惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

量子跳躍

2015-04-30 21:04:16 | ことば

 リハーサルを何度も聞かされ、側近が「もう聞き飽きた」とボヤいたという安倍首相の米議会演説を読んでみました。
 お祖父さんが米議会で演説した言葉から始め、自分だけでなく、岸信介首相の栄誉をも強調しようとしていて、本懐を遂げたかなと、安倍さんの心中を察してしまいました。

 

 歴史認識に関する言葉が取りざたされていますが、私が心に留めたのは次の3つの言葉――「山羊2036頭」、「量子跳躍(クオンタム・リープ)」、「キャロル・キング」。

 

 「山羊2036頭」は、戦後まもない日本にアメリカから贈られた援助物資の例として挙げられたもの。
 山羊の頭数が細かく述べられているところが肝心ですね。ほんわかとしたユーモアが漂う。スピーチライターの手腕だと思います。

 

 「量子跳躍」は、日本が今、さしかかっている歴史的転換について比喩的に述べたところ。「改革の精神と速度を取り戻した新しい日本……」と続きます。
 この言葉はビジネス界での流行語なのでしょうか。たとえばこんなところでも、使われています。アメリカの議員さんたちが注釈なしに聞いて、すぐ呑み込める用語なのでしょうか。
 個人的にはうなずけない言葉の選択です。「量子跳躍」ったって、エネルギーが拡大する方向ばかりではないだろう、突然すぼんでしまう跳躍だってあるじゃん、などと突っ込みをいれたくなります。

 

 「キャロル・キング」の名は、演説の最後のくだりに登場します。安倍首相が高校生だった頃にラジオで聞いたというヒット曲「君の友だち You've Got a Friend」を引用し、東日本大震災でトモダチとして手を差し伸べてもらったことに感謝しています。
 「君の友だち」のリリースとヒットは1971年。私が大学生の時でした。3歳下の安倍さんは高校生だったんですね(成蹊高校)。いちばん音楽に敏感な年頃だったんだと思います。たぶん、あちらの議員さんたちにも親しい曲。なるほどね、と思いました。

 

 どなたかは知りませんが(内閣官房参与のT氏?)、有能なスピーチライターがついているのは間違いないですね。ユーモアとウイットを盛り込み、かつ総理が言いたいことを角が立たない形で表現している。でも、コーティングが滑らか過ぎるように、私には思えます。話が上手だとかえって胸の奥に届かないこともあるんですよねぇ。

 

 今日の談志師匠のCDタイムは「五貫裁き」。10日前に聴いたのと同じ演目ですが、高座としては3年のへだたりがあるようです。
 演出がかなり変化しています。大家のズル賢さが影をひそめ、吝嗇な質屋・徳力屋の狼狽ぶりに焦点が当たった感じ。
 何度も同じ場所で同じ噺をするというのは、ちがう形を求めて、噺を練り直しているということなのでしょう。芸への執念が伝わってきます。


また苺

2015-04-29 21:04:39 | 園芸

 今日の最高気温は 23.6℃(隣町アメダス)。
 時ならぬ暑さのピークは越えたのでしょうね。夕方の風はずいぶん冷たく感じました。

 

 

 イチゴの写真は3日前にも載せたばかりですが、今日はしっかり収穫したので、今回が正式ということに。
 品種は「とちおとめ」。味も上々なんですが、熟れたのを摘んだ時の甘い香りがたまりません。ほんまにトロけそう。

 

 書き忘れてましたが、トマト苗は昨日、植えました。植えたところへヨモギ発酵液を振りかけて、元気づけてみましたが、さて、どうなるか。
 風が吹くので、仮の支柱をしてあります。去年は支柱が頼りなくて、1本、トマトの茎が折れてしまったので、今年はどれもしっかりした支柱を立てるつもり。コンテナ栽培で太くて長い支柱を構えるのは、ちょっと大変なんです。そのための細工をあれこれ。

 

 今日の談志師匠のCDタイムは「持参金」。米朝師匠から教わったネタを、家元が東京にもってきたそうです。カネと女が絡んでいったり来たりの滑稽話。

 録音が、冒頭、混乱してます。談志師匠が遅れて入ったらしく、にもかかわらず出囃子は鳴ってしまっている。弟子があわてて、小噺でとりつくろったりしているところへ、師匠がやおら登場。
 この日の東横落語会は先代の金原亭馬生(志ん生の息子で、志ん朝の兄。池波志乃の父親)を追悼する会だったようで、談志師匠も馬生さんの思い出をしんみりと語っています。酒好きが命を削ったのか、それとも酒があったおかげで、芸歴を伸ばすことができたのか。ラジオで何度も聴いた噺家さんですが、54歳は早過ぎました。
 家元はこの人が好きだったんですね。言葉の端々にそれが感じられます。「親切で優しい人でした」などというセリフを、誰か他の人に対して言ったことがあったでしょうか。

