詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

トランプの完勝(2)

2017-11-07 16:41:30 | 自民党憲法改正草案を読む
トランプの完勝(2)(情報の読み方)
自民党憲法改正草案を読む/番外146(情報の読み方)

 2017年11月07日の読売新聞夕刊(西部版、4版)のトランプ続報がすごい。見出しは、

トランプ氏 韓国到着

とそっけないのだが。記事に、こういう部分がある。

トランプ氏は日本を出発前、ツイッターに「日本訪問と安倍首相との友情は我が国に多くの利益をもたらすだろう。大規模な防衛装備品やエネルギーの注文が来る!」と書き込み、来日の成果を強調した。

トランプは、「北朝鮮の脅威はなくなった」というようなことは書いていない。「安全保障」は関心がない。「利益」にのみ関心がある。言い換えると「経済交渉」が目当てで安倍と首脳会談をした。
露骨というか、大統領とは思えない率直な、「商売大成功」宣言である。

このあと、どうなるか。
今は円安だが、トランプは円安にも文句を言うだろう。対日貿易赤字を解消するために、円高を要求する。
企業の9月中間決算は、円安の為に輸出企業が好調だが、これは円高になれば一転して不況になる。株高も終わる。
円高でも日本製品が売れるようになった初めて「企業業績がいい」といえる。
「北朝鮮の脅威」は、トランプの商売に利用されただけ。
日本経済の崩壊が始まる。

詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載
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ポエムピース
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野木京子「小石の指」

2017-11-07 11:12:23 | 詩(雑誌・同人誌)
野木京子「小石の指」(「交野が原」83、2017年09月01日発行)

 私は「ことば」をそのことばのまま反芻することが苦手である。反芻しようとすると「ことば」が入れ替わる。そういうことが、しょっちゅう起こる。
 野木京子「小石の指」でも、そういうことが起きた。

部屋はしんとして
窓ガラスを通って入り込んだ光も張り合いがなく ただ遊
んでいた
見えない子どもが走り抜けた木の床
ほんのわずかに空間が歪み
でも湿度の変化はなく
それでも歪みは径になって気配を変える

お母さんが横たわっているね
もうすぐ眠りにつくから
静かに静かに
見えない子どもは自分に言い聞かせる
見えない子どもがここにいるから ほら
淋しくないでしょう と
ささやいてみたけれど 見えないのだから
ここにいないのと同じ

解析不能の小石をぱらぱら 歪みと一緒に床に撒いていた
小石を順々に拾いあげるとき
見えない子どもとお母さんの
指は触れ合うはず

 一連目。「窓ガラスを通って入り込んだ光も張り合いがなく」の「張り合いがない」ということばが印象的だ。それが「ただ遊んでいた」とつづき、「見えない子ども」が登場すると、「光」は「光」ではなく「子ども」になってしまう。私は「光」を「子ども」と入れ替えて読んでしまっている。しんとした部屋、誰もいない部屋にひとりで入り込んでしまった子どもが、誰もいないことに気づいて「張り合いをなくして」、ひとりで遊んでいる。そういう情景を思い浮かべる。「見えない子ども」と書かれているのだが、私には「見える」。「見えない」ということばに触れて、逆に、より鮮明に見える感じがする。
 これも、ことばの入れ替わり、ことばの取り違えかもしれない。
 「歪み」ということばが出てくるが、その「歪み」のなかに引き込まれて、「光」と「子ども」が入れ替わったかのようだ。
 二連目では「見えない子ども」と一緒に「お母さん」が出てくる。この「お母さん」は「見えるお母さん」ということになるのかもしれないが、私はやっぱり逆に感じてしまう。「見えないお母さん」がいる。「見える子ども」がいる。その部屋の中には。
 「お母さん」は「眠りについた」。この「眠りにつく」は「死んだ」ということだろうなあ。死んだから、いない。いないから「見えない」。でも、子どもには「見える」。いつまでも、その部屋に「いる」。
 「見えないけれど、お母さんはここにいる。ほら、淋しくないでしょう」と子どもは自分に言い聞かせている。そういう「一人遊び」をするとき、子どもは「お母さん」になっているから、「子ども」は存在しない、つまり見えない。
 三連目の「見えない子どもとお母さんの/指は触れ合う」は「見えないお母さんと子どもの/指は触れ合う」だろうなあ。小石を拾い上げるとき、一緒に小石を拾ってくれた「お母さん」の指が実感できる。
 「はず」というのは、そう信じて、子どもが一人遊びをするということだろう。

