惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

わんだ落語

2022-11-20 21:24:39 | 落語

 午後は新宿に出ました。
 新宿三丁目のフリースペース・無何有にて、「わんだ落語@新宿〜2022立冬〜」。

 その前、電車に乗ろうと駅前に行くと、5年前に亡くなられた水木しげるさんの命日(今月30日)を前にして「ゲゲゲ忌」のイベントが開かれていました。

 ステージでのクイズだとか、露店だとか、大きな鬼太郎人形との撮影会だとか。
 今年は水木さん生誕100年ということで盛り上がっているのです。

 ちょこっと雰囲気を味わってから、新宿へ。

 会場の無何有は高座をしつらえ、椅子を並べるとキャパシティー20人あまり。ほぼ満席で、立川わんだ独演会。

 わんだくん(「さん」というべきか、「師匠」というべきか)は先月、東京から故郷の名古屋に転居したばかり。そのあたりの事情だとか、生まれ育って、また住むことになった名古屋市春田の町内の様子だとかが枕がわりで、小学校の校歌も3番まで歌うサービスぶり。

 落語は、大晦日に借金を取り立てに来る大家や業者をあれこれの手で追い返す「掛け取り」のわんだバージョン。Jポップやラップが出てくるところが聞きもの。
 後半はなかなか売れない漫才コンビをテーマにした連作2題。ふたつ目はタイムトリップが盛り込まれたSF落語でした。

 ひさしぶりに出かけた新宿は、日曜日ということもあってたくさんの人出。ちょっとしたおのぼりさん気分になってしまいました。


立川わんだ真打昇進披露落語会

2020-02-24 20:49:19 | 落語

 昨夜は午後6時半から中央区月島の月島社会教育会館にて「立川わんだ真打昇進披露落語会」。
 昨年10月12日に開くはずだったのが台風19号襲来で延期。この日になりました。

 当初、予定されていた昨年10月の昇進披露会の顔ぶれとはかなり変わりましたが、ベテラン、中堅が顔をそろえてバラエティに富んだ演目。

 トリのわんだ君は梶尾真治さんの初期SF短編「清太郎出初式」を演じ、SF落語への意欲を強く打ち出しました。
 演じ方は落語と講談をミックスしたような感じ。家元・談志も講談を好んでいただけに、その系譜をついだといえるかもしれません。じっくり磨きをかけて、十八番にして欲しい。

 新型コロナウイルスの影響で中止になる落語会もあるそうで、高座にあがった噺家さんのマクラもそれに関するものが多い。膝と膝がくっつくように座って、長時間を過ごす寄席は、ここしばらくやりにくいでしょうねえ。

 自粛ばかりでは、世の中、詰まらないことになってしまいます。マナーを守って安全な集いを楽しみたいものです。

 「ベストSF2019」に4人目の投票がありました。
 放克犬(さあのうず) さん。ありがとうございました。
 今月いっぱい、投票を受け付けています。どうぞご参加ください。要領はこちら


「富久」

2019-10-15 21:11:25 | 落語

 一昨日のNHK大河ドラマ「いだてん」を、何回となく思い出しています。というか、忘れられない。

 「神回」というやつじゃないでしょうかねえ。鬼気迫る出来栄えでした。
 志ん生が戦時中、空襲怖さからか、酒飲みたさからか、満州へ渡って終戦で帰れなくなる。あちらで森繁久彌と会ったり、円生と一緒に行動したりしたのは史実らしい。脚本(宮藤官九郎)がフィクションで付け加えたのは、金栗四三の弟子・小松くんがそこに居たという部分。東京の街を走り回った小松くんの助言で、志ん生は「冨久」の久蔵が浅草から芝まで走ることにしたというエピソードに仕立て上げていました(従来は日本橋までで、距離が短い。長く走る方が切羽詰まった久蔵の気持ちが強く訴えられるように思います)。

 で、志ん生の高座に刺激された小松くんが夜の大連を走っているうち、ソ連軍に射殺される。その場面とカットバックさせて、志ん生が久蔵が走りつづけるくだりを語るという、すさまじく緊迫感のある悲劇を生み出していました。
 ちなみに、走りながら久蔵が「家へ帰りたいんだよォ」と、小松くんの心中を代弁するかのように吐き出すのは、志ん生を演じている森山未來のアイデアだったとか。

