「現代詩手帖」12月号(43)(思潮社、2022年12月1日発行)
三角みづ紀「幼いまま枝を広げて」。
どうして星は光るのか
どうして雨は降るのか
どうしてお菓子のはいった缶は
食べたら空っぽになるのか
どうして と問いつづけた
小さい自分を忘れないまま
ことばを丁寧に受けとめ、
いとおしく触れて、
疑いの眼で対峙している
わたしの日々
この三連目は「ことばを丁寧に受けとめ」る、「(ことばに)いとおしく触れ」る、「(ことばと)疑いの眼で対峙している」と、「ことば」を補うと、互換性のない動詞に一貫性があらわれる。さらに、「(どうして)ことばを丁寧に受けとめ」る、「(どうして/ことばに)いとおしく触れ」る、「(どうして/ことばと)疑いの眼で対峙している」という具合に展開してみると、「わたしの日々」は「小さい自分(幼い自分)」のままなのだとわかる。一貫する「どうして」が「日」を「日」にわけていく。分裂させていく。
この姿は、こう展開される。
やがて
ときおりやってくる鳥に
どうして飛べるの
と問うような
砂漠に立つ一本の木になりたい
「鳥」は「ことば」かもしれない。「木」は私かもしれない。そうすると「砂漠」は「日々」かもしれない。
「どうして」かは、書かない。
吉増剛造「「愛着!」/"rouge "!」。
吉増の詩は、引用できない。タイトルは仮に転写してみたが、正確なものではない。感嘆符は斜めのものをつかっているし、「rouge 」には「ルージュ」とルビがついている。本文中も、ルビが頻繁に出てくる。ひらがなにまでカタカナのルビがあれば、「アカ」ということばには「rouge 」というルビがついている。
吉増は「音」にこだわっているのだろう。「ことば」を「音」に還元したいのだろう。だが、そうだったら、紙の媒体にアンソロジーを載せることにどんな意味があるのか。いまはインターネットでいろいろなことができる。「音」を収録したサイトをURLで表示するくらいの工夫(読者向けの対策)をするべきなのではないのか。
さらに、この「音」へのこだわりから、もう一度「表記」へもどっていけば。
吉増は、きっと「表記」にもこだわっているはずだ。単に、ルビだけではなく、文字の大きさも詩と考えているだろう。活字ではなく、手書きの文字(形)にもこだわれば、そのときの紙、筆記具にもこだわっているだろう。すべての「感覚的なもの」が総合されて詩になっている。たぶん、吉増の「老い」そのものも。それを紙の雑誌を媒体にしてつたえるのは不可能だろう。
谷川俊太郎ではじめ、吉増剛造でとじるアンソロジーの形式にこだわるくらいなら、もっとほかのことにこだわった方がいいだろう。
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「現代詩手帖」の表紙には、「2022年代表詩130篇収録」とある。私は一日3篇ずつ読んできた。43回×3篇=129篇。ただし、最終回の今回は2篇の感想なので、どこかで2篇、感想を書き漏らしているようだ。どの感想を書き漏らしたのか、調べても意味はないだろう。だから、このままにしておく。
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