「現代詩手帖」12月号(21)(思潮社、2022年12月1日発行)
峯澤典子「ひとりあるき」いっしょに生まれるはずだった兄弟を思うとき、夢を(たぶん、同じ夢を)見る。その夢が作品の中心。
この夢を見はじめた夜いらい、わたしのすべての感情は、あなたから切り離されたつまさきの重い痺れをくぐってから、息のそとに出てゆくようになりました。
「息のそと」は「息の外」か。「息の外」へ出て行くとどうなるのか。わからないが、自分の「いのち」をはなれて動く感じがある。新しい息を手に入れることができるか、息以外の何かを手に入れることができるか。
わからないけれど、わからないからこそ印象に残る。
宮尾節子「牛乳岳」を読むと、「息の外へ出る」とは、こういうことかもしれないと、ふと思う。脈絡もなく。ただ、突然に。
「冷やしたぬき」
なんて看板見ると1メートル位は
(むねのなかで)
ゆうに跳び上がります。
(むねのなかで)、あるいは 峯澤なら「夢の中で」というだろうか。なんでもできる。そのなんでもというのは、「ゆうに跳び上がります」の「ゆうに」のことである。そんなことはほんとうはできない。けれど、なんの努力もせずに、らくらくと。それが当然のことであるかのように。とても自然に。
「息の外」は、ほんとうに「息の外」ではなく、「息の中」にある。「息」がそれまでの「息」とは違ってしまうこと。「息」が違ってしまったことを「息の外へ出る」というのだろう。
瞬間的に、今までとは違ってしまう。そのとき「ゆうに」が起きている。
それは、その人だけが感じることができる「別次元」である。
だから峯澤は、
ゆき
ゆきだよ。
どこまでも
あかるい ゆきだよ。
と、「別次元」を描写し、宮尾は、それをこう書く。
キモイ(気味悪い)のは
そっちもこっちもおなじです。
からだに
詩が来ているときは
まあこんな塩梅です。
「別次元」を、宮尾は「からだに/詩が来ている」と書く。峯澤が「息のそと」というなら、宮尾は「息のなか(むめのなか?)」というのだろうが。
森本孝徳「蚤卵論」。森本はことばが好きなのだろう。そして、森本が好きなことばは、私とは関係ないところを動いている。
身から出た錆とはいえ永遠の散歩に誘い出すなら、
末弟(ボロッキレ)よ、
ここを拭き取るのが薔薇色のかかとだ。」
峯澤は「つまさき」と書いていたが、森本は「かかと」と書く。どちらも私にはわからないのだけれど、森本の方が「わざと」が強いだろうなあ。
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