 そういえば談志が志ん生の「冨久」について語っているのを読んだことがあったなあ、と思い出し、本棚を漁ってみると、『あなたも落語家になれる』(1985年、三一書房)に次のような一節がありました。

 志ん生が引退し、入院しているところへ、談志が見舞いに行ったというのです。その時、志ん生は自分の落語の録音が「ねえんだヨ、俺ン家には」と言う。
 それを聞いた談志が、次回、録音テープを持参して――

志ん生本人に絶品の『冨久』を聞かせると、例の調子で恥かしそうに、
「オレ、うまいネ!」

 と言った、と書いてあります。

 可愛いですね、志ん生さん。せつなくて涙が出そうになります。

 満州で志ん生と苦楽をともにした円生も、私は大好きでした。「ヘヘッ」と目を細めて笑う仕草がなつかしい。
 落語はいいなあ。その落語をうまくドラマに取り込む宮藤官九郎も素晴らしい。


新真打・立川わんだ

2019-09-30 21:28:47 | 落語

 昨夜は「三四楼改メ 立川わんだ 真打披露」パーティー。神田の如水会館にて午後6時より。

 かねてより懇意の落語家三四楼くんが10月1日をもって真打・立川わんだとなるということで、お祝いの宴が開かれました。ご親族、友人、ファンの方々、席亭など関係者の皆さん、そしてもちろん立川流の落語家さんなどが集いました。テーブルごとの歓談中心の比較的落ち着いた会かなと思いきや、「SF音楽家」を名乗るミュージシャン・吉田隆一さんのトリオによるフリージャズの演奏があって俄然、室内は白熱してきました。
 その後、私も一枚加わっての祝辞などがあり、最後に、当人があらためて挨拶をする段になって、宴はクライマックスへ。
 わんだ師が小学生時代に出会ったSFのことから始めて、SF、宇宙、落語について熱く語り続け、司会者も制御できなくなってしまったのでした。

 写真は、ウィンダム著の児童向けSF本を手に「SFとは」を熱弁するわんだ師。壇上の立川流の真打さんたち、師匠の談四楼師、談志家元の娘・松岡ゆみ子さんらは、なすすべもなく立ち尽くすのみでした。

 ちなみに師の談四楼さんの口上によれば、「わんだ」は本人の命名で、「ワンダーのよんだかワンダフルのわんだか」と聞いたところニヤニヤしていましたので、そのどちらかでしょう、ということです。
 10月12日には真打昇進披露落語会もあります。これからも頑張れよ~!


真打誕生

2019-03-30 21:35:34 | 落語

 昨夜はお江戸上野広小路亭にて「立川三四楼 真打トライアル」。1月、2月に続いて3回目の高座。いよいよ、この回で真打昇進の可否が決まります。

 2月の2回目は見られなかったのですが、今回はこれまでにないお客さんの数。皆さん、三四楼くんの出来を、固唾をのんで見守りました。

 ところが、これがプレッシャーというものでしょうねぇ。どうもうまくない。
 話を急いで語ることに懸命で、ギャグが効かない、人物が浮き立たない。殊に、後半の草上仁さん原作のSF落語「宇宙貿易摩擦」(原作のタイトルは「国境を越えて」)では、もうしどろもどろという状態に陥ってしまいました。口が乾くのか、ペットボトルの飲料を高座でぐびぐびと飲みほしては、なんとか噺をつづけるありさま。
 本人も途中で「今日はダメだ!」と言ってましたが、客席の誰もが悲観的になっていたはず。

 ひと晩で全5席という、意欲ばかりが溢れたまま討死してしまったかという感の高座が終わった後、師匠の立川談志楼さんが登場。三四楼くんのプロフィールや芸歴を軽妙に紹介した後、示した判定は――「合格」。満場、拍手につつまれました。

 師匠は、今回の高座だけではなく、落語界における三四楼くんのあり方まで考え、「合格」を出したのでしょうね。秋には真打昇進披露が行われる予定。がんばってね。

 〈小説推理〉5月号が発売されました。担当のSFレビューで次の3作を取り上げています――

  • 小川一水『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ〈1・2・3〉』(ハヤカワ文庫JA)
  • 櫻木みわ『うつくしい繭』(講談社)
  • 梶尾真治『黄泉がえり again』(新潮文庫)

『天冥の標』がついに完結しました。全10話、文庫本17冊。未読の方は、しばらく楽しめますよ。