詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ブレイクを読む(メモ1)

2006-02-17 15:39:11 | 詩集
 『ブレイク全著作集』(梅津済美訳、名古屋大学出版会)を読む。ことばが互いにことばを映しあい、その意味を荒々しくする。

 翼ある鷲が彼の高い巣のまわり
アルプスの丘々の塔状の垣をさげすむ、
             (「スペンサーの模倣」)

 「さげすむ」ということばが、前の行の「高い」によって浮き彫りになる。「翼ある」によって意味が荒々しくなる。
 「さげすむ」とは自由な精神が、自由ではない精神を高みから批判する行為である。「アルプスの丘」「塔(状)」さえも自由な鷲、孤高を生きる鷲にとっては「蔑み」に値する。

*

 梅津の訳で一か所つまずいた。「アルプスの丘々」。「The Complete Poetry & Prose of William Blake」(anchor books)によれば引用部分は

 As the wing'd csgle scorns the tow'ry fence
Of Alpine hills round his high aery,

 確かに「hills」であり、英語では複数が当然なのだろうけれど、私の日本語の感覚にはあわない。「山々」「家々」「花々」は納得できるが「丘々」はなじめない。
 原文に忠実であることと日本語に忠実(?)であることとは別の問題である。梅津はあえて原文に忠実に翻訳するという姿勢をつらぬいている。

コメント
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