 「小石の指」というのは奇妙なタイトルだが、小石を拾うとき、そこに「指」が実感できるということだろう。お母さんの指が。「小石」は「小石」でありながら、「小石」ではなく「お母さんの指」。この瞬間にも、入れ替わりがある。
 「ことば」というものは「もの」に名前を与える。名前をつけることで、「もの」と自分との関係を明確にするという働きをするものだけれど、ときどき、逆のことも起きるのかもしれない。「名前をつける」という力が、「名前(ことば)」と「わたし」を入れ替えてしまう。「名前」をつけたはずなのに、逆に、自分が「名前」をつけられてしまうと言えばいいのだろうか。

 こういう錯覚の瞬間、「誤読」が動き始める瞬間が、私は好きだなあ。こういう「誤読」を誘ってくれることばが好きだなあ。


ヒムル、割れた野原
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*


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トランプ完勝(情報の読み方)

2017-11-07 09:20:31 | 自民党憲法改正草案を読む
トランプ完勝(情報の読み方)
            自民党憲法改正草案を読む/番外145(情報の読み方)

 2017年11月07日の読売新聞(西部版・14版)の1面。

日米 北へ最大限圧力/首脳会談 首相 追加制裁表明
   トランプ氏 貿易赤字改善求める

 「日米 北へ最大限圧力」というのは、ごくあたりまえの「認識」だと思う。でも、このことばからは「実質」がどういうものか、さっぱりわからない。
 問題は、安倍とトランプの姿勢。
 安倍は、トランプとの会談の前は「追加制裁」のような生ぬるい方法ではだめだ。対話ではだめだ、と言っていなかったか。明確に「対話ではだめ」とは言っていないが、別の「圧力」のかけ方を狙っていたはずである。別の「圧力」をかけることで事態を打開したいと思っていたはずである。それは、

 会談では「あらゆる選択肢はテーブルの上にある」とのトランプ政権の姿勢を改めて評価し、7日に新たな独自制裁を閣議了解することを伝えた。

 という文章からもうかがうことができる。「あらゆる選択肢」のなかには「軍事行動」が含まれているはずである。
 ところが、この「軍事行動」は、さすがに「確約」をとることができなかった。宣戦布告になるからだが。
「共同軍事行動」がとれないので、安倍は、かわりに「追加制裁」をとることにした。北朝鮮に対する「資産凍結」である。
 「資産凍結」とは「経済制裁」であって、「軍事制裁」ではない。そして、この「経済制裁」というのは、「経済制裁」をする過程で「対話(交渉)」をするということでもある。
 「最大限圧力」ということばは勇ましいが、実際は、そういうことしかできない。それが「国際政治」というものだろう。
 安倍は、トランプから「軍事制裁」の確約は取れなかった上に、別の要求を突きつけられている。
 「貿易赤字改善求める」は抽象的である。北朝鮮情勢と関係づけると、具体的には、こういうことである。

 トランプ氏は記者会見で「米国の防衛装備品は世界でトップクラスだ。購入によって米国の雇用創出も期待できる」と述べ、米国からの装備品購入促進を求めた。首相は新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」などの米国からの購入を続ける考えを示した。

 トランプは、日本に防衛備品(武器だね)を買わせ、それによって北朝鮮への「軍事的圧力」とする、ということを狙っている。アメリカが北朝鮮に対する軍備を増強するのではなく、日本に軍備を増強させる。そうすれば、アメリカの軍事的負担は減る上に、アメリカ経済も潤う。「米国の雇用創出も期待できる」と明確に述べている。
 安倍は、迎撃ミサイルを買う、と言わせられている。
 このトランプの発言が「記者会見」でおこなわれたというのが、この日の一番の「みどころ」だね。
 トランプは、閉ざされた「首脳会談」の中だけで、安倍から「武器を買う」という確約を引き出したのではなく、「記者」という「第三者」がいる前で確約を引き出した。そんな確約はしていないと、嘘をつくことが常態化している安倍でも、「武器を買うといったことは一度もない」とは言えなくなる。
 さらにトランプは、ここで「米国の雇用創出も期待できる」と、わざわざ「経済効果」に言及している。これはアメリカ国内にいる「労働者」に対するリップサービスのようなものである。あるいはアメリカの労働者をまきこんで、安倍に武器を買わせる運動をしているとも言える。もちろん、アメリカの武器産業の資本家への、「ほら、確約をとったぞ」というPRでもある。
 さすがビジネスマン。
 トランプは、こういう「情報操作」と「実」をとる方法がうまい。安倍は、ここでも金をむしりとられている。プーチンとの日露会談と同じである。何の見返りもない。金を払わされるだけである。
 さらに2面には、

