小林尹夫「棲息33」(「鰐組」225、2007年12月01日発行)
3連目がとてもいい。
亡くなった母を布団から柩に移すときの描写だ。遺体の下へ手を差し入れ、向こう側から伸ばされてくる手と出会う。
「手の言葉」がいい。手はもちろんことばなど持たない。持たないけれど、ことばが伝わってくる。それはことばにならないことばである。ことばにならないだけではなく、ことばにしなくてもわかることばである。
そして「手の言葉」と小林が明確に書くことによって、そのと伯父の手と小林の手が会話したことがわかる。
3連目がとてもいい。
時は遠ざかるばかりなのに、記憶は近づくばかり。
母の汗を吸った敷き布団のにおう、なま温かさ。
しっかりと握りしめた伯父の手の力、手の言葉。
亡くなった母を布団から柩に移すときの描写だ。遺体の下へ手を差し入れ、向こう側から伸ばされてくる手と出会う。
「手の言葉」がいい。手はもちろんことばなど持たない。持たないけれど、ことばが伝わってくる。それはことばにならないことばである。ことばにならないだけではなく、ことばにしなくてもわかることばである。
そして「手の言葉」と小林が明確に書くことによって、そのと伯父の手と小林の手が会話したことがわかる。