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福岡発 コリアフリークなBlog

韓国や韓国語に関するオタクの雑学メモ。韓国映画はネタバレあり。 Since 2005/9.14

神話としての「韓国語浄化」

2005年10月27日 |  〇文化・歴史

カフェの翻訳(日→韓)練習で「前向きに検討」という表現が出てきた。
JTBが売り出している宇宙旅行商品への申し込みを「前向きに
検討
」している顧客がいる、という文脈だった。

僕は、「전향적(前向的)으로 검토(検討)」という表現を使って
訳してみたが、ある韓国人会員から、「적극적(積極的)으로
검토(検討)
」のほうがよいと指摘された。

実は、以前から少し気になっていた表現だったので、普段より時間を
かけて韓国のサイトで使用例を検索しながら確認することにした。

すると、やはり、この「전향적으로 검토」という表現は、公職者に
よる「純」お役所言葉的な発言以外では、ほぼ使用されていない
ことが分かった。

つまり、日本語よりも、ぐっと使用範囲が狭いと言う事だ。ほぼ
お役所言葉に特化された表現だと見てもいいのではないかと思う。

ところで、この表現の使用例を確認する中で、最近書かれた面白い
記事を見つけた。10月23日付の中央日報の記事だ。

우리말 바루기 578. '전향적'
(正しい韓国語を使おう No.578 「前向的」)

という見出しのシリーズ記事がそれだ。「前向的」という表現は、
日本語的な表現なので正しい韓国語に言いかえる必要がある
という趣旨の記事だった。

以下、この記事の中で僕が気になった部分を抜き出して紹介
してみる。

「일본식 한자어로, 이전에는 쓰이지 않던 것이 우리말에
파고들어 ・・・사용되고 있기 때문이다.」
(この言葉は)日本式の漢字語であり、以前には使われていなかった
ものが韓国語に入り込み・・・使用されているためだ。

「정부가 발표한 일본어투 용어 순화자료에도 '전향적'이
일본식 한자어이니 '적극적' 등으로 고쳐 쓰라고 돼 있다. 」
政府が発表した日本語式用語純化資料にも「前向的」が日本式の
漢字語であり「積極的」などへ改めるよう指摘されている。

「'전향적'은 일제 36년이 우리말에 남긴 흔적 가운데 하나다.」
「前向的」は36年にわたる日本の植民地支配が我が国に残した
痕跡の一つなのだ。

ここで何とも皮肉なのは、「前向的」という漢字語は、日本語的
漢字語としては不合格ではあっても、「積極的」という表現よりも、
よほど韓国語的な表現であるということだ。

つまり、この「전향적(前向的)」という表現は、「まえむき(前向き)」
という大和言葉(純日本語)的表現と、「的」という近代日本語的な
漢字語表現を合成して韓国で作られた、日本語にはない韓国的な
漢字語表現だと言える。

一方、「積極的」を始め、上記の短い引用文の中で使用されている
「政府」だとか「発表」「純化」「資料」「日帝」などという漢字語こそが、
実は、純粋に近代日本(日本帝国主義)語的な漢字語表現である
ことを考えれば、何とも矛盾した話ではないか。

由来はどうあれ、少なくとも日本語にはない韓国的な漢字語表現を、
わざわざ近代日本語的な漢字語表現に変えようと言うのだから、
理解に苦しんでしまう。

なぜ、こういう矛盾が成立するのか?

それは、言うまでもなく、この記事を書いた記者や日本式用語純化に
取り組む政府関係者たちが、「積極的」や「政府」「発表」などの
漢字語については、それらを韓国的な正しい漢字語だとする
「恣意的な前提」に立っているからなのだ。

どうも、韓国人の多くは、現代韓国語が、「不純」な日本語的表現が
流入する以前から、つまり近世からずっと連続して現在と同じような
形で存在して来たという「神話」-創作された共同幻想-を信じ込もうと
しているような気がしてならない。

以前、「日本式軍隊用語」の記事にも似たような内容を書いたが、
実際、もし本当に現代韓国語から全ての日本式漢字語を消すと
するならば、韓国語自体を消すことになると言っても決して
過言ではない。

好むと好まざるとにかかわらず、現代韓国語と近代以降の日本語は、
そのくらい抜き差しならない関係性を持たされてしまっていると
いうことだ。

しかし、近代日本語の漢字語表現が、近代及び現代韓国語の
漢字語表現の主要な構成要素になっている「歴史的な事実」から、
韓国社会は依然として、目を背け続けている。

結果として創作される共同幻想が、この正しい韓国語と「不純」な
日本語式表現にまつわる「神話」だと言える。

実は、現代韓国で定説とされたり常識となっているものの中には、
こうした類の「神話」が数多く存在している。

少なくとも、僕はそう考えている。

いくら、病的と思えるくらいの韓国語マニアではあっても、こうした
「神話」の数々については、決して共有することはできない。




(終わり)

 

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ネットサーフィンの謎

2005年10月27日 |   〇メディア・IT

英語のnet surfingとweb surfinng。

この二つの類義語に由来する外来語の使用と関連して、
日本語と韓国語で、おもしろい違いがあることに最近、気がついた。

アメリカ、日本、韓国のYahoo!で検索して得た、この二つの単語の
ヒット(文書)数を見ると、その違いが一目瞭然なので、まず
その数字を紹介する。

web surfing  65,900,000
net surfing   18,900,000

ネット・サーフィン 3,450,000
ウェブ・サーフィン    48,100

웹서핑(ウェブ・サーフィン)   465,000 
네트서핑(ネット・サーフィン)    3,130
넷서핑(ネット・サーフィン)          347

(2005年 10月23日現在)

つまり、日本語では「ネット・サーフィン」という外来語が一般的に
広く使用されている一方、韓国語では主に「웹서핑(ウェブ・サー
フィン)」という用語が使用されている。

これは、僕の経験から来る見方とも一致している。

しかし、なぜ、こういう違いが生じたのだろうか?
単なる発音上の好みの問題なのか、それとも他に理由があるのか。

・・・謎だ。




「オタク」とは、日々、どうでもいい発見に喜び、どうでもいい謎に
出くわしては、大げさに頭を抱えこむ人種なのだ。


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