昨日、神戸地裁で無罪判決が下りた4年前の神戸市北区での5人殺傷事件。
被告は事件当時心神喪失状態であったというのが無罪の理由ですが、被告は、殺したのは人間ではなく「哲学的ゾンビ」だと信じていたと判断したと言ってもいいようです。
ゾンビにはあまり興味がなく、「哲学的ゾンビ」という概念にも触れてこなかったので、うっかり内容を誤解してしまうところでした。
「ゾンビ」と「哲学的ゾンビ」は違うのですね。
ゾンビは死者が起き上がって動きまわるもの。哲学的ゾンビは外見や行動が人間そっくりでありながら「意識」をもたない人間もどきのこと。哲学者が思考実験のため提唱したのだとか。
妄想型統合失調症と診断された被告は、両者を明確に区別していたようです。
もう少しくわしく事件を振り返ってみましょう。
事件は2017年7月16日早朝に起きました。現在30歳の被告は、読売新聞によれば、高専在学中は成績優秀で大手鉄道会社へ就職が内定していたけれど、突然辞退。高専中退後、アルバイトを経て電子系専門学校で学び、「卒業後はシステムエンジニアの仕事に就いたが、半年で退職、事件当時は無職だった」ということです。
事件の4日前、インターネットの掲示板で見た「13」という数字が高専時代の同級生の女性の出席番号だったことから、その女性を思い出し、2日後には「お母さんに会いたい。結婚するって言って」という女性の声を聞いた(今月2日付毎日新聞夕刊)そうです。
事件前日には「神社に来て」という声に応じて礼服に着替えて近所の神社に参拝、「世界の人間は君と私以外、哲学的ゾンビなんだよ」という女性の声を聞いたといいます。
翌日、再び神社に行くまでに哲学的ゾンビを倒すことが結婚への試練だと思いこんだ被告は金属バットや包丁で3人を殺し、2人に重傷を負わせるという凶行に及んだ、というのが事件の顛末。
被害者は祖父母や母、それに近所の人たちですから、日ごろから親しくしていたはず。それなのに「人間ではない」と思ったのは、哲学的ゾンビの特徴をよく知っていたということなのでしょう。
彼が「哲学的ゾンビ」という言葉に馴染んでいたのは、優秀な学生で、知的好奇心も旺盛だったからでしょうか。
というか、ゾンビと哲学的ゾンビの違いを理解していなかった私が無知なのか。一般的にはどうなんですかねぇ?