今回は『近代日本奇想小説史 明治篇』で、SF大賞特別賞・大衆文学研究賞・日本推理作家協会賞評論その他の部門賞の3冠に輝いた横田順彌さんを迎えての「近代日本奇想小説史 スペシャル篇」。
聞き手は日本古典SF研究会会長・北原尚彦さんと同会員で評論家の牧眞司さん。特別ゲストとして『近代日本奇想小説史 明治篇』と同『入門篇』の編集を担当した川村伸秀さんも参加なさいました。
話は横田さんの仕事全般に及びましたが、中では初期の代表的評論『日本SFこてん古典』と今回の『――小説史』とを比較して、「扱った雑誌・書籍などの量は3~4倍になっている。編年体の記述にしたので、古い作品が新しい作品に及ぼした影響がはっきりし、日本SF全体の流れが明らかになった」というところがいちばんの目玉だったでしょうか。
「ハチャハチャは何もないところから生み出さなければならないので力が必要。今は無理。読んで『くだらない!』とあきれてもらうのが最高」というのは、小説面での仕事について。
編集の川村さんの苦労(というか楽しみ?)の話も大変興味深いものがありました。
横田さんの原稿で「不明」とか「締切の関係で調べがつかなかった」とあるところをそのままにしておくのは「気にくわない」ので、図書館などで徹底的に調べてウラを取ったり、詳細を明らかにして本に仕上げたとか。
会場には版元であるピラールプレスの担当であられる仲村さんもいらして、発言してくださったのですが、この方のお話も面白い。
某医学関係の団体で政府の援助を受けて会誌を発行していたのが、民主党政権の事業仕分けで切られてしまい、自分たちで本を出そうと立ち上げたのがこの出版社だそうで、今回、『近代日本奇想小説史』がそれなりに売れ、しかもたくさんの賞を獲ったというので、業界では希望の星的存在になったというようなお話だったと思います(うろ覚えなので違ってたらスミマセン)。
あとは古書談義。コツとか醍醐味とか古典SF研に入って会長になりましょうとか。笑いの絶えない、大変に楽しい3時間でした。