惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

河野典生さん

2012-03-05 21:14:29 | ひと
 1月29日に亡くなられたそうです。享年77。
 石川喬司さんに伺った話では、3年前に脳梗塞で倒れられてからずっと療養なさっていたとか。そのことも、今年になって亡くなられたことも、2月末に奥さまから連絡があり、初めて知ったそうです。晩年は作家仲間とは付き合っておられなかった様子。ご冥福を祈ります。

 石原藤夫さんの〈SFマガジン〉インデックスを見ると、「美しい芸術」が1967年2月号、「機関車・草原に」が同年7月号、「緑の時代」が1969年2月号に掲載されています。
 SFプロパーとは違った毛色の、若々しい感性の幻想小説で、鮮やかなイメージと「冷たいエネルギー」とでもいいたいような情熱感に圧倒されたものです。1960年のデビュー作『陽光の下、若者は死ぬ』(荒地出版)を古書店で探して買ったのは同じ頃だったでしょうか。

 ハードボイルド、ジャズ小説、そして幻想小説などを手がけられましたが、私はとりわけ最後の幻想系統のものが好きで、ヒッピー的な世界観にかなり浮世離れした視線を感じていました。それだけに、『町の案内図 声、そして彼らの旅』(1980)でしたか、お父上のことにずいぶんとこだわった作品を書かれたことを、意外に、しかし親しくも感じたことでした。

 90年頃以降、作品を発表されなくなったのは寂しかったのですが、どかこ河野さんらしいかなとも受け止めていました。

 一度だけ、私がSFの仕事を始めて間もない頃、お会いする機会があり、その時、「この後、空いてますか?」とお酒を誘われたのですが、用があって断ってしまったことが、今となってはなんとも残念。
 類例のない作風をもつ人だっただけに、さらなる評価が望まれます。読み返さなくては。

 〈ナンクロメイト〉4月号、発売中。担当の新刊紹介欄で次の3冊を取り上げています――

  • 新海均 『深沢七郎外伝 淋しいって痛快なんだ』(潮出版)
  • 浅暮三文 『やや野球ども』(角川書店)
  • ミゲル・ニコレリス 『越境する脳 ブレイン・マシン・インターフェースの最前線』(鍛原多惠子訳、早川書房)
 類例がないといえば、深沢七郎という作家もそうでしたね。エピソードが面白すぎるし、「風流夢譚」の原稿を読んで慌てて「憂国」を書いたという三島由紀夫との縁も、すごく気になるところ。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>天地人さま (森下一仁)
2012-03-06 20:03:54
>天地人さま

あの頃、色々な人がSFに可能性を見出していたのだなぁと思います。
返信する
思い出しました。 (天地人)
2012-03-06 18:10:10
思い出しました。

「美しい芸術」、「機関車・草原に」、「緑の時代」

河野典生さん…でしたね。

私も、ご冥福をお祈りいたします。
返信する

コメントを投稿