詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

情報の読み方(番外篇)

2019-04-20 11:21:28 | 自民党憲法改正草案を読む
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6320921?fbclid=IwAR3tuwi_IutbSIVOc3B7uY1JHV2NZPy-XQDWcvDEE3A4bZbVKGBdnCRwJGc

経団連会長“終身雇用を続けるのは難しい”というニュースを見た。



日本の不景気は、ここまで来た。
大企業も雇用を守らない。守る余裕がなくなった。
雇用だけではなく、賃金もどんどん切り下げられるだろう。
賃金を切り下げる「道具」として外国人が雇用される。
大企業そのものの外国人雇用は進まないだろうが、中小企業や、私たちの周り(コンビニとか、居酒屋とか、その他の飲食店とか)では、どんどん働く外国人が増える。
もちろん彼らの給料は安い。
なぜ、安いか。「技能が未熟」だからではない。その安い賃金にまで日本人労働者の賃金を下げる。そのための「新しい基準」にするためだ。

賃金引き下げがはじまる。
来年から、春闘は、賃上げの戦いではなく、賃下げをどこまで押しとどめるかという交渉になる。
連合は、経営者予備軍(安倍支持予備軍)だから、労組をおさえつけにかかるだろう。
雇用を守るためには賃下げが必要だ。
賃金が下がった分は、安倍が提唱している「副業」で稼げばいい。

「副業」はどれだけやっても「残業」ではないから、「過労死」は完全に自己責任。
そういう労働システムがはじまる。

安倍批判をするなら、いましかない。
自衛隊が合憲化されれば、その軍隊をつかって、安倍は、安倍批判をする国民を弾圧する。
軍隊の力で独裁を進める。
安倍と、そのとりまきの人の利益のためにだけ、安倍は軍隊を動員する。
東京五輪後が心配と思っていたが、もっと早いかもしれない。
東京五輪前に、そういうことが起きるかもしれない。
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池澤夏樹のカヴァフィス(122) 

2019-04-20 10:59:08 | 池澤夏樹「カヴァフィス全詩」
122 クレイトーの病気

 クレイトーが病気になった。「若い俳優が/もう彼を愛さない、彼を求めないと言ったから」。しかし、詩の主眼はそこにではなく、後半にある。病気を心配した「老いた召使」がいる。彼女が彼を育てた。

彼女はこっそりとケーキとワインと蜂蜜を用意して
偶像の前に置き、昔よく覚えていた
祈りの文句をとぎれとぎれに思い出して
唱える。だが彼女は知らない、
黒い神がキリスト教徒の病が治るか否かなど
まるで気にかけていないことを。

 池澤が「黒い神」につけた註釈。

キリスト教への改心が趨勢となった時に古い偶像崇拝がどういう運命を辿ったかにカヴァフィスは強い関心を寄せている。背教者ユリアヌスに関わる詩が多いのもその現れだろう。この異教の「黒い神」は明らかに拗ねている。

 「拗ねている」はなんとも人間臭い表現だが、たしかにギリシャの神の方がキリスト教よりは人間臭いだろう。嫉妬もする。
 私の印象では、ギリシャの神はみんなわがままだ。自分のことしか考えない。
 そのことをカヴァフィスは、どう考えていたか。
 私は、自己中心的なギリシャの神をカヴァフィスは肯定していると感じる。人間なんか、どうだっていい。どうせ死んでいく。人間の病気なんか、気にかけるはずがない。もし気にかけるものがあるとするならば、「ドラマ」そのものを気にしただろうなあ、と思う。だれが、だれに対して何をするか。その結果、世界(人間関係)がどうかわるか。これは、見飽きることがない。ギリシャの神は、それを「娯楽」のようにながめている。
 というところからこの詩を見つめなおすと。

思うに彼は既に
心疲れていた。友人が、若い俳優が
もう彼を愛さない、彼を求めないと言ったから。

 この二連目の方がカヴァフィスの詩にとっては、やはり重要なのだ。どうして病気になったか。もし単なる熱病ならカヴァフィスは詩にはしなかっただろう。ギリシャの神を登場させなかっただろう。「主眼」をわざとずらしている。そういうおもしろさが隠されている。



カヴァフィス全詩
クリエーター情報なし
書肆山田


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