監督 スティーヴン・スピルバーグ 出演 タンクローリー、デニス・ウィーバー
ラストの、タンクローリーが崖を落ちていくシーンがとても好きだ。特に、その映像ではなく、その「音」が。タンクローリーの警笛(?)の音が、野獣の悲鳴のように聞こえる。それを聞いた瞬間、「悪役」であるはずのタンクローリーに同情してしまう。あわれを感じてしまう。大げさに言うと、涙が出てしまう。
あ、この感覚、「2001年宇宙の旅」で、ハルがメモリーを外されながら「デイジー」を歌うのを聞いたときに感じる悲しさ、あわれみ、涙に似ている。
私って、人間よりも機械が好きなのかな・・・。
そして思うのだ。もしかして、私は主人公に恐怖にはらはらどきどきしていたんじゃなくて、タンクローリーの暴力にわくわくしていたんだなあ。恐怖の体験はいやだけれど、どこかで、何かを体験したことがある。けれど、暴力のわくわくは体験したことがないからなあ。
映画って、自分では体験できないことを、映像と音楽で体験するのが醍醐味。主人公の恐怖は恐怖でいいけれど(?)、やっぱり、主人公を無慈悲に追いつめていく暴力――あ、すごいなあ。いいなあ。
変? 危険?
まあ、いいさ。危険な人間になってみたい。私は。
映画感を出たとき、70年代のやくざ映画をみた観客が肩で風を切って歩いたように、私はもしかしたら、タンクローリーになっていたりしてさ。ママチャリで、いつもは歩道を恐る恐る走っているんだけど、車道のど真ん中を平気で走りながら、「どけどけ」ってわめいたりしてさ。「じゃますると、はねとばすぞ」なんて言ってみたいなあ。
でも、野獣には悲しい死が待っているだけ。なんとわびしい現代!
あ、私って、やっぱり危険?
で、タンクローリーの「悲鳴」に激しく共感した私は、この映画に「けち」をつけたい部分がある。バクグラウンドの音が嫌い。不安をあおる音を狙っているのだろうけれど、耳障りなだけであるはらはらもわくわくもしない。あ、うるさいなあ、と思うだけである。音がない方がもっとおもしろいだろう。
恐怖のはらはらにしろ、暴力のわくわくにしろ、それは「日常」と対比されると輝きを増すのだ。たとえば冒頭近くの「国勢調査」の「世帯主」に関する男の質問、回答者のやりとりのラジオの音。あるいはガソリンスタンドの毒蛇。タンクローリーに飼育ケージを壊され嘆く女性。――ストーリーと無関係なことがらが、特異なストーリーを浮き立たせる。強調する。だから、「音」もそういうものでなくてはならないのだ。
いい例が思い浮かばないが、バックグラウンドがマーラーの交響曲のように甘ったるい音だったら、どうだろう。車が走る音、タイヤの音、エンジンの音もなく、流麗な音楽が響いていてら、あの、たたいても壊れないようなタンクローリーのフロントの顔は、もっと不気味になったのではないのか。もっと得体の知れないエネルギーをもった野獣になったのではないのか。
ラストの、タンクローリーが崖を落ちていくシーンがとても好きだ。特に、その映像ではなく、その「音」が。タンクローリーの警笛(?)の音が、野獣の悲鳴のように聞こえる。それを聞いた瞬間、「悪役」であるはずのタンクローリーに同情してしまう。あわれを感じてしまう。大げさに言うと、涙が出てしまう。
あ、この感覚、「2001年宇宙の旅」で、ハルがメモリーを外されながら「デイジー」を歌うのを聞いたときに感じる悲しさ、あわれみ、涙に似ている。
私って、人間よりも機械が好きなのかな・・・。
そして思うのだ。もしかして、私は主人公に恐怖にはらはらどきどきしていたんじゃなくて、タンクローリーの暴力にわくわくしていたんだなあ。恐怖の体験はいやだけれど、どこかで、何かを体験したことがある。けれど、暴力のわくわくは体験したことがないからなあ。
映画って、自分では体験できないことを、映像と音楽で体験するのが醍醐味。主人公の恐怖は恐怖でいいけれど(?)、やっぱり、主人公を無慈悲に追いつめていく暴力――あ、すごいなあ。いいなあ。
変? 危険?
まあ、いいさ。危険な人間になってみたい。私は。
映画感を出たとき、70年代のやくざ映画をみた観客が肩で風を切って歩いたように、私はもしかしたら、タンクローリーになっていたりしてさ。ママチャリで、いつもは歩道を恐る恐る走っているんだけど、車道のど真ん中を平気で走りながら、「どけどけ」ってわめいたりしてさ。「じゃますると、はねとばすぞ」なんて言ってみたいなあ。
でも、野獣には悲しい死が待っているだけ。なんとわびしい現代!
あ、私って、やっぱり危険?
で、タンクローリーの「悲鳴」に激しく共感した私は、この映画に「けち」をつけたい部分がある。バクグラウンドの音が嫌い。不安をあおる音を狙っているのだろうけれど、耳障りなだけであるはらはらもわくわくもしない。あ、うるさいなあ、と思うだけである。音がない方がもっとおもしろいだろう。
恐怖のはらはらにしろ、暴力のわくわくにしろ、それは「日常」と対比されると輝きを増すのだ。たとえば冒頭近くの「国勢調査」の「世帯主」に関する男の質問、回答者のやりとりのラジオの音。あるいはガソリンスタンドの毒蛇。タンクローリーに飼育ケージを壊され嘆く女性。――ストーリーと無関係なことがらが、特異なストーリーを浮き立たせる。強調する。だから、「音」もそういうものでなくてはならないのだ。
いい例が思い浮かばないが、バックグラウンドがマーラーの交響曲のように甘ったるい音だったら、どうだろう。車が走る音、タイヤの音、エンジンの音もなく、流麗な音楽が響いていてら、あの、たたいても壊れないようなタンクローリーのフロントの顔は、もっと不気味になったのではないのか。もっと得体の知れないエネルギーをもった野獣になったのではないのか。
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