ウェス・アンダーソン監督『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(★★★★) (2022年01月28日、中州大洋、スクリーン2 )
監督 ウェス・アンダーソン 出演 手作りのセット、いろんな人たち
たいへんたいへんたいへんたいへんたいへん、おもしろい。でも、★ひとつ減点。だってさあ、最後の最後で、おもしろさを「解説」してしまっている。シェフが記者に答えた「セリフ」。「毒は、とてもうまかった。初めての味だった」と言わせている。しかし、その「初めての味」はぜんぶことばにできる。つまり「知らなかった味」ではなく「知っている味」の組み合わせ。つまり「組み合わせ方」が新しかったのだ。そして、この「解説」は単に「解説」しているだけではなく、長くなるからと言って切り捨てた「記事」を拾い上げてみたら、そこに書いてあった。それを「採用する」という手の込んだ仕掛けなのである。
この「手の込んだ仕掛け」をいちいち言っていてもしようがない。でも、いちいちいわないとほんとうは「味わった」ことにならない。シェフが「毒の味」をひとつずつ語ったようにね。私は、そういうことは好きだけれど、大嫌いでもある。めんどうくさいからね。なかには「知らない味」もあり、それを書かないと、きっと「あの味が抜けている」ということを言う人がいる。まあ、それでいいんだけれど。
「正確」がどうかわからないが、ひとつだけ書いておく。
この映画ではセットが魅力。ほんものそっくり、というのではなく、手作り感がある。つまり、セットとすぐにわかる。そこに、「手作り」して遊んでいる感じがあって、とても気持ちがいい。できた料理を、入り組んだ階段をのぼって届ける。その、なんでもないけれど、単純で変な入り組み方の「リズム」。瞬間的に、ジャック・タチを思い出した。「ぼくの伯父さん」だったかなあ、パリの下町、入り組んだ街の高いところに住んでいる。その「住処」の雰囲気に似ているねえ、この手作りのセットの感じ。「ぼくの伯父さん」は、自分の家を出るときに、遠く離れた建物の鳥籠の鳥に、鏡で太陽の光を反射させて合図する。朝を送る。そのシーンが私は大好きだが、そういう「誰の迷惑にもならない自分だけの遊び」という感じが全体を支配していて、それがとっても、とっても、とっても、とってもいい。
でもね、これは、やっぱり言ってはいけないことなんだと思う。言いたいけれど、ぐっとこらえて、ときどき、ついもらしてしまうという感じくらいがいい。最後にまとめて言ってしまっては、「わからないやつは馬鹿だ」といわれた気持ちになる。まあ、言われたって、平気だけれど。
役者も、みんないいなあ。「演じない」ことを演じている。あるいは「演じる」を演じていると言えばいいのか、よくわからないが。登場人物になってしまわない。つまり、「役(登場人物)」を見ているというよりも、役者をみているという感じにさせてくれる。「登場人物」なのだけれど、登場人物であることを忘れさせて、この人、こういう人だったんだあと錯覚させてくれる。「あれは、役なんですよ。私じゃないんですよ」「えっ、でも、あなたにしか見えない。役じゃないでしょう」というような、とんちんかんな会話をしてしまいそう。そのうちに役者の方で、まあ、どう見るかは観客の自由だけれどという声をもらすだろうなあ。
というような、どうでもいいことまで、私は考えてしまう。感じてしまう。この妄想している時間が楽しい。映画を忘れる。(笑い)
映画にもどると。
最初に「料理」が出てきて、最後にもまた「料理」が出てくる、という、「ほら、きちんと終わったでしょ」という感じも好き。
最後の「ことばの解説」がなければ、★10個つけたいけれど、と思いながら★4個。こんな変なことで悩むというのも、まあ、快感ではあるね。
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