監督 チョ・ウィソク 出演 イ・ビョンホン、カン・ドンウォン、キム・ウビン
韓国犯罪史上最大規模の金融投資詐欺事件「チョ・ヒパル詐欺事件」を題材にしたといわれる映画。
うーん。
「金融投資詐欺」というのは、金融投資に無縁の私にはわからない。巨額の金が動いているらしいが、「実感」がもてない。しかも映画の中心がどうもつかみにくい。なぜ、中心が見えにくいかというと。
詐欺集団の親分、イ・ビョンホンが「口先」だけだからだろうなあ。金融投資詐欺なのでコンピューターが「大活躍」するのだが、イ・ビョンホンはその操作にからまない。企画し、指示するだけ。でもさあ、こういうことって、コンピューター操作に熟知していないと、嘘っぽい。単なる「金集め詐欺」になってしまう。貧乏人をだまして「金儲け話がありますよ」という詐欺。それはそれでいいのかもしれないけれど、なんだか「現代的」じゃない。
集めた金を権力者(政治家?)にばらまき、法の目をくぐりぬけ、というのは昔のままだし、紙の「帳簿」が「証拠」というのも古くさいなあ。身内(犯罪集団)のなかに「天才ハッカー」がいるからコンピューターには保存できないということなのかもしれないが、ネットに接続しないパソコンなら大丈夫じゃないのか、と私は考えてしまう。
まあ、「ストーリー」にむりがある。
というか、それなりに工夫をしてはいるんだけれど。
主役はイ・ビョンホンと彼を追いつめていく刑事のはずなのだけれど、その間に「天才ハッカー」が「二重スパイ」のように介在させる。そうすることで、「人間味」を出すといえばいいのか、悪人-中間の人間-正義の味方という仕掛けを作り、「中間の人間」が両極の「人間の本質」を浮き彫りにする、といえばいいのか。
あ、こう書くと何だかおもしろそうな映画だねえ。
いや、「天才ハッカー」がいないことには成り立たないのだから、彼を中心にしてこの映画をつくりなおせばとってもおもしろいものになるはずなんだけれどね。それを「脇役」にしてしまったために、全体がただの「ストーリー」になってしまう。「人間」が出て来ない。「天才ハッカー」は「おまえは、とんでもない両面テープだ」みたいな批判のされ方をする。そのあたりの人間の複雑さが出ればいいのだけれど、ことばで説明されるだけだから、がっかりしてしまう。
韓国で逮捕されそうになったので国外に逃亡し、逃亡先のフィリピンでフィリピンの政治家をまきこんでまた詐欺を試みる、というのは実際にあったことにしても、あまりにも「ストーリー」にとりつかれている感じ。ふたつの「ストーリー」をつないで、わざと「大作」をでっちあげていると言えばいいのか。
映画の魅力は「ストーリー」ではなく、「人間」の姿なのに。人間の感情をスクリーンに拡大してみせ、その「大きさ」で観客を押しつぶすところにあるのに。
「こんな映画をつくってはだめ」という「見本」にはなっているね。
(中洲大洋スクリーン2、2017年11月12日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
韓国犯罪史上最大規模の金融投資詐欺事件「チョ・ヒパル詐欺事件」を題材にしたといわれる映画。
うーん。
「金融投資詐欺」というのは、金融投資に無縁の私にはわからない。巨額の金が動いているらしいが、「実感」がもてない。しかも映画の中心がどうもつかみにくい。なぜ、中心が見えにくいかというと。
詐欺集団の親分、イ・ビョンホンが「口先」だけだからだろうなあ。金融投資詐欺なのでコンピューターが「大活躍」するのだが、イ・ビョンホンはその操作にからまない。企画し、指示するだけ。でもさあ、こういうことって、コンピューター操作に熟知していないと、嘘っぽい。単なる「金集め詐欺」になってしまう。貧乏人をだまして「金儲け話がありますよ」という詐欺。それはそれでいいのかもしれないけれど、なんだか「現代的」じゃない。
集めた金を権力者(政治家?)にばらまき、法の目をくぐりぬけ、というのは昔のままだし、紙の「帳簿」が「証拠」というのも古くさいなあ。身内(犯罪集団)のなかに「天才ハッカー」がいるからコンピューターには保存できないということなのかもしれないが、ネットに接続しないパソコンなら大丈夫じゃないのか、と私は考えてしまう。
まあ、「ストーリー」にむりがある。
というか、それなりに工夫をしてはいるんだけれど。
主役はイ・ビョンホンと彼を追いつめていく刑事のはずなのだけれど、その間に「天才ハッカー」が「二重スパイ」のように介在させる。そうすることで、「人間味」を出すといえばいいのか、悪人-中間の人間-正義の味方という仕掛けを作り、「中間の人間」が両極の「人間の本質」を浮き彫りにする、といえばいいのか。
あ、こう書くと何だかおもしろそうな映画だねえ。
いや、「天才ハッカー」がいないことには成り立たないのだから、彼を中心にしてこの映画をつくりなおせばとってもおもしろいものになるはずなんだけれどね。それを「脇役」にしてしまったために、全体がただの「ストーリー」になってしまう。「人間」が出て来ない。「天才ハッカー」は「おまえは、とんでもない両面テープだ」みたいな批判のされ方をする。そのあたりの人間の複雑さが出ればいいのだけれど、ことばで説明されるだけだから、がっかりしてしまう。
韓国で逮捕されそうになったので国外に逃亡し、逃亡先のフィリピンでフィリピンの政治家をまきこんでまた詐欺を試みる、というのは実際にあったことにしても、あまりにも「ストーリー」にとりつかれている感じ。ふたつの「ストーリー」をつないで、わざと「大作」をでっちあげていると言えばいいのか。
映画の魅力は「ストーリー」ではなく、「人間」の姿なのに。人間の感情をスクリーンに拡大してみせ、その「大きさ」で観客を押しつぶすところにあるのに。
「こんな映画をつくってはだめ」という「見本」にはなっているね。
(中洲大洋スクリーン2、2017年11月12日)
*
「映画館に行こう」にご参加下さい。
映画館で見た映画(いま映画館で見ることのできる映画)に限定したレビューのサイトです。
https://www.facebook.com/groups/1512173462358822/
監視者たち 通常版 [DVD] | |
クリエーター情報なし | |
TCエンタテインメント |