詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

特ダネの読み方

2022-01-26 14:11:47 |  自民党改憲草案再読

特ダネの読み方

 2022年01月26日の読売新聞が、非常におもしろい。私はコロナワクチンの三回目の接種後であり、ぼんやり読んでいたのだが、フェイスブックである人が「共通テスト問題流出か」という特ダネを取り上げていた。「どこから、どうやって漏れたんだろう」。この疑問は二つ。ひとつは会場から「①どうやって?」。もうひとつは「②ニュースの情報源は?」 
 ①は、まあ、デジタルカメラをつかってということだろうなあ。いろいろなカメラがあるから、見過ごされたのだろう。
 私の興味は②。
 一面の記事。(西部版・14版)
↓↓↓↓↓
 大学入学共通テストの試験時間中に「世界史B」の問題が外部に流出した疑いのある問題で、警視庁が偽計業務妨害の疑いで捜査を始めたことがわかった。問題を写した画像を受け取った複数の大学生が、SNSで回答を返信しており、大学入試センターは不正行為が行なわれた可能性があると見て警視庁に相談している。

 ここから考えられるのは「大学入試センター」と「警視庁」。どちらかに懇意の人間が檻、そこから記者は情報をつかんだ。しかし、つづきを読むと、少し事情が違ってくる。↓↓↓↓↓
 問題を受け取った大学生によると、画像は15日午前9時半から午前11時40分にかけて行われた「地理歴史・公民」の試験時間中に送られてきた。
 東京大の男子学生(19)は午前11時6分、インターネット通話アプリ「スカイプ」を通じて、世界史Bの問題用紙が写った画像計20枚を受け取った。学生は送られてきた19問中14問を解き、午前11時28分と同39分の2回にわけて返信。東大の別の男子学生(21)は同8分に計10枚の画像を受け取り、同26分までに解答を送り返した。

 「問題を受け取った大学生によると」と読売新聞は書いている。つまり、記者は問題の学生に取材している。「大学入試センター」か「警視庁」が、まだ「事件」が発覚する前に、学生の存在を教え、さらに「住所」などの個人情報を教えたのか。もし、そうだとすると、その「情報源」は、かなり危険なことをしていないか。
 読売新聞が取材できたのは一人の学生(19)なのか、もうひとり(21)にも取材できているのか、よくわからないが、ともかくひとりからは確実に取材している。もしかすると、その学生が読売新聞に情報を提供したのではないのか。先に「大学入試センター」か「警視庁」に相談したが、ニュースにならない。それで読売新聞に声を掛けてみた、ということではないのか。読売新聞記者は、それをもとに「大学入試センター」と「警視庁」に問い合わせてみて、「裏付け」を取った上で記事にした。
 私は、そう読んだ。

 で。
 私はこの「事件」の行方にも興味があるが、それよりもきょうの読売新聞にはもうひとつ「特ダネ」がと載っており、そのニュースの方が一面のトップだったということだ。
 証券会社が、新規上場株の公開価格を低く設定していた。独禁法違反の恐れがある、というのである。
↓↓↓↓↓
 企業が新規上場する際、事前に投資家に販売する時の「公開価格」を巡り、公正取引委員会は広く普及する値決めの商慣行が独占禁止法に違反する恐れがあるとの見解を示すことが分かった。優位な立場にある証券会社が一方的に価格を低く設定する行為が多くみられると問題視している。公開価格が低くなると新興企業が十分な資金を調達できないため、公取委が改善を促す。
 政府関係者が明らかにした。公取委は近く、見解を示す報告書を公表する。

