を岸田は知らない。
でも、つづきを読む(聞く)と、どうか。(途中にマイナンバーカード活用のくだりがある。原発とおなじように、じつは、これが目的か。)
↓↓↓
また、メタバース、NFT(非代替性トークン)を活用したWeb3・0(ウェブスリー)サービスの利用拡大に向けた取り組みを進めます。
↑↑↑
これは、いったいなんなのか。何の説明もないまま、
↓↓↓
産業のコメと言われ、大きな経済効果、雇用創出が見込まれ、経済安全保障の要でもある半導体は、今後特に力を入れていく分野です。
↑↑↑
と、突然、だれもがわかるようなことばで視点をずらす。
ということは、と私は、再び読み返し、考える。
↓↓↓
また、メタバース、NFT(非代替性トークン)を活用したWeb3・0(ウェブスリー)サービスの利用拡大に向けた取り組みを進めます。
↑↑↑
ここには多くの人が疑問をもっている「マイナンバー」以上に危険なことが隠されている。それを知られたくないから、教えない。「えっ、そんなことも知らないの? 遅れてるなあ。わからなかったら、知っているひとの言う通りにすればいいんだよ」がここに隠されている。
これから問題になる「デジタル化」の問題は「メタバース、NFT(非代替性トークン)を活用したWeb3・0(ウェブスリー)サービス」と、私は、私の文書を読んでいる人に「警告」しておく。私はこういうことばに疎いから、実際にどういうことがこれから起きるか想像できないが、とても危険なことが「メタバース、NFT(非代替性トークン)を活用したWeb3・0(ウェブスリー)サービス」としておこなわれる。それは「マイナンバーカード」どころの騒ぎではない。
この問題は、岸田自身も理解していない。理解していて、それでなおかつ隠している、隠蔽している、とは思えない。岸田は、何度でも書くが、とても口の軽い男である。(私は口が軽いので有名だが、たぶん、私の比ではない。私から見てさえ、岸田は口が軽い、のだから。)
で、その「口の軽さ」は、この所信表明演説にもあらわれている。つまり、わかりもしない「GX」「DX」を、そのまま知ったかぶりをして最初に言って、あとからカタカナで言い直しているところにね。少し慎重なら、「GX=グリーントランスフォーメーション」「DX=デジタルトランスフォーメーション」と言っておこう、と思うはずである。
で、ついでに書いておくと、この所信表明演説を書いたのは「ひとり」ではない。複数の人間が手分けして書いた。問題の部分も「前文」
↓↓↓
社会課題を成長のエンジンへと転換し、持続的な成長を実現させる。この考えの下、科学技術・イノベーション(技術革新)、スタートアップ(新興企業)、GX、DXの4分野に重点を置いて、官民の投資を加速させます。
↑↑↑
はだれか「経済対策」のリーダーが書き、「イノベーション」「スタートアップ」「GX」「DX」は別人に割り振ったのだ。だから、前後の統一性がなくなっているのだ。具体的に「GX」「DX」の部分を担当した人は「前文」を書いたひとの部下。だから、上司に対して「GX」「DX」の説明は、最初に言った方がいいのではないでしょうか、と提言もできない。そういうことも、この所信表明演説からは見えてくる。
思想というか、考えていることは、単につかうことばだけではなく、そのことばのつかう順序(文脈構成)からもわかるものである。岸田がどういう人間であるか(彼の思想がいかに他人任せの借り物であるか)がよくわかる「所信表明演説」である。
こんなことは国会では審議されない。だからこそ、書いておく。こういうことは、書かれている「内容(テーマ、意味)」以上に重要である。なんといっても「思想」の根本にかかわるからである。