詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

木坂涼「止まる」

2007-12-21 09:00:00 | 詩(雑誌・同人誌)
 木坂涼「止まる」(「現代詩手帖」2007年12月号、初出「花眼」4、2007年07月発行)
 木坂の作品にはいつもとても美しいことばがある。繊細な感覚がある。

森の奥に日が入り込む
すると
日の破片が
二度と抜け出せないほどに細かな枝と枝
葉と葉の間に
引っかかってしまう

止まる

 この光の描写はとても美しい。そしてただ美しいだけではなく、1行アキを挟んで「引っかかってしまう」が「止まる」へと変化した瞬間に、単なる美しさではなく、詩に変わる。哲学を含んだことばに生まれ変わり、木坂の内部を耕しはじめる。風景の描写ではなく、内面の描写へと変わる。

やがて止まる
もろもろ

いっぺんにではなく
一人分ずつ
一回分ずつ

 「一人」という発見、「一回」という発見。
 一期一会ということばがあるが、それは単に何か(だれか)と会うということではない。会って、自分そのものが変わる。つまり、自分を発見するということだ。
 木坂の見たもの、感じたもの--それはすべて一期一会である。そしてその瞬間ごとに、木坂は生まれ変わる。そうしたことへの感謝のようなものが、木坂のことばを輝かせている。
 それが一番強く出ているのが「二度と抜け出せないほどに」の「二度」ということばだ。
 一期一会、「一人」「一回」--その「一」という意識が「二度」の「二」のなかで強烈に炸裂し「二度と」「ない」という文脈を引き寄せる。その意識の動き、それがとてつもなく美しい。
コメント
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