昨日、自分のSFレビューに触れた〈小説推理〉10月号ですが、連載エッセイ「推理日記」では佐野洋さんが「小松左京さんのこと」と題して思い出を記しておられます。
中でも、「小松少年は、二歳違いの兄がいたために、一見豪放な中にも、気遣いをする少年として育ったのではないか」という指摘が印象的。
それによれば、笹沢佐保委員は『日本沈没』の受賞に反対だったので公式コメントなしとのことですが、他の生島治郎、菊村到、角田喜久雄の各委員は日本推理作家協会賞に積極的に推しています。
中でも、「小松少年は、二歳違いの兄がいたために、一見豪放な中にも、気遣いをする少年として育ったのではないか」という指摘が印象的。
ところで、小松さんの『日本沈没』は第27回日本推理作家協会賞を受賞していますが、佐野さんはそのことについて、まず候補になった段階での事情を――
- 『日本沈没』は、長編SFであり、ミステリーの枠を広げれば、当然その枠の中に入るものである。従って、SFの優秀作品は、協会賞の候補に入れ、他の候補作と競って然るべきだ。
- 候補作の予選委員会は、こうした考えから、『日本沈没』を、協会賞候補として選出した。
それによれば、笹沢佐保委員は『日本沈没』の受賞に反対だったので公式コメントなしとのことですが、他の生島治郎、菊村到、角田喜久雄の各委員は日本推理作家協会賞に積極的に推しています。
これを読んで、私は今年の第64回の同賞〈長編および連作短編集部門〉候補作だった上田早夕里さんの『華竜の宮』について思いを馳せずにはいられませんでした。
同賞の各選考委員の選評は推理作家協会のページから当該項目をクリックすれば読むことができます(「第64回日本推理作家協会賞受賞作の選評と経過が登録されました(2011.6.27)」の下の当該部門受賞作タイトルをクリックし、それから各選考委員の名をクリックする)が、大雑把にいえば、SFであるがゆえにミステリーを対象とするこの賞にはそぐわないという理由で議論からはじかれたようです。
日本SF大賞がなかった時代との違いもあるかもしれませんが、ミステリーの範疇をことさらに限定してゆこうとする意見が幅を利かすようになるのか、と寂しく感じたのは事実。推理作家協会はこの件について少し議論してもらいたいと思うのは私だけでしょうか。(ちなみに私も協会員の1人です)
日が差さず、涼しい一日でした。
夕方、野川公園まで出かけ草むらを覗くとキツネノマゴが咲いていました。
キツネノマゴ科の一年草。花は5ミリくらいの大きさなので、そばにゆかないと気づかないかもしれません。
唇形の花の上唇に2個ある目玉のようなのがオシベの葯。
この花は毎年、秋の初めには掲載していますね。
〈小説推理〉10月号が発売になりました。担当しているSFレビュー欄で次の6作を取り上げています――
- 津原泰水『 11 eleven 』(河出書房新社)
- 森奈津子『セクシーGメン 麻紀&ミーナ』(徳間書店)
- 篠田節子『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』(文藝春秋)
- 宮部みゆき『チヨ子』(光文社文庫)
- 瀬名秀明『希望』(ハヤカワ文庫JA)
- サミュエル・R・ディレイニー『ダールグレン〈Ⅰ・Ⅱ〉』(大久保譲訳、国書刊行会)