貿易は平行線/トランプ氏、市場開放迫る/FTA議論なし

 という見出しの記事の最後に、こう書いてある。

米国は来年秋に中間選挙があり、「それまでに必ずFTA交渉を要求してくる」(経済官庁の幹部)との見方は少なくない。

 「見方は少なくない」どころか、そう書かざるを得ないのは、すでにその要求がおこなわれ続けているということである。「FTA議論なし」はトランプが要求したが、安倍にはそれに応じる用意がなかったということ。
 つまり、準備が、完全に不完全だったのだ。
 安倍は、トランプとの会談で、北朝鮮への「軍事的圧力で一致」ということを狙っていた。それしか念頭になかった。トランプは「タカ派」だから必ず一致できると思い込んでいた。
 ところがトランプは、安倍の「タカ派」気質を利用して、まず「軍備」を売り込むことに成功した。実に簡単に買うことを約束させた。次はFTA交渉に応じないなら、日本の防衛に関して協力なんかしないぞ、と言ってくるだろうなあ。もっと武器を買って、自分で日本を守れと言ってくるだろう。ふつうの貿易で「対等」になれないなら、武器を売ることで赤字を解消し、米国の雇用も改善する。そういう作戦である。来年秋の「中間選挙」を控えているから、トランプは必死である。衆院選で「大勝」して、気が緩んでいる安倍とは、心構えが違う。
 安倍の完敗である。私は安倍支持派ではなく、「安倍は辞めろ」と叫んでいる人間だが、この完敗は情けない。プーチンに完敗した経験から何も学んでいない。政治家失格である。

 1面には、もうひとつ気になる記事がある。

「拉致被害者 愛する人のもとに」/トランプ氏 家族ら17人と面会

 拉致被害者の家族とトランプが面会した。面会後、トランプは「被害者が愛する人のもとにもどれるよう、安倍首相と力をあわせていきたい」と述べた。

 冷たいいい方になるかもしれないが、被害者と面会すれば、トランプでなくてもそれくらいの「リップサービス」はする。拉致被害者のひとのことなんか知りませんと言うはずがない。
 問題はトランプがどう言ったかではない。
 安倍がどう言ったかである。安倍がこれまで何をしてきたかである。だいたい日本人の被害者を救い出すのに、なぜトランプが出てこないといけないのだ。安倍には被害者を救出する「手だて」が何もないということだ。
 あるいは、何もする気がないということでもある。
 トランプに「力を合わせたい」と言わせたので、もし、救出できなくても、それは安倍だけの責任ではない。トランプも何もしなかったと、安倍は言いたいのだ。「免罪符」にしたいのだ。
 被害者救出など考えてもいない安倍のために、みえすいた「アリバイづくり」のために、トランプと面会させられる被害者家族がかわいそうである。
 被害者家族は、もっと安倍の責任を追及すべきである。「救出してくれ」と頼んでいる人を、「救出への具体的行動を起こさないのはむごい」と批判することはむずかしいかもしれない。しかし、安倍には、その批判を受けながら、救出する責任がある。「責任者」というものは、そういうものである。安倍は、批判者を拒絶し、称賛してくれる人だけをまわりに集めて、そのひとの要求に応えることは得意だが、それは「政治」ではないだろう。「政治家」の仕事ではないだろう。批判するひとに対しても、その人のために働かなければならない。


#安倍を許さない #安倍独裁 #沈黙作戦 #憲法改正 #天皇生前退位
 
詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント 日本国憲法/自民党憲法改正案 全文掲載
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