 

 話がそれました。本題の「持参金」は、登場人物も少なく、室内の会話だけで進行するので、あまり家元の芸を発揮する余地はなし。話のバカバカしさが笑えますが、本家・米朝師匠のものと比べて聴いてみたいものです。


失念

2015-04-28 21:40:51 | 園芸

 最高気温 27.3℃(隣町アメダス)。ひええ~っ。

 

 午後、トマトとスイカの雨除けのために木工をしていたらどんどん時間が経ってしまい、夕食の焼魚の支度をすることを忘れていた。
 家の者に「もしかして、忘れてない?」と言われて、やっと気がつく。迷惑かけて、ごめんなさい。
 というわけで、夕食はいつもより15分程遅れました。

 

 夕食後の談志師匠CDタイムは「寝床」。お馴染みの演目であります。
 マクラは歌謡曲の歌詞の話から。「情けない歌詞をかっこいいメロディーで歌うからいいんでね」と、あれこれ歌詞をあげつらう。
 「瞳を閉じて、なんていうけど、バカいっちゃいけない。目蓋は閉じても、瞳は閉じようがない」というイチャモンは正鵠を射ているのか、どうか。今度、よく考えてみます。

 

 本題は、義太夫が語れるので機嫌がいい旦那が、だんだん不機嫌になるところの描写とか、その義太夫がいかに凄まじいものかを、店子や使用人がうんぬんするところとか、見事なもの。可愛い声と、弱った声と、怒った声と、困った声と……描き分けの妙が素晴らしく、わかりきった噺にもかかわらず、ついつい聞き惚れてしまいました。


夏日

2015-04-27 20:52:27 | 日記・エッセイ・コラム

 最高気温 25.3℃まであがりました。
 トマトやスイカの植え付け準備におおわらわ。狭い庭でやってるもんで、大変なんです。

 

 今日の談志師匠のCDタイムは「白井権八(鈴ヶ森)」。広沢瓢右衛門から教わったという、師匠ならではの講釈もの。
 「面白い話じゃないから、ほかの誰もやんない」と言っているのは、裏返しの自負なんでしょう。続けて「下手にやるったって、三平や円鏡みたいにゃならないから心配しなくていい」なんて言ってます。
 家元はよく円鏡(今の橘家圓蔵)さんをバカにしてましたが、これも愛情の裏返し。落語家のひとつの典型として尊重していたんだと思います。

 

 本題の噺は、東海道を下る白井権八と、雲助、幡随院長兵衛とその手下、渡し守、山賊らとのやりとりを語ってみせるもので、ストーリーらしきものはありません。それぞれの登場人物の描き分け、講釈ものならでは七五調の名調子が楽しい。
 家元のなめらかな口舌が講釈ネタにはよく合ってます。

 

 〈小説推理〉6月号が発売になりました。担当のSFレビューで次の3作を取り上げています――

  • チャーリー・ヒューマン『鋼鉄の黙示録』(安原和美訳、創元SF文庫)
  • 上田早夕里『薫香のカナピウム』(文藝春秋)
  • 倉田タカシ『母になる、石の礫で』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)

 『鋼鉄の黙示録』は南アフリカSF。映画といい、小説といい、南アフリカのSFには独特のぶっ飛び感があって、楽しく、かつ切ない。


2015-04-26 20:59:56 | 園芸

 イチゴ(とちおとめ)の実が色づいてきました。

 

 

 初めての栽培なのでどうなることかと心配していましたが、なんとか収穫までこぎつけたようで、ひと安心。
 このうちの2つを摘んで食べてみましたが、立派なイチゴの味がします。もう少しおけば、もっと甘くなると思う。

 

 ひとつの株に実がたくさんつきすぎている感じ。本当は選抜して摘果すべきなんでしょうね。
 ランナー(子蔓)もたくさん伸びすぎ。これは明日にでも摘み取るようにします。

 

 3株、植えたのですが、それぞれ育ち方が違います。
 写真にうつっているのは、いちばんよく繁ったやつ。これは2月中旬頃からホットキャップをかぶせて保温したので、よく葉が成長しました。ほったらかしのは、葉の成長がいまひとつ。来年からは、すべてを立春頃から保温しなくては。

 

 今日の談志師匠のCDタイムは「松曳き」。ボーッとした殿様と家老の三太夫とのとりとめないバカげた会話から成ってますが、途中、用があって洗面所にいっている間に話がコロッと変わっていて、何がなんだか。
 解説によると、本来の「松曳き」のダイジェスト版のようなもので、脈絡皆無、不条理なものになっているそうです。どうりで。

 どうもこの日の家元はムシの居所がよくないような感じで、マクラもあちこちに険があってドキドキします。客を楽しませるというよりは、言いたいことを言い、やりたいことをやった高座だったかも。