惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

「夢破れし並木道」

2022-09-05 20:39:29 | 

 お昼過ぎ、NHK・FMで「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」がかかっていました。歌手は越路吹雪。
 はて、自分が聞きなれたのはどの歌手のものだったっけ? と考えました。この歌は色々な人が歌っているのです。

 やはり西田佐知子かなあ。日野てる子のも聞いていたような気がする。
 と、少し調べていたら、この楽曲が盗作だとして裁判沙汰になっていたことを知りました。

 ウィキペディアにワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件として項目が立っています。
 訴えたのはアメリカの音楽出版社、レミック・ミュージック・コーポレーション。同社が管理する「夢破れし並木道」に類似すると主張し、最高裁までいったものの、盗作に当たらずという判断が確定したそうです。

 「夢破れし並木道 Boulevard of Broken Dreams 」は1934年のアメリカ映画『ムーランルージュ』の挿入曲。どんな曲だったか探索するうちにYouTubeの動画に行きあたりました。

 踊り子たちの群舞が圧倒的に素晴らしい。美しくて、エロティックで。
 9分近くあり、途中で役者のやりとりが挟まりますが、とにかくステージが見事。うっとりします。

 で、曲ですが、これは確かによく似ています。

 「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」は、作詞作曲ともに鈴木道明(すずき・どうめい)さん。西田佐知子の「赤坂の夜は更けて」や日野てる子「夏の日の想い出」(どちらも詩:曲とも鈴木道明)を送りだした優れたソングライターです。

 「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」が出来たいきさつを、安倍寧さんが書いています→ブログ「好奇心をポケットに入れて」
 安倍さんが道明さんから聞いた話によれば、小雨がけぶるたそがれ時にハンドルを握っていて、突然、メロディーと詞とが「自然に湧いてきた」のだそうです。
 その時、道明さんの記憶の底に「夢破れし並木道」がなかったかどうか。
 もちろん、かりにあったとしても、この場合、盗作でないことは、判決が示したとおりです。


「さくらの唄」

2022-06-15 21:07:34 | 

 雨は今日も降り続き、昼頃からようやく小止みになる時間が出てきたようです。

 「ようです」と書いたのは、一日、部屋にいて原稿を書いていたから。夕方遅くなって、ようやく書き上げました。
 おかげでいつもの散歩にもゆけず。残念。

 このところ美空ひばりさんの「さくらの唄」を聞いています(→YouTubeの動画)。

 この歌は、お兄さんの借金を背負い込んで泥沼に溺れていたなかにし礼さんが「遺言」のつもりで書いた詞に、かねてから付き合いのあった三木たかしさんが曲をつけたもの。それをひばりさんが歌うことになったいきさつは、佐藤剛さんのこのコラムに詳しいのですが、ひばりさんに歌わせたくて連続ドラマまでつくった久世光彦さんの情熱も凄い。
 三木たかしさんの歌ったバージョンは未聴ですが、香西かおりさんと歌うこの動画から一端を窺うことができます。この人の泣き節も尋常ではない。

 なかにしさんの詞は、技巧をこらさず、自分の心情をそのまま吐き出した感じ。三木さんの曲も率直で、優しく人の気持ちをくすぐる。それをひばりさんは一見淡々と、しかし、深い説得力をもって歌いあげています。名曲であり、絶唱だと思います。


殿さまキングス

2021-06-28 21:30:33 | 

 NHKfmで殿さまキングスの特集をやっていました。
 ひさしぶりに聞いたのですが、歌、うまかったですね。

 代表曲「なみだの操」は1973年のヒット。ラジオばかり聞いていた学生時代のことなので、当然、よく耳にしていたのですが、「演歌のパロディだなあ」という位置づけでした。
 今でもそうなのですが、それだけではおさまらない曲であり、バンドだったといわなきゃいけないでしょうねえ。
 この曲を日本人はどう聞いていたのか、きちんと考えてみる必要があるような気がします。

 バンドの結成は1967年で1990年に解散。「昭和天皇の病状悪化を受けた“自粛ムード”によって、いわゆる「営業」の数が激減したこと」が解散の理由だったとwikipediaには書いてあります。知らなかった。
 ここからもバンドの位置づけが見えてきそう。


「はげしい雨が降る」

2021-05-13 20:42:29 | 

 朝からしとしと小雨の一日。
 これはもう梅雨の走りですね。梅雨入りも1週間から10日ぐらい早まりそうな予感。今年の梅雨はどんな降り方になるのでしょう?

 仕事の関係もあって、ボブ・ディランの「はげしい雨が降る」を聞きました。

 ディランのごく初期のこの名曲が呉明益『複眼人』(小栗山智訳、KADОKAWA)の巻末近くに登場したのには驚きました。
 登場人物たちが歌うのですが、最初は「なぜこの歌が?」と思ったものの、間もなくして、この作品にぴったりだと思えてきました。もしかすると、呉明益さんは書いていて、この歌からもインスピレーションを得たのかもしれません。
 幻想的、黙示録的なこの歌と、小説とはよく響き合っています。

 これから書評を書くつもりなので詳しくは書きませんが、『複眼人』が2011年に発表さたのは何か運命的なものがあったように思えてなりません。もちろん、作者は執筆中に東日本大震災のことを予感していたわけではないでしょうが。


「雨の日のブルース」

2021-02-11 21:18:40 | 

 「京都の恋」(1970年5月発売)、「京都慕情」(1970年12月〃)とベンチャーズの曲でヒットを飛ばした渚ゆう子さんが次に歌ったのは、筒美京平作曲の「さいはて慕情」(1971年3月発売)、そして「雨の日のブルース」(1971年8月〃)でした。

 この「雨の日のブルース」を最近、聞いて、「ああ、これだった!」と思いました。
 歌詞の一部――「暗いブルースをくちずさみ」というところがたまに頭の中で鳴って、でもそれが何の歌だったのか思い出せなくてじれったい思いをすることがあったのです(詞は橋本淳)。

 歌の記憶は消えにくく、あまり似たようなことはないのですが、それでもたまにはあります。

 渚ゆう子さんの曲は、あまり聞く機会がなくなってしまったので、どこかに埋もれかけていたのでしょう。あらためて聞くと、どの曲もいいですねぇ。
 小さい頃に沖縄民謡を習い、歌手デビューしてからはハワイアンを浜口庫之助さんから教わったとか。独特のうねるようなリズム感には両方の要素が入っているのでしょうか。艶と張りのある声が素晴らしい。