屋上で
どこで飼っているのだろうか
鳩が真昼の空を広がっていく
広寿山禅寺あたりでひるがえり
旋回をくりかえす
冬の光が反射して白い
「少し増えたようだ」
髪がバサバサあおられる
両手をズボンのポケットにつっこんで
猫背の棒になって
「円の大きさは鳩の数に正比例する
ように思われる」
頭のなかをみつめている
視野は東西南北に開かれるのに
中心が気になって動けない
「まるで、あれだね」
風に背を向けて
たばこに火をつけようとするが
うまくいかない
ことばも発火しない
「まるで、なんだい」
男はたばこを捨てる
「忘れてしまったよ」
白いチョークが隅へ転がっていく
大きくなりすぎた輪の
遠心力にはじかれた鳩のように
(アルメ231、1985年02月10日)
どこで飼っているのだろうか
鳩が真昼の空を広がっていく
広寿山禅寺あたりでひるがえり
旋回をくりかえす
冬の光が反射して白い
「少し増えたようだ」
髪がバサバサあおられる
両手をズボンのポケットにつっこんで
猫背の棒になって
「円の大きさは鳩の数に正比例する
ように思われる」
頭のなかをみつめている
視野は東西南北に開かれるのに
中心が気になって動けない
「まるで、あれだね」
風に背を向けて
たばこに火をつけようとするが
うまくいかない
ことばも発火しない
「まるで、なんだい」
男はたばこを捨てる
「忘れてしまったよ」
白いチョークが隅へ転がっていく
大きくなりすぎた輪の
遠心力にはじかれた鳩のように
(アルメ231、1985年02月10日)