いやはや、ロシアは大変なことになっているなあ、ということを痛感。
プーチンが説く「強いロシア」の下、ロシア社会では実際にどんなことが起こっているかを著者はレポートする。国家のあり方を、高所から分析するのではなく、市民の一人ひとりからじかに取材し、アリの目で描き出すのが彼女の手法。
真実を押し潰し、正義をないがしろにし、人間性を無視したロシアの実態が浮かび上がります。悲劇を通り越して、ほとんど喜劇にまで至ってしまっているような、いくつもの出来事。うまくやっている者にとっては、やりたい放題なので実に快適かもしれない。でも、いったん陥穽にはまってしまうと救われることがない。不条理そのもの。
この本を読んでいると、ロシアは法治国家ではなく、一部の者が法を気ままにねじ曲げて私利私欲を満足させる国だと思わざるをえません。これはソ連次代の悪しき因習というより、たぶん、ロシアそのものの伝統。皇帝や共産党委員長のもとで高度に(ずる賢く)発達した官僚主義を拭い去ることは永遠に不可能かと思えてしまいます。
詳しい事例の紹介は省きますが、驚くべきエピソードが満載。『世紀の売却』に描かれていた時代が終わると、次はこんなことになってしまった。この2冊を読むことで、ロシアの現在がかなりわかってきたと思いました。