詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy Loco por España(番外篇279)Obra, Joaquín Llorens

2023-01-20 21:49:43 | estoy loco por espana

Obra, Joaquín Llorens

 Puede que la escultura no consista en mirar el color. Sin embargo, al contemplar estas tres obras de Joaquín, me da cuenta de que el color también es una obra de arte. El azul cobalto une las tres piezas. Son obras distintas, pero están conectadas. Me parecen tres expresiones diferentes de una misma obra.
 Lo que todas tienen en común, además del color, es que están formadas por superficies curvas. Y estas superficies curvas albergan sombras y luz en sus colores. La luz y la sombra cambiarán en función del ángulo de visión. La propia forma también debe cambiar en función de los cambios que se produzcan en ese momento.
 Si estas tres obras se filmaran como una película desde varios ángulos con una sola pieza musical, la danza se desarrollaría como el primer, segundo y tercer movimientos.

 彫刻は、色を見るものではないかもしれない。しかし、このJoaquín の三点を見ていると、色も作品なのだと気がつく。コバルトブルーが三つの作品を結びつけている。それは別々の作品なのだが、通じ合っている。ひとつの作品がみせる三つの表情に見えてくる。
 共通しているのは、色の他に、それぞれが曲面でできているということ。そして、その曲面が色に影と光を抱えている。光と影は見る角度によってかわるだろう。そのとき起きる変化に合わせて、形そのものも変わっていくに違いない。
 ひとつの曲に合わせて、この三つの作品を様々な角度から撮影すれば、それは第一楽章、第二楽章、第三楽章というふうに展開していくだろう。

 

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「現代詩手帖」12月号(42)

2023-01-20 00:00:00 | 現代詩手帖12月号を読む

「現代詩手帖」12月号(42)(思潮社、2022年12月1日発行)

 藤原安紀子「拙速どうぶ」。

ムコウからあるいて
眼うらからわたしも むかい
トク トクとまたたく この
温かい は じぶんの 地から手と
なり 降られた えいえんに
あるいて あるいて

 わかったようでわからない。「わかったようで」というのは「ムコウからあるいて/眼うらからわたしも むかい」を、私は、向こうから誰かが歩いてくる、それに対して私はその相手の方へ歩いていくと想像するからだ。そのとき、私の肉体のなかの変化。それを「眼のうら」から動く、肉体の内部から動くと想像できるからだ。「わかる」は「想像できる」。そして、「想像する」とは自分の肉体を他人の肉体に重ねること。単に足を動かして歩くのではなく、「歩く」はもっと肉体内部の運動、対象を見つめる「眼」の奥、瞼をつぶっても見えるものへとこころが動いていくことが力となっているからなのだと読み、あ、おもしろいと感じる。三行目に出てくる「またたく」は「まばたき」(瞼をたたく)にも通じると感じる。そのあとは「温かい」「血から」「手」という具合に、ここには「肉体」が書かれているのだと誤読をすすめ、いっそう「わかった」という気持ちになる。ことばが「学校文法」どおりに動いていないのは、何かことばにならないものを書こうとしているからだと思ったりする。
 でも、こういう感じは……。
 何と言うか、習い始めた外国語を、わかっている(つもり)の意味をつないでいくようで、どうも落ち着かない。
 こういう奇妙に関節がずれたような文体でないと語れないことなのだろうか。私は、逆に、どう読んでも「学校文法」どおりなのに、読み終わると自分の関節がずれてしまうという印象が起きる文体の方を好む。

 文月悠光「見えない傷口のために」。

ひとの言葉が刃であるなら、
唇はあらかじめ備わった傷口だろう。

 なるほど。

あなたへの伝わらなさに苛立つとき
噛みしめて思う 唇は傷口であると。

 「ひとの言葉」は他人のことばではなく、自分のことば。だから、唇も他人の唇ではなく自分の唇。しかし、そうすると「刃」は自分の内部、たとえば「舌」のようにして唇を切り裂く?

言葉を発するほどに、傷は深く重くなる。

 はい。論理的によくわかります。

誰もが持つ無防備な傷口のために
政府から四角い包帯が配られる。
それでも、わたしの存在を「わたし」だけに
閉ざしておくことはできないのだ。

 うーん、しつこい。
 でも、まだまだ、とまらない。

悲しみをほどいても、心は埋まらない。
「満たされる」とは
自分を最高の相棒にすることだ。
この身体を留めつづけるために
響くような怒りと傷が必要だ。
わたしをわたしたらしめる傷を
わたしは愛する。

 これは、まだまだつづいていく。読み続けると、文月の唇(肉体)が私の肉体をのっとってしまいそうで、こまったなあ、いやだなあという気持ちになる。「わざわざ」最後まで読まなくても、なんとなく「結論(?)」めいたものがわかるのだけれど、私は「わざと」最後まで読む。
 そして、推理小説や映画のエンディングを語るように、「わざと」こう書く。この詩の最後はねえ……。

光が傷を飲みこんで
今ようやく言葉になった。

 ね、想像どおりでしょ? でも、この想像どおりが想像どおりであることを確認するために、最初から最後まで、私が省略した部分を詩集『パラレルワールドのようなもの』で読み直してください。
 優れた映画は「結末」がわかっていてもたのしく読むことができる。知っている内容なのに何度でも見る。詩も、そういうものだ。

 水沢なお「窓の外で燃える火」。

授業中 たまに揺れる
山を切り拓いて 石灰を取り出すらしい

 からはじまる。巨大な何かから、一部を分離する。そういうことと「ぼく」の存在が重なるように(重なることをめざして?)、ことばが動いていく。「ぽく」は切り拓かれる山なのか、取り出された石灰なのか。
 「どちらも本当」だろう。この「どちらも本当」ということばは、六行目に出てくるのだが、それから先は「本当」が分離されるというよりも、より強固に結びつく。それがおもしろい。

 

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