風雨が時に強く、庭のサルスベリの幹に巻きつきながら伸びていたヤマノイモの蔓の先が千切れてしまいました。自然による芯止め。でも、少ししたら子蔓がまた伸びることでしょう。
ハコベはナデシコ科の1~2年草。古来からの代表的な雑草で春の七草のひとつ。
手元の図鑑には名前について、「日本最初の本草書である『本草和名』(918年)に登場している波久倍良(はくべら)の転訛と考えられるが、語源は不意。繁縷は漢名」とあります。
春の初めから秋まで、長い間、花が見られます。小さいし、あまりにありふれているので、顧みられることもありませんが、白い花はすっきりしていて清楚です。
長円形の花弁が10枚あるように見えますが、実は、深い切れ込みがある5枚の花弁なのです。
ハコベといえば何といっても島崎藤村「千曲川旅情の歌」ですね。
前半の冒頭――
- 小諸なる古城のほとり
- 雲白く遊子悲しむ
- 緑なす繁蔞は萌えず
- 若草も藉くによしなし
- しろがねの衾の岡邊
- 日に溶けて淡雪流る
明治青年の早春の感傷に「ハコベの幻」が瞬間的に青く広がるように思えます。あって当然の、きわめて身近な草だったのでしょう。