 疑問は。
 この新規上場株問題は、きょうニュースにしなくても、あすでも「特ダネ」として掲載できるのではないか。社会的な関心は、少なくとも「共通テスト」の方がはるかに高いはずである。そして、各ジャーナリズムがいっせいに後追い報道をする。受験シーズンであり、受験生にも衝撃が大きいだろう。つい最近も、東大で傷害事件があったばかりだ。「新規上場株」問題は公取委が報告書を発表してからでも十分だろう。
 ここから、さらに問題は、と繰り返してみる。
 共通テストの方は「情報源」がよくわからない。「大学入試センターは不正行為が行なわれた可能性があると見て警視庁に相談している」と書いてあるだけである。一方、「新規上場株」問題はどうか。「政府関係者が明らかにした」と情報源を「政府関係者」に絞り込んでいる。
 おもしろいと思うのは、ここである。
 「共通テスト」のニュースは「情報源」がわからない。そして、取材記者は、たぶん「社会部記者」。それに対して「新規上場株」は「情報源」が「政府関係者」。取材記者は「政治部」か内容から見て「経済部」。読売新聞では「政治部」「経済部」が「社会部」より優遇されているということだろう。そして、それは「政府関係者」を優遇するということである。せっかく「政府関係者」がニュースを提供してくれた。それを一面トップにしないと、次から情報がもらえなくなる。そういう「思い」が働いているのだろう、と私は勘繰ってしまう。「共通テスト」は「情報源は学生だろう? 次も特ダネ情報をくれるわけじゃないだろう? 政府関係者とのつきあいを優先させるべきだ」。あくまで私の「妄想」だけれど、そう思ってしまう。
 さて、ここからもう一歩。
 読売新聞は、国民のことなんか気にしていないなあ。政府関係者が何をやりたいかを宣伝し、その見返りとして取材を優遇してもらう。さらには電通に働きかけてもらって広告を確保する。そういうことを考えているんだろう。私の「妄想」だけどね。これからも、どんどん政府のやりたいことをそのまま宣伝するだろう。「敵基地攻撃」だとか「台湾有事」だとか。

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ガルシア・マルケス 文体の秘密(4)

2022-01-26 09:13:46 | その他(音楽、小説etc)

 (これは、フェイスブックのガルシア・マルケスのサイトのために書いた文章です。いままで書いたものも、そこで書いたものです。記録として残しておく。)

 どんな本にも忘れられない強烈なことばがある。Garcia  Marquez の「Cronica de una muerte anunciada 」(p108)では「el rencor feliz 」と「el remanso deslumbrante 」(p134)。私はネイティブではないので、この強烈なことばの組み合わせにびっくりしてしまった。ネイティブのひとたちは、このことばをどんな気持ちで読むのだろうか。それを知りたいと思った。でも、突然、聞いても返事はないかもしれない。そこで、私は自分の考えを書いてみることにした。
 二つのフレーズの背後には、Garcia  Marquez の「書くこと」についての「思想」がある。彼にとって「書くこと」は「二度」目覚めることである。より「正気」になるのことである。
 最初に「現実」がある。これは一度目の目覚め。それをことばにすると、ことばにするまでは見えなかったものが見えてくる。二度目の目覚めのはじまり。「現実」をより正確に見るための何か、「現実」を補強する何かが見えてくる。それをことばにするとき「二度目」の目覚めが、はっきりと自覚される。それは、ぼんやりとした意識ではなく「正気」がみつめた世界。二度書くことで、より「正気」になる。
 Garcia  Marquez は一度目は「el rencorz」「el remanso」と書いた。しかし、それだけでは何かが足りない。二度目の目覚めで「feliz 」と「deslumbrante」に気づいた。そして、それを組み合わせた。
 Garcia  Marquez は「二度」目覚めたものだけが見ることができる世界を書いている。それは、ある意味では、まるで「ドラッグ」によって覚醒した肉体だけが見ることのできる世界のようだ。しかし、Garcia  Marquez は薬物中毒患者ではない。「正気」である。私たちが体験できない「正気」を体験している作家なのだ。
 そして、こういう「二度」目覚めるための「助走/準備」としてGarcia  Marquez が採用しているのが「強調構文」なのだと私は考えた。そのことを書いた。

 ネイティブのみなさんが、Garcia  Marquez の「構文」やつかっていることばについてどんな「実感」をもっているのか聞きたかった。けれど、何人からに「Garcia  Marquez の本に線を引くな」「Garcia  Marquez を批判するな」「追放しろ」「スペイン語を読み書きできない中国人、動物」「カリブ海に住まなければGarcia  Marquez を理解できない」「ラカンを引用して分析しないと意味がない」などと言われた。私はGarcia  Marquez の文体もことばも、一度として批判してはない。ただ、引用し、考えているだけだ。
 多くの友人に出会え、また助けてもらったが、私はもっとみなさんの具体的な感想が聞きたかった。Garcia  Marquez を読んだとき、新しいことばにであった瞬間、どう感じたのか。どんなことばを手がかりにして、そう感じたのか。そうしたことを聞きたかった。
 「追放しろ」と書いた人に約束したように、私は「Cronica 」を読み終わったので、このページではもう書きません。しかし、しばらくは訪問します。君たちが「Cronica 」のどのことばに感動し、どう思ったのか。私が感動した「Cronica de una muerte anunciada 」「el rencor feliz 」をどう感じたか教えてください。

 

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